マリアンヌ・L. マクマナス 氏(書籍『災害ストレス~心をやわらげるヒント』より)
このページは、書籍『災害ストレス~心をやわらげるヒント(マリアンヌ・L. マクマナス 著)』から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・地震によって物的な被害が出ることは知られていますが、人の心にも被害が出ることに気づく人は少ないようです。心の被害はわかりにくいけれど、物的な被害と同じように破壊的なものです。
・大災害に巻き込まれたこと自体が大きなストレスになります。それに加えて、苦しんでいる人を助けられないことが欲求不満を生みます。さらに、自分のことしか考えずに他人を危険な目に合わせる人に対する怒りも、こみあげてきます。
・強いストレス状態にいる人は、自分は不当に扱われている犠牲者であると思い込みやすく、その結果周囲の人たちにつらく当たることがあります。これは心の傷による怒りが誤ったはけ口を見つけてしまった場合です。
・子どもが示すストレスのサインとして代表的なものを、次に挙げておきます。
ちょっとしたことにも泣く
指しゃぶりをする
便を漏らす
頭が痛いという
上手にしゃべれなくなる
考えていたことが混乱する
暗いところをこわがる
イライラする
なにごとにもおどおどする
夢を見てうなされる
一人になるのをいやがる
気分が落ち込む
食欲がなくなる
嘔吐をする
学校で一所懸命やらない
引っ込み思案になる
胃の調子が悪い
親にまとわりつく
助けてもらうことをいやがる
おねしょをする(中略)
子どもたちの行動が両親を混乱させ、親に拒否的な態度をとらせることがあります。危機のときにもっとも頼りにしている両親から拒否されることが、子どもたちのストレスをされに増加させていきます。
・災害を体験した人からの教訓として、回復に役立つ次の五つの心構えが挙げられています。
1、災害後の心身の変化が正常で自然な反応であることを知り、それを受け入れること。
2、やけになって、状況を悪化させないこと。
3、ストレスを発散させる方法を身につけ、活用すること。
4、できるかぎり、健康に気をつけた規則正しい生活を家族で心がけること。
5、さまざまな援助をできるだけ活用すること。
・自分の体験をほかの人と共有しましょう。地震のときに感じたことを話してみましょう。多少は、他人に頼ることも必要です。自分を犠牲にして他人につくすほうが気分がよいかもしれませんが、他の人が力になれる機会を認めてあげてもいいでしょう。とくに強いストレスを体験しているのならば、ほかの人に助けを求めるべきです。
・深呼吸も有効です。ストレスによって最初に影響を受けるのが呼吸なのです。息をとめたり、早くなったり、リズムに狂いが生じます。深呼吸の例を説明しましょう。
椅子に座って目を閉じ、60秒間安静にする。鼻から息を吸ったり、吐いたりするときの感覚に神経を集中する。呼吸にだけ神経を集中することにより、身体をリラックスさせる。
・罪悪感を捨てる(中略)
自分だけが生き残ってしまったという罪悪感にかられる人多いものです。(中略)
そのような答えの見つからない問題に時間を空費するのではなく、今助けを必要としている人たちのために時間を使うべきではないでしょうか。
・子どもたちが「地震ごっこ」をするのを許してやる。子どもたちは遊びを通して恐怖感を和らげているのです。
・災害対策に携わる人の心身の変化(中略)
パニックは伝染します。非常に強い不安をもった人と何日間も一緒にいると、災害対策に携わる人であっても同じ気分になってきます。災害対策担当者のストレスを減らすには、交代制を敷くことがたいせつです。
・災害後の感情と行動(中略)
恐れ(中略)
無力感(中略)
願い(中略)
うしろめたさ(中略)
恥ずかしさ(中略)
怒り(中略)
思い出(中略)
失望感(中略)
希望(中略)
感情をあらわにすることは、決して精神がおかしくなったからではありません。感情を否定し続けると、かえって神経にも身体にも悪い影響があります。むしろ涙を流すことで、気が楽になっていくと考えられています。
・災害対策に携わる方のストレスケア(中略)
ストレス軽減法
災害対策の先輩たちからのアドバイスを、いくつかご紹介します。
<体調を整える>
●毎日体を動かし、運動をする(軽い体操でも)
●食事のバランスに気をつける
●果物や野菜をとる(ビタミン剤を飲む)
●睡眠を十分とる
●熱い風呂につかる<>
<規則正しい生活習慣を守る>
●規則正しく、休憩・休暇をとる
●規則正しく、ゆっくりと食事をとる
<気分転換をはかる>
●一時期的に、災害対策の第一線を離れて仕事をする
●ときには同僚と息抜きをする
●好きな本を読む
●趣味の時間をもつ
<人間関係をたいせつにする>
●家に電話し、コミュニケーションを絶やさない
●お互いに体験したことを話し合う
●これまでに話したことのない人にも話しかける
●書籍『災害ストレス~心をやわらげるヒント』より
マリアンヌ・L. マクマナス 著
林 春男 翻訳
林 由美 翻訳
法研 (1995年4月初版)
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