石積 忠夫 氏より (書籍「正直者はバカをみない」より)
国際見本市がここ数年活況を見せています。通常、見本市というと、業界団体や組合、影響力を持つ企業がやることが多いのが実情です。
しかし、そんな状況の中、年間36本の見本市を主催し、日本最大の主催会社として地位を不動のものとしたのが、リードエグジビション株式会社の石積忠夫氏です。
特に、氏が主催する見本市の集客力には圧巻するものがあります。そんな集客力をどのようにしているか書かれているのが、書籍「正直者はバカをみない」です。
また、ある見本市への出展社が大幅に減り、その見本市の存在が危ぶられたときがあります。そんなときの社内への氏の働きかけには心打たれるのものがあります。
タイトルだけを見るとわかりづらいですが、日本最大の国際見本市を次々に成功させた要因を包み隠さず書かれています。
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正直者はバカをみない (石積 忠夫 著) 2007年12月初版
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ここから、書籍「正直者はバカをみない」から、教え学んだこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げご紹介いたします。
----- 書籍 「正直者はバカをみない(ダイヤモンド社刊)」 から ---------
・私は国際見本市の仕掛人である。
・私が見本市ビジネスを現在のように育てるようにできたのは、まさに私の名前の通り、中身を充実させることを、石を積むように一つひとつ実行してきたからだ。
・見本市の発祥の地はドイツだといわれている。
・宝飾業界の有力者を一人ひとり訪問しはじめた。
・常識は疑ってかかれ!
・営業において必要なことは何なのか、(中略)テクニックを駆使するようなころではない、素直に、気持ちをぶつけることだ。それこそが人を動かす、ということだ。
・一軒一軒訪問する活動がだめなら、まったく逆に出展の対象となる数百社を一堂を集め、発表説明会を開くことを思いついたのだ。そこで我々の決意と具体的な計画を思い切って訴えれば、事態が変わるかもしれない。
しかし、それは極めて難しいことにすぐ気づいた。(中略)説明会の後すぐにパーティを開き、そこに彼らのお客様である医薬品メーカーの幹部に出席してもらうというアイデアだ。そうなれば、機械メーカーや原料メーカーも喜んで出席してくれる。
・「はっきりと出展をお願いする」ことや「一軒一軒飛ばさずにまわる」
・四つの掟
一つ目の掟は「見本市の内容、価値を偽って出展勧誘を行なってはならない」
二つ目の掟は「出展を決めてもらうためには、その場しのぎの値下げをしてはならない」
三つ目の掟は「出展してもらうために、過剰な接待などによってお客様と馴れ合いの関係になってはならない」
最後の掟は「事実に基づかない中傷によって、競争相手をおとしめ、自分の営業を有利にしてはならない」
・人は「集まる」ものではなく、「集める」もの
・野望と思われるような目標でも、まずは掲げることが重要である。
・宣言文
リードは来場者数の水増しをしない、正直に発表することを宣言します
考え方の三大原則
一.来場者数の水増しをせず、正直に数字を発表することが出展企業に対する絶対的な義務であると考えます。
ニ.数字の水増しは、出展企業に対する詐欺行為であり、虚偽広告であると考えます。
三.見本市終了後すぐ、文書によって来場者数を発表します。その際、その文書の上でどのように数えたかを明記することを宣伝します。
数え方の三大原則
一.見本市会場に来場し、登録し提出した名刺を一名と数えます。
ニ.一度登録した人が何度来場しても一名としてしか数えません。
三.私達は、右の数え方がもっとも厳密で正確な数え方であると考えます。出入口を通過するたびに集計機械などで数える方法は、実際よりはるかに大きな数字となるため、リードはそのような集計方法を採用しません。
・私は「真剣な商談が行なわれる見本市」に強くこだわったのだ。
・出展社を集めてのセミナーを開くことにした。まずは、強烈なインパクトを与える必要があると考えたからだ。
各見本市が開催される三ヶ月前に設けた「出展社のための特別セミナー」が、それだ。主題は「本展を活用して売上げを拡大するための具体的なご提案」だった。
・来場するバイヤーは、いい製品を探すために足を運んできています。それは、彼らの生き残りを左右するかもしれないからです。その彼らの期待に応えて、ぜひ出展社側でも『その場で売る』という姿勢で臨んでいただきたい
・阪神・淡路大震災での素早い対応
IJTのスタッフが「出展社の弔問に行かせてください」と言ってきた。(中略)その会社を訪問して、まず第一声は驚きの声である。(中略)『東京からお見舞いに来たんです』といってお見舞金とカイロを差し出すと、ますます驚いた顔をして『電車も走ってないのに、一体どうやって来たんですか?』と言う。
そして、私たちが『東京から折りたたみ式自転車を持参し、甲子園からここまで自転車で来ました』と答えると、本当に驚嘆した様子で、『わざわざ来てくれて、本当にありがとう』と何度も何度も感謝を言葉をかけてくれた。
・パーティの恒例ではあるが、長すぎると参加者には苦痛でしかない。挨拶の時間は一人五分まで、数も二人までというのが我が社の鉄則だ。
・司会者は、必ず社員が務める。外部のプロは使わない。そのパーティ、そして見本市全体を盛り上げたいという強い思いを持っていないと、訴える力に欠け、参加者の心に響かないと思うからだ。盛り上げるための鉄則である。
・盛り上げるための鉄則
第一の鉄則は、「喜ばせる対象は参加者」
第二の鉄則は、「スピードと緊張感が命」
最後の鉄則は、「全体を見渡す場所に自分を置く」
・常識破りの会社説明会
日本最大の見本市会場である「東京ビックサイト」を会場にしての大規模説明会を企画したのだ。
・私は、思い切って任せると決断したら、六割成功すればいいと割り切っている。成功の数が失敗の数より多ければ、全体としてはプラスの方向に前進しているからだ。
・あらゆるアイデアを紙に書き出してみた。
・頑固と柔軟の共存
私が頑固になるのは、「理念」の部分である。その理念は、三つの要素から成り立っている。
理念=頑固
理想・使命
↓ 企業にとって価値ある見本市をつくる
目的・目標
↓ 圧倒的多数のバイヤーを集めてくる
原則・モラル
数字の水増しをしない、正直に発表する
方法=柔軟
方法1、方法2、方法3・・・・・
・ネプコン 再建のために
復活を神話をもつ一つ創ろう
ネプコン事務局長、全スタッフへ
一九九九年四月二八日
社長 石積 忠夫 より
一.感動の物語を創るチャンスだ
今、ネプコンが極めて大きな問題に直面しているのは、皆さんもよく知っている通りです。しかしながら、またもや復活の神話を、感動の物語を創るチャンスがめぐってきたと前向きに考えて欲しいと思います。
我々は今まで、国際宝飾展(IJT)や設計製造ソリューション展をはじめ、何回もこのような逆境に出遭い、それをことごとく乗り越え、さらに大きく成功させてきました。我々の見本市は、ほとんどがその分野で日本最大になっていますが、偶然ナンバーワンになったのではなく、その都度逆境を乗り越え、競合する見本市に打ち勝つことによって、その地位を築いてきました。
それと同じように、ネプコンも、今起きている問題を解決し、逆境を乗り越えねばなりません。そのエキサイティングな戦いのチャンスを与えられているばかりか、我が社の復活神話クラブの一員にネプコンが加わるチャンスです。
ニ.君たちはネプコンを復活させ、さらに大きく成功させることができる
君たちの強力メンバーなら必ずネプコンを再び大成功に導くことができると確信しています。特に、君たちは、数年前にも我々の競合である○○展との競争に同じような状況で勝利した成功体験も持っています。
極めて有能で、かつ決意の固いスタッフがそろっているネプコンチームが復活に成功することを疑っていません。この戦いに勝利をすれば、会社を救うことに貢献するだけでなく、諸君が今まで以上に自信を持ち、本当に実力あるプロになれると確信しています。心から声援を送ると同時に、私自身も最大限の努力をすることを約束します。一緒に頑張りましょう。
三.競争に勝つための基本的な姿勢
我々は今、新しい見本市と競争せざるえない状況に追い込まれました。この競争に敗れれば、ほぼ確実にネプコンが消滅することを認めざるをえません。したがって、完全な勝利をめざすことが我々の唯一の選択です。
しかし、極めて重要なのは、どのような姿勢でこの競争に臨むかです。以下私の考え方を明確にしておきたいと思います。
●競争相手を中傷しないこと
今回の一連の経過に対して、もう一つ納得いかない気持ちやくやしい気持ちが皆さんの中にあるかと思います。業界の中にも、我々に同情し、同じように言っている企業が数多くあるのも事実です。
しかし、今重要なことは、過去のことに対しての恨みがましい気持をすべて捨て去ることです。というのは、不満を持つことからは、成功するための強いエネルギーがわいてこないのです。それは、ビジネスに限らず、あらゆることに共通する物事の原則です。
まず、多くの企業が集団で去っていったことは、ネプコンの価値がまだ十分でなかったからだと思うべきです。それを分析し、改善することから始めるべきです。
次に、競争を感情的にとらえないことです。どちらの見本市がより充実した内容を提供できるかの競争としてとらえてください。そのゲームだと思うべきです。
したがって、もし競争相手が我々の努力を上回って我々よりもっと内容の濃い見本市をつくり、我々に勝利したら、潔く相手に敬意を払って拍手を送るべきです。競合を非難したり中傷したりすることは、エネルギーの無駄です。それを心してフェアな競争を心がけでください。
●ひたすらネプコンの出展メリットを大きくすること
そもそも目先の競合相手だけに眼を奪われ、その相手に勝ったとしても、十分な価値を提供せず、お客様からの支持が得られなければ、我々もまた滅びるしかありません。これもビジネスの法則です。
したがって、ただひたすらネプコンの出展メリットを大きくすることに集中するべきです。
また、競合見本市が初回、大規模に開催したとしても、それは内容が充実していた証明には必ずしもなりません。どんな見本市においても、はじめのうちは、目新しさや仲間意識など本質に関係のないことによって、成功したように見えることがあるからです。
四、五回と継続したとき、初めて真の価値が表面化するものです。だから、競争相手のことを過度に恐れることなく、ひたすら自分のことに集中すべきです。
●攻撃は最大の防御なり
ビジネスで成功するためには、「守り」に絶対入らないことが重要です。状況が苦しいからと言って、その場しのぎの割引、同情を呼び起こそうとすること、卑屈な態度で出展を乞うこと、水増し、競合に対する誹謗中傷などはすべて、防御的姿勢の表れです。価値をつくり出すことに重点を置いていないネガティブな考え方です。
攻撃の姿勢こそ、健全でポジティブな考え方です。すなわち、価値を高めるための新しいアイデアを次々と打ち出すこと、今まで以上に正面切って出展を訴えること、素早く実行すること、等々です。「攻撃は最大の防御なり」とは、古今東西の真理です。
●去っていった企業に気持ちよく帰ってきてもらうこと
このようなときにありがちな間違いは、ネプコンから去っていった企業やその担当者にわだかまりを持ち、「帰ってきてもらわなくてもいい」などと思うことです。これは最悪の態度です。
去っていったお客様に対しても気持ちよく帰ってきてもたうことに全力を尽くす。これが、真のビジネスマンのあるべき姿勢です。
したがって、今まで以上に熱心に、そして丁寧にネプコンへの出展をすすめるべきです。いや、それ以上に大事なことは、被らが帰ってきたくなるように、ネプコンのメリットを今まで以上に大きくするべきです。どんな企業でも、人でも、真の価値あるものを拒否し、眼をつぶることはできないからです。彼らに帰ってきてもらえるよう誠実に粘り強く活動しつづけてください。
四.現状分析(略)
五.基本戦略と具体策(略)
六.今後五年間の目標
基本的考え方、分析、戦略に続き、最後に目標を提示します。私は、これが非現実的だとは思いません。今まで述べた戦略を確実に実行すれば、達成可能だと信じています。これについては、会議で議論して正式に決定したいと思います。
ニ〇〇〇年 九〇〇小間 (九九年の七九〇小間から少しでも上昇に転ずる)
ニ〇〇一年 一〇〇〇小間 (上昇の流れを止めない。ここまでくればあとは流れができる)
ニ〇〇二年 一二〇〇小間 (機械大手メーカー五社にカムバックしてもらう)
ニ〇〇三年 一五〇〇小間 (最盛期近くまで回復させる)
ニ〇〇四年 二〇〇〇小間 (最悪期の三倍、アジア最大となり、盤石の地位を築く)
最後に、諸君の今までの努力に改めて感謝します。五年後の二〇〇四年に最終目標を達成したとき、うまい酒を飲み交わし盛大なお祝いをしましょう。健闘を祈ります。
・見本市が生み出すメリット
1、出展企業
・メーカー ・輸出入業者 ・問屋
2、来場バイヤー
・小売店 ・企業ユーザー ・問屋
3、都市、見本市会場 周辺インフラ企業
・交通 ・宿泊 ・飲食
4、関連企業
・装飾 ・電気 ・水道
・警備 ・派遣 ・通信
5、国家 国民 消費者
・東京ビックサイトでは八方平方メートルの展示面積の他にセミナー室、レストラン、事務室などがすべてを含んで、総額一八〇〇億円の建設コストがかかったらしい。
・原稿の量はさらに五〇〇頁増え、書き直しをを含めてトータル一五〇〇頁にもなっていた。
----- ここまで ---------
●書籍「正直者はバカをみない」より
石積 忠夫 著
¥1,680(税込)
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