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佐々木 紀彦 氏 書籍『5年後、メディアは稼げるか』(東洋経済新報社 刊)より

このウェブサイトにおけるページは、書籍『5年後、メディアは稼げるか』(佐々木 紀彦 著、東洋経済新報社 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。


・一刻も早くウェブ時代の新しい「稼ぎ方」を見いださないと、メディア業界が“焼け野原”になる


・「ある読者が毎日どんなニュースを読んでいるか」という情報は、その読者の「人となり」を知る最高のデータです。「本棚を見れば、その人がわかる」といわれますが「読んでいるニュースを見れば、その人がわかる」ともいえます。


・ムーギ・キムさん(中略)政治から、ディズニー、プロレス、恋愛までを網羅する芸域の広さで読者の心をつかみ、半年間にたったひとりで1000万ページビューを稼ぎ出しました。これは全筆者の中でトップとなる数字です。


・ページビューが10倍に伸びた理由(中略)

ウェブメディアの「稼ぎ方」を考えるためにも、両メディアの違いを知っておいて損はありません。


・ページビューが10倍に伸びた理由(中略)

大まかに3つに分けて、成功の要因を説明します。それは、「紙の編集部と、組織、コンテンツ、ブランドを切り離したこと」「30代をターゲットにしたこと」「ユーザー第一主義を徹底したこと」の3つです。


・ページビューが10倍に伸びた理由(中略)

紙とは独立したまったく新しいメディアを創るというやり方です。日本の紙媒体をもつメディア企業は前者を選ぶケースが多いのですが、それこそが失敗の最大の理由になりません。


・ページビューが10倍に伸びた理由(中略)

社外筆者と組んだコラムを拡充することにしたのです。筆者の選択にあたって気をつけたのは、手あかのついた有名人ではなく、できるだけ若く新鮮な筆者を発掘することです。


・経済メディアの分類

       クローズ

 速報            分析

       オープン


・そもそも、われわれは、通信社や新聞社ではありませんので、超速報記事で競っても勝てません。それに、コモディティー化の進む速報記事に資源を投入しても、それに見合うリターンは望めません。(中略)われわれが力を入れたのは、「クオリティーの高い第2報」です。すなわち、スピードでは若干遅れる分、新聞にはない分析や視点やストーリーを加えた「第2報」をウリにすることにしたのです。


・ウェブと相性がいいのは、一般週刊誌です。とくに『週刊文春』と『アエラ』(週刊誌ではありませんが)『ブルータス』のタイトルセンスは傑出しています。


・紙の本は、確実に残ります。本は、紙メディアの中では、ネットの影響をいちばん受けにくいメディアです。


・紙向き ←-----------------------→ ウェブ向き

 単行本 新書 月刊誌 ファッション誌 | コミック誌 一般誌 ビジネス誌 新聞


・米国の書店は数は少ない。米国の国土面積は日本の約25倍ですが、書店数は日本の3分の2にすぎません。米国の書店事情を日本にあてはめてみると、大阪府の面積に2店しか書店がない計算になります。つまり米国では、仕事帰りにふらりと書店に寄るというライフスタイルは、よっぽどの大都市でないかぎり無理なのです。


・新聞は「若者がかいて(注:現場の記者は若手が中心)、高齢者が読む」という媒体になっている


・米メディア業界では、広告に関して「1:10:100」の法則があります。これは、紙で100万円だった広告が、オンラインでは10万円になり、モバイルでは1万円になってしまうことを皮肉ったものです。


・1857年に産声を上げたこの老舗出版社が今、デジタル時代の“勝ち組”としてスポットライトを浴びています。アトランティックの売上高は過去4年で倍増しの4000万ドル(約40億円)に到達、3年連続で黒字を記録しており、今日では収入の65%をデジタル媒体が生み出しています。(中略)


しかも興味深いのは、デジタルを最優先しながら、紙の部数も伸ばしているところです。


・アトランティック(中略)

編集とビジネスの壁、紙とデジタルの壁を打ち破る(中略)彼は、編集の独立性を維持しながらも、両部門の人間が所属するチームをつくり、定期的にミーティングを開催。編集とビジネスサイドの知見をぶつけ合わせることで、新しいアイディアを生み出そうとしたのです。


・原稿料の算定方法は、「ユニークビジター1人につき数セント」が基本です。もしそのビジターが、同じ月に同一筆者のほかの記事も読んでくれた場合には、その20倍のボーナスがつきます。(中略)

リピーターの多さを評価に反映しやすくしているのです。


・なぜ日本のメディア業界はかくも動きが遅いのでしょうか。その理由は、「まだ食えているから」に尽きます。だが、これからはそうはいきません。販売力の強い新聞はともかく、雑誌には生存をかけた正念場が訪れます。


・世界新聞ランキング

   名前   国     部数(万)

1 読売新聞  日本  996
2 朝日新聞  日本  775
3 ザ・タイムズ・オブ・インディア  インド  409
4 毎日新聞  日本  343
5 日本経済新聞社  日本  302
6 ザ・サン  英国  277
7 ダイニク・ジャグラン  インド  266
(中略)

日本勢が上位を独占(中略)


この巨大部数を支えているのは、強力な販売店のネットワークです。世界広しといえども、全国津々浦々に新聞を宅配できるのは日本ぐらいです。(中略)


この宅配制度を生み出した人は、本当に天才だと思います。(中略)ちなみに、この宅配制度にはじめてトライしたのは、1872年創刊の東京日々新聞です。


・今、雑誌が危機的状況にあるのは、販売収入と広告収入のいずれもがダメージを受けているからです。(中略)過去5年で、ほぼ半分の市場がふっとんでしまったのです。


・今、世界のメディア企業を見渡すと、マネタイズのモデルは次の8つでほぼ網羅されます。

①広告(中略)
②有料課金(中略)
③イベント(中略)
④ゲーム(中略)
⑤物販(中略)
⑥データ販売(中略)
⑦教育(中略)
⑧マーケティング支援


・儲からないなら、儲けるための仕組みを自ら創り出すしかありません。そのための打開策は「データ思考の徹底」と「広告を面白くする」です。(中略)「データ思考の徹底」(中略)そのための王道は、読者を会員登録へと誘い、基本的な属性情報を登録してもらうことです。


ここで大事なのは、読者に“気持ちよく”会員になってもらうことです。最悪なのは、記事の途中で「次のページを読むには、会員登録が必要です」というメッセージを出し、細かい個人情報を延々と入力させるパターンです。とくにスマホでこれをやらされると、たまったものではありません。


・ちなみに私は、東洋経済の記者として、広告面での圧力で執筆をストップさせられたことは一度もありません。同僚の風間直樹記者が『週刊東洋経済』(2013年3月9日号)に書いた「ユニクロ 疲弊する職場」は大きな反響を呼びましたが、こうした記事が書けるのも、東洋経済は編集権がしっかり独立しているからです。


・有料化を成功させるには主に3つの条件があります。

ひとつ目は、媒体が、経済系かエリート(高所得者)系かデータ系のいずれかであることです。(中略)

2つ目の条件は、紙で築き上げたブランド力です。やはり、紙でそのブランドにおカネを払ったことがあるかは大きなポイントとなります。(中略)

3つ目の条件は、無料サイトの圧倒的な実績です。まずもって幅広い読者層を獲得しないことには、課金のベースとなるパイ自体が存在しないことになります。その意味で最悪なのは、立ち上げと同時に課金をしてしまうサイトです。


・ヒントはネット企業にあり(中略)

ニコニコ動画(中略)プレミアム会員は数はついに200万人を突破しました。この会員数に、月額料金の525円をかけると10・5億円。つまり、年間換算すると、126億円の会員収入が望めるわけです。ネット上のコンテンツでこれだけ稼いでいる例は、世界でも稀です。


・ネット企業の成功例から、ウェブメディアは貪欲に学ばないといけません。ネットメディアができることは、思いつきレベルでもたくさんあります。「広告表示もページ分割もない、特別なレイアウトを提供する」「無料のイベントに会員を優先招待する、もしくは、有料イベントを割引する」「好きな筆者に質問を送ることができる」「自分の興味に合った記事が読めるパーソナライズ機能を追加する」「世界中の企業を網羅した、企業検索サービスを使える」などなど


・次世代ジャーナリストの条件(中略)

主に7つを挙げることができます。(中略)

条件① 媒体を使い分ける力(中略)

主な選択肢としては次のようなものがあります。

①4ページのロングインタビューとして雑誌記事にする
②インタビューを要約して、2ページの雑誌記事にする
③60分のインタビューすべてをテープに起こして、全文をウェブに出す
④60分のインタビューを動画で生放送する
⑤動画を5分程度に編集して流す(中略)


これからのメディア人が優先すべきは、自分の属する媒体の利益最大化ではありません。最終目標に置くべきは、「読者満足度の最大化」であり、「収益機会の最大化」です、自分は紙の編集部なので、意地でも紙に出しウェブは拒否する------こうした姿勢では、新時代は生き抜けません。(中略)


条件② テクノロジーに関する造詣(中略)テクノロジーに疎いのは致命的な弱点になります。(中略)

条件③ ビジネスに関する造詣(中略)

ネット企業を見ても、まずはユーザーの増加に全力投球し、マネタイズを二の次にするのが王道です。焦って金儲けに走るネットサービスは、ユーザーにそっぽを向かれてしまいます。

条件④ 万能性+最3つの得意分野

条件⑤ 地域、国を超える力(中略)

条件⑥ 孤独に耐える力(中略)逆張りする力、自分の信念を貫く力はどこから生まれるのでしょうか。それは、孤独に耐える力です。

条件⑦ 教養(中略)

元大阪大学総長で哲学者の鷲田清一さんは「教養とは、価値の遠近法だ」と指摘しています。その意味するところは、あらゆる事象について、「①絶対に必要なもの」「②あってもいいけどなくてもいいもの」「③なくてもいいもの」「④絶対に不要なもの」の4つを仕分ける能力こそが教養だということです。


・出版社の社員である私がこういうと叱られそうですが、はっきりいって新刊の9割は駄本です。そうした本を読むくらいなら、まったく本を読まないほうがまだマシです。(中略)古典を読む事は、とりわけウェブメディアに編集者にとって大切です。というのも、ウェブメディアの仕事はとにかく時間に追われるため、刹那的になってしまうからです。

・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の神経精神医療研究所のピーター・ホワイトブロー所長は「コンピューターは電子のコカインである」と指摘しています。メール、電話、フェイスブックなどから次々もたらされる新情報が、気になってしょうがなくなるのです。


・「日経オンライン」の柳瀬博一さんも、オンラインプロデューサーの横綱的存在です。『日経ビジネス』の記者を経て、書籍編集者として、小倉昌男 著『経営学』、矢沢永吉著『アー・ユーハッピー?』など話題作を連発、2008年からは「日経ビジネスオンライン」のプロデューサーとして、多数の広告企画や編集記事を世に送り出しています。


・ウェブの場合は、紙幅にかぎりがないので発想が「足し算」になります。できるだけコンテンツの量を多くするために、取材した内容を多く盛り込もうとしてしまうのです。したがって、大事なポイントだけを要約するスキルがなかなか磨かれません。

対照的に、紙の発送は「引き算」です。一定のスペースにどう重要な論点、コメントを織り込めるかが腕の見せ所です。


・ウェブの世界でもっとも有害なのは、古い世界の固定概念です。「紙のほうがウェブよりえらい」「編集のほうが広告より偉い」「文章に主幹は入れてはいけない」「年上に意見してはいけない」「ジャーナリストはおカネや広告のことが知らなくてよい」「物事を進めるときはみなのコンセンサスをとる」などの思い込みは百害あって一利無しです。(中略)失敗をおそれずまずはやってみるマインドこそがウェブに合います。


・福沢(※諭吉)は、「日本一の時事新報に広告するものは、日本一の商売上手である」とのコピーを掲げ、“広告ビジネス”の布教に励みました。


・日本の新聞としてはじめて、新聞の第1面と最終ページの全面広告を行ったのも時事新報です。福沢(※諭吉)は、広告を産業として確立させた立役者のひとりなのです。


●書籍『5年後、メディアは稼げるか』より
佐々木 紀彦 著
東洋経済新報社 (2013年7月初版)
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