伊従 寛 氏より (書籍「出版再販」より)
このページは、書籍「出版再販~書籍・雑誌・新聞の将来は?(伊従 寛 著)」から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・ヨーロッパを中心にほとんどすべての国で独占禁止法の例外として許容されています。出版物が一般の商品とちがって文化に関係があるために文化政策という見地から認められています。
・世界トップレブルの日本の出版
・新刊点数の国際比較(一九九三年)
日本 四八,〇〇〇
アメリカ(推定) 三七,〇〇〇
イギリス 六一,〇〇〇
ドイツ 四九,〇〇〇
フランス 二三,〇〇〇
スイス 一一,〇〇〇
イタリア 三〇,〇〇〇
『出版年鑑一九九五年』出版ニュース社
・憲法二一条は、「集会・結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と規定しています。出版物が、この憲法の保障と関係があることは、その文言から明らかです。
・再販制が廃止されたらどうなるか
書籍・雑誌では、その再販制が廃止された場合、書店間に価格競争が生じて、大手小売店を中心に大量購入、買い切りによる仕入価格の引き下げがおこり、返品制度が崩れるだろうと予測しています。
その結果書店は値引き販売や売れ残りの可能性のある商品をとり扱わなくなり、書店の品揃えができなくなる。
また書店間の競争の激化で、書店は淘汰され購読者の購入の機会は少なくなる。
※再販問題小委員会の中間報告書 第五部(一)より
・廉売がなにをもたらすか
つまり裁判所は、書籍の定価販売協定を廃止した場合、①専門書店の数は減り、生き残る専門書店はの在庫も減少する、②大部分の書籍を小売価格は高くなる、③出版点数は減り、その中には文芸的、学術的には価値の高いものもふくまれる。
このことは、それぞれ購入者または利用者としての公衆から、具体的かつ実質的な利益を奪うものを考えられる。
・イギリスには書籍の出版業者は約四〇〇社あり、そのうち三八〇社は出版業者協会に加盟しています。
書店は一万二〇〇〇店で、うち三〇〇〇店が書店組合に加盟し、相当の在庫をもつ専門書店は七五〇店です。新刊書は毎年約二万一〇〇〇点ほどです。
「書籍定価販売協会」のもとで、新刊書の九〇パーセントは「定価本」(net book)であり、協会員の全売上額の七五パーセントを占めています。
・書籍のみ再販制を認めるフランス
一七九一年三月の法律二一号は、職業選択の自由を保障してきました。同年六月のル・シャプリエ法は、同じ職業の者が共通の利益保護をはかるために結合することを禁じており、世界で最初の成文の独占禁止法ともいわれています。
・[224頁・四六判・上製本・カバー装の原価試算モデル―一般書の場合]
部数 2,000部
一冊直接原価(印税・諸経費を除く) 762.24円
いくらの定価なら初刷りで採算が取れるのか 2,500円(本体2,476円)
部数 2,500部
一冊直接原価(印税・諸経費を除く) 646.32円
いくらの定価なら初刷りで採算が取れるのか 2,160円(本体2,097円)
部数 3,000部
一冊直接原価(印税・諸経費を除く) 563.82円
いくらの定価なら初刷りで採算が取れるのか 1,880円(本体1,825円)
部数 3,500部
一冊直接原価(印税・諸経費を除く) 513.66円
いくらの定価なら初刷りで採算が取れるのか 1,720円(本体1,670円)
部数 4,000部
一冊直接原価(印税・諸経費を除く) 468.78円
いくらの定価なら初刷りで採算が取れるのか 1,570円(本体1,524円)
・出版物はどうしても売れ行き良好な分野に偏り、その結果出版のジャンルが狭まって、発行点数も減少し、出版社も減ってしまいます。
・出版物は日本文化の普及において、最も手軽で万人が手に入れることができる文化財であるととらえている。
●書籍「出版再販~書籍・雑誌・新聞の将来は?」より
伊従 寛 著
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講談社 (1996年3月初版)
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