大宅 壮一 氏より(書籍『実業と虚業〈第6〉企業編』より)
このページは、書籍『実業と虚業 大宅壮一の本〈第6〉企業編(大宅 壮一 著)』から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・これは、私のマスコミ生活50年の決算報告でもある。
・昔「色白くなる薬」というものをつくって売出した男がある。(中略)この「薬」を求めるものは、色の黒いものより、むしろ白いものに多いということである。色の黒いものは、これまで白くなろうとしていろいろと試みたが、すべて失敗してあきらめているのが多い。これに反して、周囲から色が白いといわれているものは、もっと白くなりたいという意欲を強くもっているのである。この「薬」が成功したのは、そういった心理の盲点をついたからだ。
・ニューヨークは、もとオランダ人の植民地で、ニュー・アムステルダムと呼ばれた。ここにインディアンの襲撃を防ぐために、高い城壁を築いた。“ウォール街”(城壁の町)という名前はそこから生れた。
・出版事業は、企業としてはきわめて特異なもので、これには“漁業説”と“農業説”との二通りある。
“漁業説”によれば、出版という仕事は、魚の大群のいるところをいちはやく発見し、これに網をうてば、たちまりベストセラーとなり、一挙に産をなすことができる。そのかわり、シケや不漁がつづくと、すぐ借金だらけとなり、破産するというふうで、すこぶる不安定であり、投機性の強いものである。
“農業説”によれば、出版は本来、地道なもの、地道でないと長つづきしないものだ。一定の土地をコツコツと耕して、わずかではあるが確実に収益をあげていくのがほんというである。反当り収穫というのは、年によって多少の農凶はあるが、いわゆる略奪経営をやると、翌年からは収穫がガタおちになる。「もうけすぐないよう、損しないよう」というのが、最上の出版経営である。
・「旅館とホテルはどこが違うのか」
というと、まるでラジオのクイズみたいだが、その答えは、だれもが考えているほど簡単なものではない。旅館は和式、ホテルは洋式といっただけでは、正解とはいえないのだ。
・地位が高いものほど、出社時間が早い。
●書籍『実業と虚業 大宅壮一の本〈第6〉企業編』より
大宅 壮一 著
サンケイ新聞社出版局 (1966年12月発行)
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