書籍『出版営業入門 (新入社員のためのテキスト 2)』(日本書籍出版協会 著、日本書籍出版協会 刊)より
このページは、書籍『出版営業入門 (新入社員のためのテキスト 2)』(日本書籍出版協会 著、日本書籍出版協会 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・販売金額の規模(中略)
出版業界はこの鹿島建設1社分程度の市場を、4,100社とも言われる出版社で分かち合いながら、共存している零細な産業なのです。しかし、その小さな産業である出版は言論、報道面で社会に大きな影響力を持ち、一国の文化を支えている立場にあります。このため国は歴史的に税制や制度面において、他産業とは違った保護政策を敷いてきたのです。
・公共図書館の貸し出し点数推移
年度 公共図書館数(館) 個人貸し出し点数
1997 2,450 4億 3,287万 4千点
1998 2,524 4億 5,337万 3千点
1999 2,585 4億 9,456万 点
2000 2,639 5億 2,357万 1千点
2001 2,681 5億 3,270万 3千点
2002 2,711 5億 4,628万 7千点
2003 2,759 5億 7,106万 4千点
2004 2,825 6億 0,968万 7千点
2005 2,953 6億 1,695万 7千点
2006 3,082 6億 1,826万 4千点
2007 3,111 6億 5,486万 3千点
2008 3,126 6億 5,656万 3千点
2009 3,164 6億 9,168万 4千点
※日本図書館協会調べ
・部分再販:出版社が「新刊発売時」から小売価格を拘束しない販売方法。再販契約を、取次会社と締結している出版社であっても、その書目は非再販として扱われます。
・時限再販:出版社が再販出版物を「新刊発売後」に非再販に切り替える販売方法。新刊時(定価=再販扱い)に、一定の年月経過後に価格拘束を解くと表示する時限再販と、新刊発売後の経過を見て非再販に切り替える方法があります。また、出版社が行う「謝恩価格本フェア」のように開催期間及び販売箇所を限定し、その期間のみを非再販扱いにする方法も時限再販の範疇と解釈されます。(「再販契約の手引き」(第4版)出版流通改善協議会 編)
・およそ84万点が流通していると言われている書籍
・現在日本で流通している書籍の数は約84万点(書協データベース掲載点数)と言われています。これらの書籍をわかりやすく分類し、円滑に流通させるために、発行される出版物には一定の規則に基づいたコードが付記されています。(中略)国際規格の「ISBN」
・本の流通過程(中略)
取次会社としての仕入希望部数を出版社側に提示し、出版社への希望部数と調整した上で最終仕入部数を決定します。普通は4日後、お互いが合意した部数を出版社は製本会社経由で、取次会社に搬入します。
・取次会社の機能(中略)
そのメリットの主なものを挙げてみます。
①小売店の豊富な品揃えを実現できる。
②中小・零細の小売店の存立が、ある程度可能になる。
③第三者の小売業への新規参入を容易にする。
④出版社にとって相対的に安価な費用で全国の書店に配送できる。
特に出版業界は中小・零細規模の出版社や書店が多数存在しており、取次会社は多品種少量生産の商品特性を持つ出版物を、店舗別に小分けして全国エリアに多頻度少量配送できる、流通の要の役割を担っています。
・取次会社の仕事を機能別に整理してみましょう。
a.仕入・集品機能(中略)
b.配本調整機能(中略)
c.販売の企画立案機能(中略)
d.輸送機能(中略)
e.商品管理機能(中略)
f.金融機能(中略)
・新刊委託取引(中略)
新刊委託取引は、取引全体量の送品ベースで25%程度、返品を差し引いた実売ベースでは10%強になると推定されます。新刊委託で書店に配本された分は見本で、その後の追加注文につなげる役割を担っていると考えるのが妥当です。
・注文品の取引
注文には読者からの注文と、つまり客注と書店の見込み注文(見計らい注文)とがあります。注文品は本来買切り(返品のない取引)ですので、出版社が取次会社に注文品を出荷すれば、その月に締めて、翌月の清算時には取次会社から代金が入ってきます。出版社にとっては資金繰り上、とても重要な取引です。
ただし実際には、新刊委託品と注文品の関係は微妙です。
・注文品の取引(中略)
注文には読者からの注文、つまり客注と書店の見込み注文(見計らい注文)とがあります。注文品は本来買切り(返品のない取引)ですので、出版社が取次会社から代金が入ってきます。出版社にとっては資金繰り上、とても重要な取引です。
・注文品の取引(中略)
注文品の取引量は、実売ベースで全体の60%程度と推定されます。注文品は原則買切りなのですが、実際には25%くらいは返品されているようです。
注文品の流通コストは高くつきます。新刊委託のように一定のまとまりで流通している商品に比べて、注文品は1点1点個別的に記録し、1冊ずつに対応した流通システムが必要になるからです。
・スリップ(短冊) (中略)
書店店頭で基本スリップだけしか入っていない本は、新刊書かそれが売れて書店が補充した本です。したがって、2枚のスリップが入っている本は、常備委託か長期委託と考えてよいでしょう。
・原価率の考え方は出版社によって違います。初版部数すべてを完売することを前提にはじき出す出版社、一定の売上率を前提にして原価率を設定する出版社などまちまちです。
・他社本の実績を調べるのに昔からよく使われる手法は、書店に出向き、ベテランの書店人に意見を求めたり、その書店での販売状況を聞いたりするやり方です。また、取次会社の仕入れ係りに尋ねてアドバイスをもらうこともあります。
・配本の方法には大きく分けて2通りあります。
a.取次会社主導型配本(中略)
①書店の売上規模
②分野別構成比
③返品率 他
蓄積されている書店のデータは取次会社によって異なり、その内容が出版社に明らかにされることはありません。(中略)
b.出版社主導型配本
出版社が自ら販売データを蓄積して、それに基づいて配本する方法です。
・発売後売行き調査(中略)
①書店訪問調査
②電話聞き取り調査
③FAX調査
④書店POSデータ調査
⑤取次会社販売調査
⑥売上スリップ蓄積データ調査
・書店訪問に際していくつかの留意点を挙げておきましょう。
a.書店訪問目的の明確化(中略)
b.入念な事前準備(中略)
①自社出版物の内容把握(中略)
②データ整備(中略)
③訪問点分析(中略)
c.望ましい書店販売促進
・悪い営業員の例は、自社の出版物しか話題にせず「何冊入荷したか」「何冊売れたか」「在庫が少なければ注文をください」というパターンです。
では、良い営業員とはどんな人でしょうか。それはまず、自社の出版物に関する客観的な情報を提供できる人です。売れているのかいないのか、売れているならどのような書店で、どのような売り方で、どのような人が購入しているのか、そしてなぜ売れているのか、その背景を説明できる人です。
次に、他社の本でもどのような本が、どのような書店で売れているのかなど、他出版社や書店を含めて幅広い情報を持っている人です。さらに売れない時代の中でどのような売り方、どのようなテーマ、切り口で読者にアプローチをしていけばいいのかなど、苦しい時に一緒に問題の解決方法を考えてくれる人が好感を持たれます。
結局、相手の身になって考え、読者を共通のテーマにして販売協力のできる人が良い営業員の必要条件と言えるでしょう。
・マーケティングの4つの切り口を提示しておきます。
a.製品戦略
①出版物の企画・アイデアの創造を社内でどう産み出していくか。
②出版物の「需要分析」「コスト分析」「競争分析」
③他社出版物との差別化
④出版物のライフ・サイクルの測定
b.価格戦略
①価格設定方法の検討
・コスト・プラス法
・読者心理を考慮した設定法
・競争戦略上での設定法
②再販制度の弾力運用
c.流通経路(チャネル)戦略
①流通経路の選択(書店ルート。直販ルートなど)
②流通経路政策
③流通経路管理
④取次会社、書店との販売連携
⑤物流管理
d.コミュニケーション戦略
①書店・取次会社への人的販売促進
②広告・パブリシティ・セールスプロモーションの検討
●書籍『出版営業入門 (新入社員のためのテキスト 2)』より
日本書籍出版協会 著
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