電子書籍『誰が音楽を殺したか? (週刊ダイヤモンド 特集BOOKS(Vol.1)) 』(清水 量介 著、森川 潤 著、週刊ダイヤモンド編集部 編集、ダイヤモンド社 刊)より
このページは、電子書籍『誰が音楽を殺したか? (週刊ダイヤモンド 特集BOOKS(Vol.1)) 』(清水 量介 著、森川 潤 著、週刊ダイヤモンド編集部 編集、ダイヤモンド社 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・1998年におよそ6000億円だった日本のCD市場は、今日では3分の1近くまで縮小し、世界の音楽市場も12年間で4割も減った。世界の5大レコード会社は3つへと集約され、米国の音楽家の3割が失業の憂き目に遭っている。
・はたして、この惨状を生んだ犯人は誰なのか。(中略)むろん、これらすべてが複合的に影響しているのだろう。しかし、最大の戦犯はレコード会社自身といえる。既存の権益、収益構造を守ろうとするあまり、リスナーの利便性を奪ってきたからだ。(中略)
特に最大手のソニーミュージックと親会社ソニーの罪は大きい。自社のハードとソフトの連携を気にするがあまり、多くの人気邦楽アーティストを抱えているにもかかわらず、新しい配信サービスなどに積極的にコンテンツを提供してこなかったのだ。
・エイベックスを見ればわかるように、壊滅的に縮小しているのは、主にCDや旧来の音楽配信であって、コンサートやグッズ販売は好調なのだ。実際、コンサート市場は10年前の800億円弱から、現在は1600億円と2倍に増えた。
言ってみれば、リスナーの音楽への愛や、音楽に接する時間は減っていなかったが、それを収益に結び付けるモデルが、成功体験にこだわるがあまり、陳腐化していたということだ。海外では、ソーシャルネットワーキング機能を強化した定額聴き放題サービス「Spotify(スポティファイ)」などリスナーの視点に立った一歩も二歩も先に進んだビジネスモデルが登場している
・時代を彩るような新人がなかなか出てこない(中略)
若手のヒットが難しくなった理由は大きく二つある。
一つは、純粋に新人に投資する余裕がなくなったためだ。ヒットが見込まれる新人に対しては専属契約の対価として、2000年ごろまでは「援助金」の名目でレコード会社から月100万円単位の資金が提供されていた。「2年契約で億円単位はよくあった」と同幹部は打ち明ける。(中略)
もう一つは、ヒットの方程式が通用しなくなったことだ。一番大きいのがマスメディアの威力。エイベックス関係者は「浜崎あゆみはマスメディアの申し子。とにかく話題になる仕組みをつくり上げて、ヒットを連発した」と打ち明ける。だが、今は「テレビでの頻繁な露出には、視聴者がほとんど反応しなくなった」という。
・レコード会社の利益の源泉だった「原盤権」の一部を、アーティスト側が買い取る例も増えている。つまり、音楽家側も「ビジネスを知らないまま大金をもらう」(業界関係者)といった会社任せの姿勢ではなく、自らスポンサーを探すなど、自身の環境を自分でマネジメントしていく姿勢が不可欠になっているといえる。
・CDがドル箱でなくなったことで、コンサートでアピールできる実力派が生き残るという“原点回帰”の現象が起きている側面もある。いわば演歌の全盛期のように歌唱や演奏、パフォーマンスで人々を強烈に引き付けるアーティストだけが今後、継続的に活躍していけるのだろう。
●電子書籍『誰が音楽を殺したか? (週刊ダイヤモンド 特集BOOKS(Vol.1)) 』より
清水 量介 著
森川 潤 著
週刊ダイヤモンド編集部 編集
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