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石黒 圭 氏 書籍『文章は接続詞で決まる』より

このページは、書籍『文章は接続詞で決まる』(石黒 圭 著)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・プロの作家は接続詞から考えます。接続詞が、読者の理解や印象にとくに強い影響を及ぼすことを経験的に知っているからです。


・日本語で書かれた、接続詞にかんする著作や論文は、これまで八〇〇以上発表されていますが(北海道教育大学札幌校のウェブサイトにある、馬場俊臣氏作成の接続詞関係研究文献一覧による)


・一読して、読みやすい文章だっただろうと思います。それは、各段落で冒頭にある接続詞が効いているからです。そのことは、接続詞だけを取りだしてみると、よくわかります。

寒い冬にぴったりの、体も暖まる、おいしいシチューを紹介します。
まず、・・・・・・。
つぎに、・・・・・・。
それから、・・・・・・。
ここで、・・・・・・。
そして、・・・・・・。
最後に、・・・・・・。

接続詞のおかげで、「・・・・・・」の部分が書かれていなくても、そこに入る内容が透けて見えるようです。


・接続詞の本書の定義

接続詞とは、独立した先行文脈の内容を受けなおし、後続文脈の方向性を示す表現である。


・本書では、接続詞を大きく四つのタイプに分けます。「論理の接続詞」「整理の接続詞」「理解の接続詞」「展開の接続詞」です。また、特殊なものとして「文末の接続詞」と「話し言葉の接続詞」を取りあげます。


・論理の接続詞 --- 「順接の接続詞」 --- 「だから」系
                          --- 「それなら」系


          --- 「逆説の接続詞」 --- 「しかし」系
                         --- 「ところが」系


整理の接続詞 --- 「並列の接続詞」 --- 「そして」系
                         --- 「それに」系
                         --- 「かつ」系


          --- 「対比の接続詞」 --- 「一方」系
                         --- 「または」系


          --- 「列挙の接続詞」 --- 「第一に」系
                         --- 「最初に」系
                         --- 「まず」系


理解の接続詞 --- 「換言の接続詞」 --- 「つまり」系
                         --- 「むしろ」系


          --- 「例示の接続詞」 --- 「たとえば」系
                         --- 「とくに」系


          --- 「補足の接続詞」 --- 「なぜなら」系
                         --- 「ただし」系

展開の接続詞 --- 「転換の接続詞」 --- 「さて」系
                          --- 「では」系


          --- 「結論の接続詞」 --- 「このように」系
                         --- 「とにかく」系

              四種十類の接続詞

・「それなら」系の接続詞にはどんなものがあるでしょうか。「それなら」以外には、「それでは」「すると」「そうすると」「そうしたら」「だとすると」「だとしたら」などがあり、否定の「それなら」系には「そうしないと」「そうでないなら」「さもないと」などがあります。しかし、こうした接続詞は話し言葉が中心


・文章を書いていて「しかし」を濫発しがちな人は、無駄な「しかし」を削れないか吟味する必要があります。(中略)逆説の接続詞を使いすぎると文章が読みにくくなるという人がいます。じつは、それは半分は正しく半分は誤りです。


・「ところが」だった接続詞が、二回め以降は「それでも」に変わるという点です。つまり、読み手の気持ちに合わせた接続詞を選んできているということです。


・「ところが」系------強い意外感をもたらす(中略)

「ところが」「にもかかわらず」「それなのに」がその代表例で、話し言葉でしばしば用いられる「なのに」「そのくせ」などもこのグループに含まれます。


・「そして」系の接続詞は、専門的には「添加の接続詞」とも呼ばれます。話をあとからどんどん足していくことができるからです。(中略)


添加の接続詞をここでは三つ挙げておきます。「そして」「それから」「また」です。


・並列の接続詞の三つめは「かつ」系の接続詞です。「かつ」「および」「ならびに」があります。


・大切なことは、「第一に」系の接続詞と「最初に」系の接続詞を混ぜないこと


・「つまり」系------端的な言い換えで切れ味を出す

「つまり」系は、先行文脈の内容を保ちながら、表現やものの見方を後続文脈で変えることを予告する置換の接続詞です。「すなわち」「つまり」「ようするに」「いいかえると」「換言すると」「いわば」「いってみれば」などがあります。


「いいかえると」「換言すると」は文字どおり言い換えることを予告する表現であり、「いわば」「いってみれば」は「たとえていえば」ということで、比喩的・抽象的な表現に言い換える表現です。


・「AつまりB」において、AよりBのほうが短いことが普通です。しかし、「つまり」の場合、わかりやすさが優先しますので、わかりやすくなっていれば、かならずしもBのほうが短くなくても使われます。


・「とくに」系の接続詞は、先行文脈に示された内容に特別よく当てはまりそうな例を予告するのに使われます。「とくに」系の接続詞のあとには、その内容に合う典型的な例が示されるので、読み手も強く意識してその部分を読むことになります。「とくに」系の接続詞には「とくに」「とりわけ」「こと(殊)に」「なかでも」などがあります。


・「なぜなら」系------使わないほうが洗練した文章になる

「なぜなら」系の接続詞には、「なぜなら」「なぜかというと」「だって」「なにしろ」「なにせ」「というのは」「というのも」などがあります。


・「ただし」系の接続詞には、「ただし」「もっとも」「なお」「ちなみに」などがあります。「ただし」は、「その公園に行けば、名水百選に選ばれた水が飲み放題である。ただし、ペットボトルなどの容器を持参のこと。」のように、先行文脈の成立を保証するために必要な条件を、後続文章で補うことを予告します。


・結論を表す接続詞の典型は、それまで述べてきた内容を踏まえて結論を導くことを予告する「このように」系の接続詞ですが、それまで述べてきた多様な議論にとりあえず決着をつけて結論を出すことを予告する「とにかく」系の接続詞もあります。


・「とにかく」系の接続詞は、「とにかく」「いずれにじても」「いずれにしろ」「どっちにしても」「どっちみち」などがあります。


・「なぜなら~からだ」というセットのように思えます。


・対話での接続詞はその場の空気を変える(中略)

対話での使用のリスク①------相手の発話権を奪う

しかし、接続詞を使ってその場の空気を変えることには、ある種のリスクを伴います。ここでは、それを四つに分けて示しましょう。


第一のリスクは、話している相手の発話権を奪うことで、気持ちよく話している人の気分を害するというものです。「というか」「ていうか」「つうか」「てか」などは、「別の言い方をすると」という「むしろ」系の接続詞、発話権を交替させたいときによく使います。しかし、話しているがわの気持ちとしては、話している途中で聞き手に割って入られることはけっして気持ちのよいものではありません。(中略)


対話での使用のリスク②------言い方を訂正して気分を逆なでする(中略)

対話での使用のリスク③------逆説の使用で無用な対立を生む(中略)

対話での使用のリスク④------自己正当化を目立たせる


・「てか」を好んで使う人は、すぐに新しい話題に移りたがる飽きっぽい人かもしれませんし、「ようするに」が口癖の人は、結論を急ぎたがるせっかちな人なのかもしれません。「でも」をよく使う人は、他人の言うことを素直に受けいれるのが苦手な頑固な人である可能性があります。「だから」を使いたがる人は、自分の主張を人に押しつけたがる押しの強い人ももしれませんし、「だって」を好む人は、言い訳が癖になっている、自己防衛本能が強い人かもしれません。


もちろん、現実には悪い面ばかりではないでしょう。「てか」好きな人には機転の利く、話していて楽しい人が多いでしょうし、「ようするに」を好む人は話の本質を的確にとらえる力に長けている人が多そうです。「でも」を使い手は思考の進め方が慎重で硬そうな感じがし、「だから」の使い手は面倒見のよい世話好きな人の印象があります。「だって」をよく使うのは人に言葉を伝えたいという意識のひときわ強い人でしょう。


・手元にある資料で文頭の接続詞の頻度について上位五位までをジャンル別に挙げると、新聞が「しかし」「また」「だが」「一方」「さらに」、小説が「しかし」「そして」「それで」「だが」「でも」、講義では「で」「それから」「そして」「つまり」「だから」です。(中略)


新聞は、事件や事故を伝える面と論調を伝える面がありますので、整理の接続詞と逆説の接続詞が中心です。小説は、時系列的な展開を中心とし、逆説の接続詞によって意外感を示します。新聞も小説も逆説の接続詞が多いのは、逆接接続詞のは省略されにくい接続詞だからです。


●書籍『文章は接続詞で決まる』より
石黒 圭 著
光文社 (2008年9月初版)
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