井狩 春男 氏 書籍『本屋通いのビタミン剤』(筑摩書房 刊)より
このページは、書籍『本屋通いのビタミン剤』(井狩 春男 著、筑摩書房 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・著者名は知っていても、出版社名を知っている人は少ない。よほど本好きでもすぐに頭に浮かぶ出版社名は、せいぜい多くて三〇社ぐらいではないだろうか。
・江戸時代の本屋さんは畳だった(中略)
お客はどうやって本を選ぶか? 今と違って勝手に本に触れない。店の壁に書名を書いた紙がいくつも貼られている。お客はそれを見て、店の人に本を出してきてもらうのだ。座敷であるから店の人は座ったまま対応し、本をススメていたりもしていたようだ。
・棚の黄金配列(中略)
基本的には、前列に動きのよいものを少し低く並べる。その後は、ポイントとなる本が一ヶ所になとまらないように気を使い、その回りに関連商品を持ってきたりする。(中略)
ひざの高さの場合、二〇〇頁ぐらいの本だと八冊ぐらいがちょうと選びやすいであろう。四六判の本を立てて、その高さまで積む本屋さんがあるが、適当だと思う。
・古本屋さんに本を売りに行った経験がおありだろうか? 店の人は、かならず奥付で初版であるかどうか確かめ、そうでもないと安い値段で引き取られはしなかっただろうか。(中略)
重版・再販はコピーのようなものなのだ。スナワチ、初版が売り切れてしまい、買いそこねた読者のために複写下本、といったニュアンスなのだ。
・スリップ(中略)
“舌”である。本の各部の名称は、人の体をなぞられているのがある。すなわち、あたま・背・耳・のど・小口なのである。そして、舌なのだ。これを最初に考案(発明)したのは、日本橋丸善の店員さんで、大正時代であるが、その当時は、“舌”と呼んでいた。
・新刊ではないものは急に売れ出すのは理由がある。(中略)先日の『朝日新聞』に小泉今日子の写真が出て、その下に、私の愛読書はエンデの『モモ』です、と書かれた記事が出た
・ナン冊読めるかではなくて。オモシロイ本にどれだけ巡り合えるかが大切だ
内藤陳 氏談
・ニッパチは本が売れない。
・原本はどう保管されているのか(中略)
岩波書店は、最近できた建物の一室に、初版本(雑誌も含めて)全点各一、発行年月日順に並べてある。部屋全体が金庫のようなもので、扉を閉めてしまえば、火災や地震から出版物を守れるようになっている、という。早川書房の場合は、初期の出版物は各一部だそうだが、いまでは各一〇部を保管している。(中略)
講談社(中略)に電話を入れてみた。「ハイ、既刊全点各一〇、雑誌もです。相模原に倉庫があって発行順に置いてあります。温度や湿度を一定に保って・・・・・・。」(中略)ナン万坪です。まるで学校みたいな所
・消費税導入後は、どの書店も文芸書がサッパリ売れないというのだ。
・出版社に戻ってきた読者カードを拝見させて頂く機会にめぐまれる。カードには、たいがい「本書の購入動機」というのがあるのだが、新聞社のアンケート結果の通り「店頭で見て」が一番多い。すなわり衝動買いである。(中略)衝動買いは若い人に多く、書評・広告を見ての目的買いは中年以上の人に。
・結婚のことをブライダルというが、これは「賭け」という意味がある。(中略)結婚は賭けなのだ。
・雪深い地方で売れない本
雪の結晶の本を出した出版元があった。(中略)雪の多い地方で暮らす人達。雪と戦いながら生きる人達にとって、雪に関する本は憎悪の対象でしかない。おそらく、そういう本は見るのもイヤであろう。(中略)
では、何処で売れるか? 雪にあこがれを持ち、雪が降り始まろうとすぐにスキーに行きたい、と発想してします都会に住む人達に売れる。
では、雪のほとんど降らない地方、例えば沖縄ではどうか? ここでは売れない。
・誰でも読めて、一発で書名が頭に入る。これが最高である。
・本が大量に売れる集会や学会の大会(中略)
集会や、学会の大会、勉強会や合宿ほか、チャンスは多い。
・W市民生協というカタログ販売をしている所がある。本を含めて会員にすすめたい商品を選んで、オールカラーのカタログを配布し、注文を取るのである。このカタログに時々、すぐれた自費出版物が載ることがある。(中略)注文(中略)五〇〇部くらいはまとまるそうである。
●書籍『本屋通いのビタミン剤』より
井狩 春男 著
筑摩書房 (1990年2月初版)
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