研究会『出版界の明治二十年問題』(講師:橋口 侯之介 氏、主催:日本出版学会 出版技術・デジタル研究部会)より
このウェブサイトにおけるページは、研究会『和本の出版技術~「本屋」の仕事』(講師:橋口 侯之介 氏、主催:日本出版学会 出版技術・デジタル研究部会)に参加して、良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。
・江戸時代は本屋同士が一緒になって一冊の本をつくった。今でいうと講談社と小学館が一緒になってつくったということ。今では中々考えられないこと。しかし、当時はそれがわりと普通だった。
・版木は本が売れなくなると、本屋同士で売り買いした。
・江戸時代の板元たちは、この板木を財産と考え、同業者仲間を結成して、「海賊版」(=重板・類板)対策に力をいれてきた。
・江戸時代でも他の業種では基本的に、生産者、仲卸、小売と分かれるのが普通だが、書籍業は分化されなかった。このことも後で明治20年問題にかかわる。
・明治に入って何が起きたのか(中略)
★装訂上の変化
和装から洋装へ、木版印刷から活版印刷へ、和紙から洋紙へと出版物の生産方法や形態に大きな変化があらわれた。中が活版で外は和装本という形はまだしばらく続くが、木版で和装という本は激減するといってもよい。それが顕著に出たのが明治20年である。
・明治に入って何が起きたのか(中略)
★本屋仲間制度の消滅(中略)
明治8年9月、出版条例が制定、発布された。これにより直接内務省が閲覧をするので仲間行司の必要がなくなり、旧来の書林仲間の制度は消滅する。
・千年の和本の歴史に対して近代以降の書籍はたかだか120年の歴史しかない。それがもう終わり始めようとしている。それも変化のスピードが速い。たんなるデバイスの変化ではなく、制度的な底流から変わってうこうとしていると見るべきだろう。
●研究会『出版界の明治二十年問題』
(講師:橋口 侯之介 氏、主催:日本出版学会 出版技術・デジタル研究部会)より
講師:橋口 侯之介 氏
(誠心堂書店店主,東京古典会会員,成蹊大学大学院文学研究科非常勤講師)
日時:2015年6月1日(月) 18:30~
著作/『和本入門』(平凡社ライブラリー,2011年),
『江戸の本屋と本づくり』(平凡社ライブラリー,2011年),
『和本への招待』(角川選書,2011年)
日本の出版物は、明治期に「和装本」から「洋装本」へと切り替わった。板木を人力で刷摺して作る和本の数よりも、活版印刷を機械で行って作る洋本の数が上回ったのが、明治20年と言われている(国立国会図書館調査)。本を作る技法の変容だけでなく、出版界全体に激変が起こっていた。出版関連組織の改変や取締規則の制定などによって流通システムにもその変化は及び、江戸時代から続く本屋たちは挫折する。これはメンタリティーが関わる問題であったが、この状況は、出版物のデジタル化が進行する現代に重なる。
前回に続いて、誠心堂書店店主として長年、古典籍の売買を手がけてきた橋口侯之介さんに、この「明治二十年問題」に焦点を当ててお話しいただきます。
江戸時代の重要アイテムである板木や、当時の出版の仕組みを示す相合板の出版物、更に明治期に特徴的なボール表紙本や仮綴じ本など数々の実物も提示のうえ、ご解説いただきます。