長谷川 嘉哉 氏 書籍『介護にいくらかかるのか?』(学研教育出版 刊)より
このページは、書籍『介護にいくらかかるのか?』(長谷川 嘉哉 著、学研教育出版 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・「誰も教えてくれなかったものですから・・・」(中略)
社会制度に関しての我が国の建前は、あくまで『申請主義』。自分から申請してはじめて「社会資源」を使える、というしくみになってます。つまり、「知らなければそれまで」なのです。
・介護フローチャート
介護が必要 → 認知症介護
→ 身体介護
身体介護 → トイレ・入浴不可
→ トイレ・入浴可能
認知症介護 → 周辺症状(+)
→ 周辺症状(+)治療で改善
→ 周辺症状(-)
身体介護 → トイレ・入浴不可 → デイサービス・ショートステイの利用の否かで施設も検討
身体介護 → トイレ・入浴可能 → 在宅生活
認知症介護 → 周辺症状(+) → 施設入所も検討
認知症介護 → → 周辺症状(+)治療で改善 → 在宅生活
認知症介護 → 周辺症状(-) → 在宅生活
・介護のまつわる問題は「人手の問題」「場所の問題」「心の問題」「お金の問題」に大別できるが、中でも「お金も問題」はかなりのウェイトを占める問題だ。
・『要介護認定』を受けられのは、大きく分けて次の2つのどちらかの条件を満たす方です。
①65歳以上で、日常生活に何らかの支援・介護が必要な人。
②40~65歳で、加齢が原因とされる病気により、日常生活において何らかの支援・介護が必要な人。
・要介護制は、要支援①、②と要介護①~⑤の7段階に分類されます。参考までに、各段階のイメージを話しておくと、こんな感じでしょうか。
●要支援①:自分のことはほぼできるが、家事などの日常生活に一部介助を要する。
●要支援②:重い認知症がなく心身の状態も安定しているが、日常生活に一部介助を要する。
●要介護①:食事や歩行はひとりでできるが、心身の状態に安定が見られず、または認知症により金銭管理、家事、入浴などの部分的介助を要する。
●要介護②:立ち上がりや歩行、トイレや入浴などで一部介助を要する。または認知症により理解力低下がみられる。
●要介護③:自力で立ち上がりや歩行はできず、トイレや入浴、着替え等全体的な介助を要する。認知症では問題行動が現れる。
●要介護④:立ち上がりや歩行がほとんどできず、トイレや入浴、着替えや食事など生活全般に介助を要する。認知症では、理解力低下が顕著になる。
●要介護⑤:寝返り、起き上がりにも介助を要する。認知症では問題行動が多発する。
・要介護ごとの限度額
【要介護度】 【利用限度額(1カ月)】 【自己負担額(1カ月)】
要支援① 4万9,700円 4,970円
要支援② 10万4,000円 10,400円
要介護① 16万5,800円 16,580円
要介護② 19万4,800円 19,480円
要介護③ 26万7,500円 26,750円
要介護④ 30万6,000円 30,600円
要介護⑤ 35万8,300円 35,830円
・介護保険のサービスのなかで、「訪問」と頭につくサービスには、「訪問介護」「訪問入浴」「訪問看護」「訪問リハビリ」の4つがあります。
・「特養」は主に「要介護③」以上に比較的重度の介護を必要とする高齢者の方向けの施設で、食事・入浴・排泄など、生活全般の介助をしてくれるほか、療養を含めた健康管理や機能訓練などもしてくれるところです。
・「老健」は、比較的症状の軽い方が医学的管理の元で、看護・介護・リハビリテーションなどを受けながら在宅復帰を目指す施設、という位置づけです。
・「グループホーム」とは、5~9人の認知症患者さんがひとつのグループになり、介護を受けながら共同で生活する施設、一方「介護付き有料老人ホーム」は一般的には認知症のない方が、身体介護を受けながら生活する施設です。
・いざ、ご家族を介護しなければならなくなった時には、できるだけご自分たちだけで悩まずに、社会に支援、プロの助言を聞いていただきたいと思います(中略)
病院外で相談する場合は、各市区町村の「介護保険課」に出向くか、地域には、介護保険制度、医療や介護、保健や福祉などのあらゆる相談の窓口である「地域包括支援センター」がある
・2週間も続けると通院だけでもフラフラになってしまいました。点滴を打つ看護師さんが見かねて、地域に在宅医療をしている診療所があるから相談してみてはと言ってくれました。
・「介護休業給付金」の制度がどんなものかを説明します。ご家族の介護のために休暇を取っている期間に、雇用主から支払われる給料が「ゼロから月額の4割」だった場合に、「介護休業給付金」として、月額報酬の原則40%が支給される、という制度です。
・最近、家庭の事情などにより高齢者が高齢者の介護をせざるをえない「老老介護」をしている方からよく聞く言葉あります。それは「子供や家族に迷惑をかけたくない」。
・在宅介護と施設入所をどう選択すべきか(中略)
入所する施設の選択のコツは、「死ぬまで一箇所に」と考えないことです。(中略)たとえば、認知症の患者さんが、その残存機能を生かす目的で「グループホーム」に入所したとします。その後、日常生活動作が低下してベッド上に生活が主体になると、あえてグループホームに入所し続ける必要性がなくなります。その際は、重度介護に適した、特別養護老人ホーム等へ移ることも検討するべきでしょう。
・私の経験だと、場所や環境の問題は「意外となんとななる」のです。大事なのは「人」の問題のほうです。つまり「どこでみるか」より「誰がみるか」ですね。
・世の中には、知らないがために損をすることがたくさんあります。とりわけ、社会制度に関してのわが国の建前は「申請主義」です。利用者側が「申請」して、初めてその社会資源が使わるわけですね。残念ながら「知らなかった」という理由では誰も助けてくれないのです。
・訪問系介護サービスにかかる金額を知る(中略)
主な訪問系のサービスには、「訪問介護」「訪問入浴」「訪問看護」「訪問リハビリ」の4つがあります。
・介護サービスの利用料金
【サービスの種類】 【時間】 【概算料金】
身体介護 30分未満 約250円
1時間未満 約400円
1時間以上 約580円
※以後30ごとに 約80円加算
生活援助 1時間未満 約230円
1時間以上 約300円
訪問介護 20分未満 250円前後
30分未満 400円前後
1時間未満 600~800円前後
1時間半未満 800~1000円前後
訪問リハビリ 1回20分間 約300円(中略)
ここで提示している金額は、あくまでも要介護度による支給限度額内、つまり1割負担でサービスを受ける場合の金額です。限度額を超えた場合は、この10倍の金額を支払うことになります。
・通所系介護サービスにかかる金額を知る(中略)
デイサービスにかかる費用は、「施設の規模」「要介護度」「利用時間」によって細かく決まっています。
・デイサービスの利用料金
【要介護度】
要介護①
3時間以上 4時間未満 約440円
4時間以上 6時間未満 約600円
6時間以上 8時間未満 約800円
要介護②
3時間以上 4時間未満 約500円
4時間以上 6時間未満 約680円
6時間以上 8時間未満 約920円
要介護③
3時間以上 4時間未満 約570円
4時間以上 6時間未満 約780円
6時間以上 8時間未満 約1050円
要介護④
3時間以上 4時間未満 約640円
4時間以上 6時間未満 約870円
6時間以上 8時間未満 約1200円
要介護⑤
3時間以上 4時間未満 約700円
4時間以上 6時間未満 約970円
6時間以上 8時間未満 約1300円
要支援①
※通常週1回の利用で1カ月あたり約2200円
要支援②
※通常週2回の利用で1カ月あたり約4400円(中略)
この金額もすべて1割の自己負担金額ベースで、あくまでざっくりとしたものです
・特別養護老人ホーム(通称「特養」)=主に「要介護③」以上の比較的重度の介護を必要とする高齢者の方向けの施設。
・介護老人保健施設(通称「老健」)=比較的病状の軽い方が医学的管理の元で、看護、介護、リハビリテーションなどを受けながら在宅復帰を目指す施設。
・少しでも利用に前向き気持ちが現れたら、まずは「短期入所生活介護(通称「ショートステイ」)」を試してみるのもひとつの方法です。「ショートステイ」とは、「特養」や「老健」などの施設に宿泊できるサービスで、介護者のリフレッシュにも有効ですから、一度試してみる価値はあると思います。
・近年「一時金ゼロ」を宣伝文句にした有料老人ホームもあるようですが、少し割高な家賃を毎月払っているに過ぎませんから、決して何百万円も得する話ではありませんので注意が必要です。
・「特養」はギリギリの状態で運営されています。というのも、介護保険施設は、定員も介護報酬の単価も、すべて厚生労働省によりきめられています。さらに、必要な人員配置まで決められているのです。つまり、経営上、収入の上限が固定され、支出のうちでも多くを占める人件費まで固定されているというわけです。
・家族の「世帯」を分離して、世帯収入を下げるという選択肢もあることをぜひ知っておいてください。特に、入居をされる利用者さんの年金が少なく、単独では住民税非課税世帯になる場合には有効な手立てです。
・近年「主治医より主治看護師を」と言われ始めているのをご存知でしょうか?というのも、看護師さんたちは「できること」がとても多いのです、ご存じのように、ホームヘルパーさんたちは、医療行為にあたることをしてはなりません。一方、おむつを換えてあげたり、お風呂に入れてあげたりする医師もいませんよね。そう考えていくと、それらを全部できるのが看護師という仕事なのです。
・主な介護施設には、「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保健施設(老健)」「グループホーム」「有料老人ホーム」「高齢者賃貸住宅」がある。
・認知症と診断されているわけですから、きちんと申請していれば障害の程度が認定され、障害者手帳を受け取ることができたはずです。しかも、障害者手帳があれば、医療費は“全額無料”です。(中略)「誰も教えてくれなかったものですから・・・・・・」
・「障害」の定義は何でしょうか?障害者基本法では、以下のよう定義されています。「障害者とは、身体障害、知的障害又は精神障害があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」
・ぜひとも知っておいてください。認知症による認知機能障害は、この精神障害に含まれるのだということを。
・(※障害者)手帳が交付されると、どんな権利が発生するかというと、
●医療費の自己負担がなくなる
●確定申告時の所得税の控除が受けられる
などの権利です。
・「健康保険は病院にかかるだけのもの」と思っていませんか?(中略)
日本の健康保険制度には、保険給付以外にも“意外な”給付金があることを多くの方はご存じないのです。その代表的なものが「傷病手当金」ですが、サラリーマンは、仕事ができなくなっても、働けなくなった日から1年半、傷病手当金が支給されます。そしてその後、障害等級に該当すれば、途切れることなく障害年金が支給されます。
ちなみに自営業者の場合、この傷病手当金はありません。(中略)
残念ながら勤務先の健康保険がこれに該当しない場合は無理ですが、全国健康保険協会管掌の組合保険に加入している場合は、「傷病手当金」として、標準報酬月額の3分の2が支給されます。
・国民健康保険・全国健康保険協会管掌保険いずれも、出産時に一児につき42万円が支給されます。さらに全国健康保険協会管掌保険の本人であれば、出産の日(実際の出産が予定日後の時は出産予定日)以前42日目から出産の日の翌日以降56日まで計98日間、一日につき標準報酬月額の3分の2が出産手当金として支給されます。(中略)
また、死亡時には「埋葬料」が支払われます。全国健康保険協会管掌保険の本人であれば、死亡時標準月額の1カ月分。扶養者もしくは被扶養者の場合でも5万円が支給されます。
一方、国民健康保険にも「埋葬費」というものが存在します。市区町村によって違いはありますが、2~7万円が支給されます。
・病気やけがで働けなくなった場合には18カ月間「傷病手当金」を受け取れます。仮にその間に「退職」を考えた場合に、同時に「失業手当」をもらってしまうという選択肢もあるとしたらいかがでしょうか?(中略)
雇用保険の1つである「失業手当」は原則1年です。しかし、その間に病気等で続けて30日以上働けない期間が生じた場合は、その分だけ最高3年まで、受給期間を延長することができるのです。
・医師は「診断書」について、どの程度の知識を持っているのでしょう?残念ながら、医学部の6年間の教育では、全くこれらに触れることはありません。
・「年金」と聞くと、ふつう「老齢年金」を思い浮かべるでしょうが、年金は老齢年金だけでありません。障害が残って働けない際の「障害年金」、自分が亡くなった際の「遺族年金」の存在も忘れないでください。(中略)
この「障害年金」、じつは約10万人の方がもらい忘れているとも言われています。
・最ももらい忘れが多い公的制度(中略)
「特別障害者手当」は、月額で2万6440円が支給されます。(中略)
特別障害者手当とは、国の制度で「精神又は身体に著しい重度の障害があるために、日常生活において常時特別の介護が必要な20歳以上の在宅障害者に支給される手当」のことです。
・自営業者の方であるなら、収入を保証する「所得補償保険」に入るのも一案です。これは、病気やけがで就業不能となった時の損失補償する保険で、病気やけがで就業不能の時、保険金が月額で支払われます。入院の有無は関係ありません。
・「頑張りすぎない勇気」のようなものも必要ではないでしょうか?「いいかげん=いい塩梅」もいいものです。
●書籍『介護にいくらかかるのか?~いざという時、知っておきたい介護保険の知恵』より
長谷川 嘉哉 著
学研教育出版 (2011年5月初版)
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