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出版業界の豆知識

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本屋に就職したワケ ~業界新聞「新文化」より

 最近、本屋めぐりをする回数が減ってきた危機感を持っている。
 
 そもそも、本が好きで本屋に就職したはずだった。学生時代にあっちこっち本屋をハシゴして帰るのが日課で、入り浸ってた近所の本屋さんに、「バイトに来ないか」と誘われたのが、その後の就職活動の方向を決定付けたようなものだった。

 なのに今、家と店の往復で日々が雪崩れるように過ぎていく。

 他書店さんに行くと、面白い発見がたくさんある。時節と流行の優先順位のつけ方や、同じフェアでも切り口や陳列が異なると全く違うものに見える。手書きPOPに思いの丈を送らせる熱血なコーナーもあれば、なかなか追加が来ないベストセラーがどーんと山盛りに積んであって「悔しいいィ!」とハンカチキリキリかみしめたくなることもある。

 ストアコンパリゾンの云々を語れるほどの器でもないので、きっと行った割には大した収穫はないのだろうが、手持ちのネタの使い回しで売場が自家中毒になるのを防ぐには有効だとは思っている。

 それでも足が遠のきかけているのは何故だろう。それって私だけか? と少し焦る。

 各分野の仕入れに関しては本部バイヤーが日々奮闘して様ざまな商品を送り込んでくれる。逆にいうと商品調達に昔ほど苦労しなくなったせいもあって、売場に対する担当者の温度が下がりつつある、と言われている。バイヤーの手配と陳列支持はチェーンストアとして品揃えのレベルを各支店で一定に保ち続けるためのもので、それを使って売場をどう「調理」していくかは最終的には担当者の裁量にかかってくる。

 たまに「指示書に書いてないがやっていいのか」と担当者から相談を受けるが、「やってはダメだと書いてないならやっていい」と大抵は答える。書いてあることを全て実施して終わり、では意図されたレベルまではいくがそれ以上にはならない。

 売場をいじるのは楽しい仕事のはずだ。自分で考えたフェアが当ると楽しいし、外れると悔しい。一時的なフェアで始めたはずの株コーナーが回転が良すぎて外すに外せないという、嬉しいような困ったような誤算もある。しかし様ざまな理由から売場に向き合う時間が減っているのも事実。それって私だけ?

 さて問題。そもそも私はどうして本屋に就職したんだっけ?


岐阜/三洋堂書店新恵那店店長 今泉 ますみ


2006年3月23日 新文化 「レジから撽」のコーナーより

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