北岡 俊明 氏 書籍『文章力~名文と悪文』より
このページは、書籍『文章力~名文と悪文』(北岡 俊明 著)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・結論を先に言うこと(中略)
①結論先出しの原則
これは言いたいこと、結論を先にのべることである。
②重点先出しの原則
重点となることを最初にのべることである。
③目的先出しの原則
目的を最初に明瞭に打ち出すのである。
④目標先出しの原則
同じく、目標を明瞭に掲げるのである。
・名作・名文に見る書き出しの8原則(中略)
原則1 思想(哲学・動機・目的・目標)の提示
原則2 トピック・情報の提示
原則3 時間の提示
原則4 場所の提示
原則5 状況・状態の提示
原則6 問題(困難やトラブル)の提示
原則7 情報・知識の提示
原則8 事実の提示
・原則1 思想を提示する(中略)
★『坂の上の雲』(司馬遼太郎)
「まことに小さな国が、開花期をむかえようとしている」(中略)
★『学問のすすめ』(福沢諭吉)
「天は人の上に人を造らず人の下にひと造らずといえり」(中略)
・原則2 トピック・情報を提示する(中略)
★『坊っちゃん』(夏目漱石)
「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間程腰を抜かしたことがある」(中略)
★『走れメロス』(太宰治)
「メロスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の王を除かねばならぬと決意した」(中略)
原則3 時間と事件の発端を提示する(中略)
★『妻と私』(江藤淳)
「五月二十二日の、午後六時半頃であった。平成十年のことである。大学から戻って、角の旧里見惇邸の前でタクシーを降りた私は、左の谷戸に通じる径を二、三歩行きかけた、眼の前に現れたわが家のたたずまいに、いつもとは違う異様なものを感じないわけにはいかなかった」(中略)
原則4 場所・物語を提示する
★『雪国』(川端康成)
「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった」(中略)
★『潮騒』(三島由紀夫)
「歌島は人口千四百、周囲一里に充たない小島である」(中略)
原則5 状況・状態・心理などを提示する(中略)
★『我輩は猫である』(夏目漱石)
「我輩は猫である。名前はまだ無い」(中略)
★『宮本武蔵』(吉川英治)
「------どうなるものか、この天地の大きな動きが。もう人間の個々の振る舞いなどは、秋かぜの中の一片の木の葉でしかない。なるようになってしまえ。武蔵はそう思った」(中略)
原則6 問題(困難やトラブルなど)を提示する(中略)
★『城崎にて』(志賀直哉)
「山の手線の電車に跳ね飛ばされて怪我をした。その後養生に、一人で但馬の城崎温泉へ出掛けた」(中略)
原則7 情報・知識を提示する(中略)
★『一夢庵風流記』(隆慶一郎)
「『かぶき者』または『傾き者』、『傾奇者』とも書く。最後の書き方が端的に言葉の内容を示しているように思われる。」(中略)
原則8 事実を提示する(中略)
★『半生の記』(松本清張)
「昭和三十六年の秋、文芸春秋社の秋の講演旅行で山陰に行った。米子に泊まった朝、私は朝早く起きて車を傭い、父の故郷に向かった」
・読者をひきつける書き出しを創作するには
●書き出しは推敲に推敲を重ねる(中略)
●短文で、簡潔に書き出せ(中略)
●おもしろいこと、おかしいことを書け
・無味乾燥とは、おもしろくもおかしくもない文章のことである。読者に対して、読ませる、聞かせる、興味をもたせる、何かを訴える、ということが欠落してしている文章である。実はこういう文章がたいへん多い。いったいこの人は、何の意図で書いているのか、読者のことを考えているのか、首を傾げたくなる。
・名文とは「一時の流行に終わることなく、時代を超えて歴史的に読みつがれてきた文章である」と私は定義している。
・名文の三分類(中略)
(1)思想的な名文
(2)論理的な名文
(3)内容の名文
・名文を書くための文章技術
名文の原則(中略)
①「歯切れの良さ」の原則(中略)
②「簡潔」の原則(中略)
③「リズム」の原則(中略)
④「メリハリ」の原則(中略)
⑤「おもしろさ」の原則(中略)
⑥「グングン引き込まれる」の原則(中略)
⑦「無我夢中にさせる」の原則(中略)
⑧「興奮する」の原則(中略)
⑨「時間忘却」の原則(中略)
⑩「寝食忘却」の原則(中略)
⑪「役立つ」の原則(中略)
⑫「情報収集」の原則(中略)
⑬「ノウハウ獲得」の原則(中略)
⑭「何か得した」の原則(中略)
⑮「読後充実感」の原則(中略)
⑯「やる気にさせる」の原則
・分かりさすさ・読みやすさの原則
①短文であること。(長文でないこと)
②分かりやすいこと。
③明瞭明晰であること。
④簡潔な表現であること。
⑤難解でないこと。
⑥論理的であること。
⑦あいまいでないこと。
⑧抽象的でないこと。(具体的であること)
⑨紋切り型でないこと。
⑩手垢がついていないこと。(斬新なこと、新鮮なこと)
⑪ひとりよがりでないこと。
⑫大上段に振りかぶらないこと。(自然体であること)
⑬幼稚でないこと。(大人の文章であること)
⑭情熱ややる気が伝わること。
⑮文章にメリハリがあり活き活きとしていること。
・読書人・森繁久弥さん(八五)の家の書庫には三万冊の本がある。
・文章は、(1)感じる文章、(2)思う文章、(3)考える文章の三つに分類できる。
・好きな作家や小説などの文章を徹底的に模倣する。そのための方法として、第一は「只管筆写」(しかんひっしゃ)である。第二は「只管朗読」(しかんろうどく)である。
只管筆写とは、経典の般若心経を筆写するように、文章を筆写して文体・文型を模倣するのである。江戸時代などの昔の人は、只管筆写で模写したものである。作家の故新田次郎や故松本清張などは只管筆写で文章訓練をしたそうである。
・只管朗読とは座禅の只管打座かたきている。ひたすら座って禅の修業をするように、ただひたすら朗読するのである。見習いたいと思う作品について只管(ただひたすら)朗読するのである。
●書籍『文章力~名文と悪文』より
北岡 俊明 著
総合法令出版 (1999年11月初版)
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