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ベストセラーの型(パターン)にはどんなものがあるか
ベストセラーの型(パターン)にはどんなものがあるのでしょうか。出版評論家の小林一博氏が書籍『本とは何か(講談社 刊)』の中でベストセラーの型について6つに分けて分析しています。書籍『本とは何か』から学びたいと思います。
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※書籍『本とは何か(小林 一博 著)』より
ベストセラーの型
ベストセラーの類型的に分けるとどんなことになるのだろうか。この分類についても、さまざまな意見があると思う。参考までに読んでいただきたい。
①自然発生型
読者が潜在的に求めていたニーズに適合し、タイミングも合って、自然な形で売れるもの。これが、マスコミの紹介などによって売れ行きが刺激され爆発的な人気を呼ぶ。(中略)
②企画・演出型
社会状況を分析し、読者の潜在している欲求を先取りして企画を立てる。そのうえ広告・宣伝に資金を投入して、パブリシティもおこない、ベストセラーを作りだす。新聞広告・テレビ広告のほか書評などによる話題作りが重要視される。広告関係者の協力如何が重要な意味をもつ。その方法の一つに、著者そのものを一人のエンターテーナーとしてのテレビ画面、新聞に登場させ、講演会やサイン会を催す方法をとることも多い。(中略)
③相互利用型
映画、音楽、ラジオ、演劇などの他メディアや、他業界の商品の発売と関連させて相乗効果を狙う方法。パブリシティなど広告、宣伝の技術が重要視され、メディア間を結びつける広告代理店の協力を欠かすことはできない。(中略)
④便乗型
これは、さらに大きく次の三つに分けて考えることができる。
イ、
映画・テレビ・ラジオ・音楽・演劇などの原作に採用されてベストセラーになるもの。NHK大河ドラマの原作はほとんど売れ行き上位を占める。ノベライゼイションは、文学作品などの原作がない映画・テレビ・ラジオなどの番組で人気が出たものを、逆に小説家、ストーリー化して出版する。(中略)
ロ、
海外のベストセラー作品を輸入・翻訳する。海外で評判になったベストセラーの輸入は古くからある。この場合、便乗型としてしまっては適当ではなく、誤解を招くかもしれない。が、あえてここに位置づけた。(中略)
ハ、
きわものご三家といわれているタレントもの、健康もの、暴露もの。これは、タイミングさえよければ、話題となり爆発的な売れ行きを誘い、市場を席捲する。ことにタレントものなどは、文章力のあるゴーストライターによって書かれると、タレントのエンターテーナー性と重なってブーム現象を呈することがある。しかし、“きわもの”といわれているだけあって、熱気が一度去ると、売れ足は突如ストップして返品の山を築く。(中略)
⑤市場操作型
一部の出版社が採用しているもので、大書店や地域の有力書店に重点的な配本をおこない、周辺書店への配本を制限したうえで、大宣伝する。宣伝に誘われた読者が周辺書店に行っても本はなくて買うことができない。書店のほうでは、配本されていないといいたくないので、“売り切れ”とか“品切れ”と答え、一方で注文を取引先取次や出版社あてにおこなう。つまり、意図的にハングリーマーケット状態をつくり、読者と書店を誘導する。(中略)
⑥その他
政治家・宗教団体・家元(趣味の団体)などの出版にあたって、市場操作型、便乗型、相互利用型の方法がとられる。選挙立候補のPR用出版もほぼ同様。こられの場合、大書店や、地域有力店を定め、関係者・支援者に指示して購入させる。一時的にでも売れると、それらの店は自店のベストセラー本として、取次店や出版社に報告する。新聞やその他のメディアにこの情報を流して話題をつくる。この演出は、圧力型ともいわれている。
●書籍『本とは何か~豊かな読書生活のために』より
小林 一博 著
講談社 (1979年10月初版)
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