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フランス書店組合理事にきく 中小書店の生き残り策
本欄でいつも「街の書店」とよんでいる独立書店はフランスで約1000社あるが、その全国組織としてフランス書店組合(syndicat de la librairie francais)がある。加盟社数は約500社。
これから2回にわたって同組合理事長のジル・ドラポルト氏へのインタビューをお送りしたい。なお、ドラポルト氏はノルマンディ地方、セーヌ川河口の港町ルアーブルの中心街にある、ストック1万冊、従業員35人、年商600万ユーロの「ラ・ガレヌル」社長である。
-フランスのマーケットの特徴は?
「なによりも、1981年のラング法によって、どこでも出版社が決めた再販価格で販売することが義務になっていることがあげられるでしょう。この法律は、書籍を目先の採算性だけに支配されない文化財産として認め、ひろく地方に分散したネットワークを支持し、単一化せぬ多様な店の存続を奨励するものです。まさにこの法律が独立した書店という職業を支えています。これは、ドイツ、イタリア、ギリシャでも採用されました。」
-書籍も昔とはずいぶんかわったように思いますが。
「はい。90年代に入って、各書店とも近代化をはかりました。まず、コンピュータ化した管理ソフトを導入したり、情報データ交換をはじめたり。つづいて、書店の雰囲気を改善しました。居心地のいい和気あいあいとした売り場づくりです。私の店では、アメリカの書店Barnes and Noblesのコンセプトを採用しました。ソファーを置き、壁を塗り替えました。
また、自分の店で独自に本を表彰するのが流行っています。今日では100程の書店が行っています。私の店では、小中学生向けと15~20歳向けの図書のほか、歴史書の賞があります。」
-今の課題は?
「長期的には後継者問題です。これは書店に限らずフランスの中小企業全般の問題なのですが。
いちばん安易な方法は、書店を大チェーンに売却してしまうことです。しかし、我々のメチエを維持しなければなりません。ですから、組合としても後継者づくりのための研修を充実し、あまり金銭的余裕のない書店を助けるための財団を作る予定です。
差し迫った課題としましては、なんといっても大規模なチェーンとの競争です。
一般に中小店舗保護もまたフランス全体の問題であり、政府はいろいろ策を講じていますが、かならずしも有効ではありません、たとえば2005年から400㎡(約120坪)以上の大規模店舗に対して課税されるようになったのですが、逆に私どものような店でも税負担が3倍になってしまいました。
しかも(AV器材やCD等も販売する)従来のフナックやスーパーマーケットと違って書籍だけを売るチェーンが進出してきています。2005年にフランスの最大の書籍専門店チェーンであるプリヴァ書店を世界一の出版社Bertelsmannが買収しました。
こういう書店では、何も知らない素人に本を売らせています。独立書店の人件費は年商の18%ですが、プリヴァやフナックなどは10%です、また出版社や取次業者に対して画一化された大衆にアピールするものにシフトするよう圧力をかけます」(つづく)
広岡裕児、パスカル・トゥルニエ(VSD)
2005年12月8日 出版業界唯一の新聞 新文化 より