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書籍『出版のユニバーサルデザインを考える』(出版UD研究会 編集、読書工房 刊)より

このページは、書籍『出版のユニバーサルデザインを考える』(出版UD研究会 編集、読書工房 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・読むことや書くこと、聞くこと、つまり「ことばの理解」と一言で言っても、私たちはその背後で、さまざまな処理を同時平行して行っています。まず、文字の形を認識する。それから、今度は文字を区切って単語にする、文節にするといった処理をしています。さらにそのほかにも、文脈の流れから次に来る単語や意味を予測、つまり先読みもしています。


・文章理解と一言で言っても、複数の認識処理を頭の中で同時に実行しながら、それぞれの処理にうまく心のエネルギー、脳の処理のリソースがうまく割りふられることで実現できるですね。ところが、どこかに困難さを抱えていたり、バランスが悪かったりすると、最終的な理解にうまく行き着かないことがあります。


そこで大事なこととして、人間の同時処理の能力には、ある一定の容量制限があるということを知っておく必要があります。


・新潮社は、一九八七年からおよそ二十年以上にわたって、カセットブックとCDを販売してまいりました。文芸作品の朗読を中心に、昔はカセットテープだったのですが、いまはCDを出しております。

※新潮社メディア室室長 岡田雅之氏談


・一九八七年の「新潮カセットブック」です。カセットのパッケージを文庫の形にしまして、これを書店に並べて販売しました。


・アメリカでは時間の節約、日本ではゆっくり使うため(中略)

アメリカでは時間の節約のためにカセットを使うということだったんですが、日本では時間の節約ではなくてゆっくり使うためにカセットが使われたようです。(中略)四〇ページの文庫を読むのにカセットで聞いたら九〇分かかるんですね。読んだら二〇~三〇分で読めると思うんです。つまり同じものを読むにしても、耳からゆっくり味わいたい、時間をたっぷり使いたい、そういう方たちのニーズに合ったということです。

※新潮社メディア室室長 岡田雅之氏談


・カセットブックを始めたときに「活字離れ」みたいなことを言われたことがあったんですが、じつはまったく逆で、カセットブックやCDの読者というのは、書斎で本を広げながら耳で聞いてより深く味わう、ものすごい読書人がさらにもっと深く味わうためにカセットブックやCDを聞くという形です。

※新潮社メディア室室長 岡田雅之氏談


・日本語の読み上げのむずかさし(中略)

例えば、「池袋に行った」という文章を、「イケブクロニイッタ」と読むべきか、「イケブクロニオコナッタ」と読むべきか瞬時に判断しなければなりません。また「会議を迅速に行った」という文章では、「イッタ」ではなく、「オコナッタ」と読ませなければなりません。

※日立製作所中央研究所 北原義典氏談


・出版物というのは圧倒的に見るものでなんですけれども、例えば、さわる本がってもいいし、聞く本があってもいい、中には、においを嗅げる本があったり、食べられる本があっても面白いかもしれない。

※広瀬浩二郎氏談


●書籍『出版のユニバーサルデザインを考える~だれでも読める・楽しめる読書環境をめざして』より
出版UD研究会 編集
読書工房 (2006年10月初版)
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