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藤森 善貢 氏より (書籍「本をつくる者の心」より)

このページは、書籍「本をつくる者の心~造本40年(藤森 善貢 著)」から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・「本をつくる皆さんが、本を買ってくれる読者のことを、十分考えてつくっていますか」


・現在、一般の本の販売方法は委託制でありますが、岩波書店は、昭和十三年から、注文(買切)制をとっています。すなわち、注文がなければ本を出さない、という販売方法であります。したがって、この販売方法では、一般の小売書店には、本が置かれていない場合が多いのです。


・広告課長の大きな仕事は、その広告を出すための前提条件を正確に把握することにある。
(1)広告は誰のためにあるか
(2)宣伝効果をあげるための調査
(3)本の地区別購入力と新聞広告
(4)出版広告の特殊性
こんなことを調査研究の課題とした。


・本は著者物と造本技術の結晶である。内容を正確に伝えると共に、美しく読みやすい本を作ることが必要である。


・布川角左衛門さんの足跡(ぬのかわ かくざえもん)
※布川角左衛門氏とは、新潟県出身の編集者、教育家。1928年、岩波書店編集部に入社。編集部長を最後に55歳で定年退職した後、63歳で栗田出版販売の社長に就任。「日本出版百年史年表」(1968年刊行)の大部分を執筆して菊池寛賞を受けた。1978年、栗田出版販売取締役会長に就任。1979年には、約50億円の負債を抱えて破産した筑摩書房の管財人兼代表取締役として、以後7年3ヶ月にわたって同社の再建に尽力した。(ウィキペディアより)


・上野図書館には、布川さんが寄託した通称「布川文庫」がある。この文庫は、出版史の上で重要な書籍・雑誌その他の資料が多数集められており、追っては出版研究者のために役立つようにしたいと努められている。


・本がいい、悪いというのは造本だけではありません。内容の面と造本の面と二つある。


・岩波書店は哲学といい、有斐閣は法律を中心にしたもの、日本評論社は経済を中心にし、新潮社は文学の分野とか、それぞれが専門分野のなかに浸透していて、そのなかで活躍をしていた。


・出版社がほんとうに育成されるためには、小さな出版社が何本もの柱を持たないことです。


・製本には和製本という和風様式と、西洋で発達した洋本様式の二つがありますが、現在では九九%の本が洋製本です。


・良い本とは何か

本を十秒か十五秒で判断する秘訣はどこにあるか。本が開きやすいかどうかを確かめることです。開きにくい本はどうしてもこわれるから、自然に開いて、手で押さえなくても読めるような本をつくること、ということです。(中略)

同時に、背の丸み出しをみるとよい。上から下まですべての本の丸みが画然と揃っていなければ、本の出来としてはいいと言えません。

本が開くというのは、力学的にいって、丸みの円周が正方形の円周になるかたちに出ているといいのですが、日本の紙はすべる紙が多いので、最初は直角三角形の円周になるように丸みを出すようにしています。

使っている内に、理想的な丸みになるようになっている。


・本の健康診断をする簡単な方法があります。それは本を平らにして背に近い部分をもってみることです。

良くできている本は、しっかりした手ごたえを感じるものです。これらはだいたいにおいて及第点、七〇点を越えている。

また、悪い出来の本であれば、柔かくグニャグニャとした手ごたえを与えるものです。たとえば背中が乾かないうちに背貼りをして、表紙を着せちゃって、そのうちにグチャグチャになるという本が、だいたいその中に入る。

             
●書籍「本をつくる者の心~造本40年」より
藤森 善貢 著
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日本エディタースクール出版部 (1986年10月初版)
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