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松岡 佑子 氏 書籍『ハリー・ポッターと私に舞い降りた奇跡』(日本放送出版協会 刊)より

このウェブサイトにおけるページは、書籍『ハリー・ポッターと私に舞い降りた奇跡』(松岡 佑子 著、日本放送出版協会 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。


・代理人には、その後改めて一通の手紙を送った。くどくどと書き連ねた覚えはない。「こんなに夢中になった本はない。感動を文字にして、多くの日本の読書にハリー・ポッターのすばらさしを伝えたい。小さな出版社だからこそ、この物語に力を注ぐことができる」と、できるだけ無駄のない、シンプルな文章でしたためた。


・J・K・ローリングとの対面(中略)

写真で見たときは内気な口数の少ない人かと思ったが、本人はいたって気さくでよく話し、才気煥発でユーモアたっぷりだ。


・J・K・ローリング(中略)シングルマザーで、幼い子どもを抱え、生活保護を受けながら、コーヒー店の片隅でたった一杯のコーヒーを注文し、子どもが寝ている間に書いた処女作が、『ハリー・ポッターと賢者の石』だというのは、いまや伝説になっているが、本当のことだ。


・飯田橋にある芳進堂ラムラ店店長・武藤浩平氏だった。本屋発のベストセラーを生む名物店長で、書籍販売のプロを探しているという私たちの話を聞いて、「まかせておきなさい」と豊田哲氏を紹介してくれた。

マガジンハウスで長年営業をやってこられた


・出版業界五紙を集めて記者会見をした。記者たちは、無名の出版社が、聞いたこともない本の出版をすることに面喰い、社長兼翻訳者の私の技量をはかりかねていた。


・J・K・ローリング(中略)インタビューが始まった。(中略)

------日本語版を出すにあたって、小さな出版社を選んだのはなぜですか。

もちろん大きな出版社を知らないわけではありません。でも、私もイギリスで小さな出版社から本を出して。それがこんなに成功したという経験が頭にあったし、代理人からこんなに情熱的に、私の本を出版したがっているところはない、と聞いて、情熱に勝るものはない、とは判断したのです。


・売れ足の速さを見て、発売三日後にはさらなる増刷を決めた。一か月の販売部数は二十五万部に達し、ベストセラーのリストに載った。


・『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』の初版は八十万部。


・第四巻は、(中略)初版は二百三十万部。この巻は、書店さんと買い切り契約を結ぶことになった。ハリー・ポッターの人気が最高潮に達していたこの時期、書店さんからの注文は膨大な数に上ったが、一方、地方の小さな書店から、「取次販売会社は主に首都圏の大手書店に配本するので、注文しても本が手に入手できない」という声が挙がっていた


・ローリングと直接会えた時代は、ローリングも代理人も、ハリーが世界的に認められたことを喜び、誇りとして、出版社に対しても私個人に対しても、人間的な体温が感じられる対応をしてくれた。だが、本が売れに売れ、ローリングの名声が高まるにつれ、ローリングは声を行くこともままならない遠い人となり、代理人との交渉はだんだん複雑で難しいものになっていった。


・全世界の「ハリー・ポッター」の販売部数は、四億五千万部を突破した(二〇〇九年六月現在)。この大ベストセラーの翻訳に、時を同じくして十年間取り組んできた翻訳者が七十人近くいるという、極めて希有な減少になぜ誰も注目しないのだろう。


●書籍『ハリー・ポッターと私に舞い降りた奇跡』より
松岡 佑子 著
日本放送出版協会 (2009年12月初版)
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