書籍『ベストセラー物語〈中〉』(朝日新聞社 編集)より
このページは、書籍『ベストセラー物語〈中〉』(朝日新聞社 編集)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・五つの条件(中略)
日本のおけるベストセラーズの条件としては、つぎの五つのことがあげられる。それはフィクション、ノン・フィクションをふくめての話である。
1 日本人の共通概念をふまえているもの。共通概念という言葉がナマであるなら、それは国民感情の基本といってもよい、その基本は、三つある。(イ)骨肉愛、(ロ)求道、(ハ)物のあわれ、この三つである。これは主として吉川英治氏の諸作品を分析しての結果だが、かなり大きな一つの手掛かりである。
2 その時代の底流か、あるいは形成されつつあるが、まだ形をなしていない明日への動向へツメをかけたもの。
3 事件またが筆者が、社会面のトップ記事で扱われたこと、または人。ということは、筆者あるいはテーマの高い知名度、ということを意味する。
4 文章がわかりやすいこと。すくなくとも義務教育プラス一〇年ぐらいの読者にとって理解し得ること。
5 出版、発売のテクニック、あるいは偶然性。
・性を扱った本なら、たいていのものがある程度は売れるといわれる。だが、『性生活の知恵』ほど歓迎された本はかつてなかった。
本書が、これほどの売上げを示した理由のひとつに、その、世間をおどろかした著者の独創性があったことはたしかである。(中略)
性生活の解説書の出版者は、いかにすればこの「性交態位」を絵であらわせるかに苦心を重ねてきた。戦後、ヴァン・デ・ヴェルデの出版者のうちに、この「態位」を、絵であらわした結果、予想通り発禁のうきめにあったものだ。(中略)
そこへ、人形の写真による態位があらわれたのである。世間がおどろいたのも当然である。(中略)
版元が初版を五千部としたことからもわかるように、これほどの売れ行きを示すとは予想もしなかったにちがいない。(中略)
わずか数年のうちに一五〇万部以上も売れるほどのベストセラーとなった
・山岡荘八
徳川家康(中略)
『中日新聞』連載は山岡『家康』にとって幸福だった。というのは『中日新聞』の販売エリアこそ、この小説の主要な舞台にほかならぬからであった。(中略)
ほとんど『中日新聞』に読者エリアを舞台として、そこの出身者が活躍している。
●書籍『ベストセラー物語〈中〉』より
朝日新聞社 編集
朝日新聞社 (1978年4月初版)
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