斎藤 美奈子 氏(書籍『読者は踊る』より)
このページは、書籍『読者は踊る(斎藤 美奈子 著)』から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・カラオケ化する文学
・新人賞などに応募してくる若き作家志望者たちは、あまりに容易で緊張のない風俗に流されているのではないかとも思えてくる/ろくに文学も、そしてもちろん文芸雑誌も読んだこともないのに、公募ガイドなどを見て、新人賞に応募してくる人たちが、最近非常に多くなっているという。不思議なのは、文学を読んだこともないのに、どうして文学を書きたい、書けると思うのだろうか。
(沼野充義「文芸評論」/読売新聞一九九六年一〇月二二日)
まっとうな意見だと思うけれども、案外逆かも。当節の「文学」もちっとは読んでみたから「あ、この程度でいいのね」と思って応募してくるとか・・・・・・。
この現象を私は勝手に「純文学のカラオケ化」と呼んでいる。ポップミュージック同様、小説もいまや受容する(聞く/読む)ものから参加する(唄う/書く)ものへと変容したのだ。
・めまぐるしく回転する書店の新刊書棚を眺めていると、つくづく本は消耗品だなと思わざるを得ない。どんなベストセラーも、いやベストセラーこそ、数年後ないし数か月後には視界から消え、やがて読者の記憶からも消えてしまう。
●書籍『読者は踊る―タレント本から聖書まで。話題の本253冊の読み方・読まれ方』より
斎藤 美奈子 著
マガジンハウス (1998年10月初版)
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