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書店の売場面積からみる“出版界の現状” 寄稿:冬狐洞隆也氏
まずは、売り場面積ごとの書店数を紹介したい。
売場面積 |
店舗数 |
店舗占有率 |
500坪以上 |
409 |
3.0 % |
499~300坪 |
949 |
7.0 % |
299~100坪 |
3,012 |
22.3 % |
99~70坪 |
1,127 |
8.3 % |
69~40坪 |
1,662 |
12.3 % |
39~20坪 |
2,300 |
17.0 % |
19~1坪 |
2,661 |
19.7 % |
0坪 |
1,378 |
10.2 % |
合計 |
13,498 |
100 % |
※アルメディア調べ 2012年5月1日
立地別にみる売上げの良い本屋、悪い本屋
書店は立地条件・坪数で極端に売上が違ってくる。現在は「駅ビルの中」がトップ。一方、最低の売上が「住宅街」と数字は出ている。一度出店すると中々移動できないのも書店の特徴であり他の小売業と違うところでもある。
雑誌とコミックを支えている書店は、ここ
一番多い書店数は 100~ 299坪で、次が 1~ 19坪、 3番目が 20~ 39坪。 39坪以下が全体の 6.7%・ 4961店を占めている。これらの書店が雑誌・コミックを支えている。その雑誌が売れずコミックに陰りが見えてきては何を売ればいいのか心配になる。
店舗を持たない本屋もある
「0坪」は本部・営業所、または外商のみを行っているなど店舗を持たない事業所の数。つまり、お客様から注文のみを受けている書店があるのだ。坪数全てが出版物の売場ではないことも認識する必要がある。
最近話題になっている書店の形態
書店は現在の出版物の利益率では経営が成り立たなくなってきている。複合書店が成立するようになったのは周知の事実。出版物だけではなく、DVDやCD・文房具・ファンシーグッズ・携帯電話機・食料品・水・化粧品・レンタル・バーゲンブック等書店で売れる可能性のある商品が全て揃い始めている。
とはいえ、全てが順調に売上を上げているとは限らない。最近話題になっているのは喫茶店との複合である。喫茶店の利益率の高いのは誰もが認めているが粗利益率が 60%もある。
今年に入ってからの新規出店で売上が目標に届かない書店が多く見受けられる。さらに、既存店でも昨年対比でクリアしている書店も聞こえてこない。大手チェーン店は成績の悪い店舗を閉鎖すれば済む。しかし、家業書店は 2014年からの消費税増税を契機に、廃業の道に進むとところが多く出ると予想する。一部立地条件によって人口の変化で売上の上がった書店もあるが、大部分の書店は厳しくなっている。
他の業種と違い書店は、商品の回転率の話題はあまりしていない。坪数が多くなると回転率が悪くなるのは周知の事実。小売商である限り回転率を重視するのは当たり前の話で、書店は他の小売商とは違うとの認識が既に間違っている。
書店の回転率が悪い理由
それは、年間に 1回も動かない商品が店内に 40%も在庫されていることにある。取次の日販では、取次主導の配本から書店の意志による仕入れに方向を変えようとしている。しかし、委託制度があるので簡単ではない。いずれオンデマンド出版で客注だけは確保されてくるので回転率の悪い商品も店内に置くことは無く(出版社も同様)、解消されると思うし既にその兆候は出ている。
出版社の営業は書店の「坪数」に惑わされず、来店する「購買客数」で判断をしないと不効率な販売をすることになるので注意を要する。
寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏