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電子書籍における妥当な価格はいくら? 寄稿:冬狐洞隆也氏
電子書籍を購入する場合、紙の本と比較して妥当と思われる金額のアンケート調査を紹介したい。
項目 |
% |
紙の本、定価の 10%以下 |
16.4 % |
紙の本、定価の 11%~ 30% |
26.4 % |
紙の本、定価の 31%~ 50% |
36.7 % |
紙の本、定価の 51%~ 80% |
17.3 % |
紙の本、定価の 81%~ 同額 |
2.5 % |
その他 |
0.8 % |
読者が望む “電子書籍の価格”とは
一番多かったのは、紙の本の定価の31%~50%以下の価格設定を望んでいる。次が、11%~30%以下の価格で、これは中古書籍と同じような価格を望んでいると考える。現状ではキンドルストアの電子書籍の価格は出版社の希望で紙の本の7割までしか安くならず、他の電子書籍と横並びである。
コンテンツホルダーの上から目線が、デジタル化を含めて消費者を納得させられるか、それともインターネットは基本的にタダであるとの主流的意見を覆すことが出来るのか興味がある。
電子書籍に対する不満
電子書籍や電子書籍サービスに対する不満の1位は、電子書籍の価格が割高に感じると言う別の5000人のアンケート結果が出ている。アマゾン・ジャパンは電子書籍配信に当たりホールセールモデルとエージェンシーモデルの二つの契約を用意し、出版社がどちらでも選択できるようにした。
しかし、価格設定権をアマゾンが持とうが、出版社が持とうが、いずれバーゲンセールを行う必要が出てくることは間違いない。電子書籍を電子書籍ストアで販売するといったビジネスモデル自体が現在のところ出版社の経営安定化の決定打にはならないからである。
電子書籍が広がったとき、出版社に求められるもの
アマゾンと楽天の電子書店が2013年春までに拡大していなければ、定着するのは電子教科書の普及以後の話しとなろう。電子書籍市場が大きく広がるのは、電子書籍端末機が電子機器の新製品としてではなく、読書の延長としてヘビー読書家(16歳以上推定16,541千人)に評価される日が来た時なのではないか。電子書籍の時代には当分なりそうに見えないと個人的には思っている。
出版社は従来から再販・委託制度という権益に保護されてきたが、仮に電子書籍が拡大すると取次・書店の依存度は少なくなる。だが、代わりに直接、消費者相手のマーケティングノウハウを蓄積する必要が出てくる。
紙の本とは全く違う電子書籍流通にはインターネットが絡んでくるので、果たしてインターネット情報のマーケティングが出来る出版社がどのくらいあるのだろうか疑問である。
電子書籍を出版社が作るという専売特許は無くなり、誰でも企画能力のある人が電子書籍を作ることが出来るように成ってくるのではないか。それは携帯小説が復活したのと同じであり、更には電子書籍が成功しようとしまいと、紙の本の業界は消費税増税に向けて少子化・生産年齢人口減少で成長は望めず、危機に瀕する厳しい実態が待ち受けているのを認識する必要があろう。
寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏