井上 重治 氏 書籍『香りの多様な働き・作用で美と健康をサポートする 生きる力~自然から学ぶ健康法』(フレグランスジャーナル社 刊)より
このウェブサイトにおけるページは、書籍『香りの多様な働き・作用で美と健康をサポートする 生きる力~自然から学ぶ健康法』(井上 重治 著、フレグランスジャーナル社 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。
・とかく目に見えるもしか信じない人が多い世の中では、目に見えない微生物は得体の知れない不気味なもの、ヒトに病気を起こす悪玉としか理解されないようです。そして悪玉を徹底的に駆除すればヒトは健康でいられると考えている人もいます。
・秋に落ちた木の葉がそのまま堆積すれば数年で人の背丈よりも高く積もってしまいます。そうならないのは微生物がせっせと代謝して土に還してくれているからです。微生物は物質循環という大きな働きをしてくれているのです。
・ヒトにはどんな常在菌がいるのか?
ヒトの体内外には、300種類、100兆個の常在菌は住んでいます。常在菌はヒトの体の表面にも内部にも一定のフローラを作って生存しています。
・最近、「発香商品」といわれる食べると体の汗腺を通して体内から甘い香りを発するキャンデーや飴が発売されています。実は大昔、唐の時代の貴婦人は丁香、麝香などの粉末を蜂蜜で練った丸薬を服用して全身からほのかな香りを漂わせていたといいます。
・ヒトの腸の大きさは400cm2で、皮膚表面席の200倍、テニスコート2面分の広さになるというから驚きます。
・ヒトの体は60兆個の細胞からできているので、それより多い菌が住んでいることになります。菌1個の長さを2um(※マイクロメートル・ミクロン)と仮定して直線上に並べると、なんと地球を5周するという信じられない長さになります。
・昔からフェノール系精油は腸内フローラの改善と腸管免疫の促進に有効だといわれてきました。
・特に、カルバクロール、チモール、オノゲノール、ゲラニオールなど抗菌活性の強い成分を含んだハーブが、食中毒菌の腸炎ビブリオやサルモネラ菌の発育を阻害するので、予防に用いられます。また、腸内の異常発酵には、クローブ、タイム、セイボリー、シナモン精油の内服が有用といわれます。(中略)ただし、日本では精油の内服は推奨されていません。
・常在菌とうまく付き合う方法(中略)
風呂に入っても体じゅうごしごしこすらないことです。無駄なばかりか有害です。垢は毎日1層ずつ自然にはがれるので、湯船につかるだけで充分きれいになります。さっと風呂に入るだけでも皮膚の90%の常在菌がはがれます。
・常在菌もときには悪玉菌に変身します(中略)栄養不足、過労、高齢、抗生剤の乱用、免疫抑制剤の投与やホルモン療法、放射線などで宿主の免疫が著しく低下すると、おとなしかった常在菌がきばをむいた病原菌に変わって異常繁殖して、下痢などをおこします。
・精油による口腔歯科感染の予防(中略)
歯周病への対応としては、ティートリー、スイートタイム(ゲラニオール、リナロール、ツヤノール主体)、ミルラ、レモン、フェンネル、ペパーミント、セージ、ベルガモットによるうがいが薦められています。うがいの濃度は個人の味覚の耐受度によって異なる
・口臭用の精油としては、ベルガモット、カルモダン、フェンネル、ペパーミント、スイートタイムが薦められています。
・精油は感染部位の洗浄、瘢痕の抑制、新しい皮膚の再生、とりわけ溜まった皮脂の除去に有用です。
・ペパーミント錠剤を内服すれば肝の解毒作用が強まり、ニキビの改善に好結果をもたらすといわれていますが、日本では施工されません。その代わり、解毒作用があるといわれるアンゼリカ、フェンネル、ジュニパー、ローズなどで患部の洗浄を行うことで、臓器の洗浄効果が期待されています。(中略)
皮膚の炎症がすすんだニキビに精油を使用することは格別な注意は必要です。
・頭部ふけ症の患者126人に対して5%ティートリーシャンプーで1日1回、4週間洗浄すると、症状スコアの改善率が41%(プラセボ11%)で、痒みや脂こさなどの自覚症状も改善したと報告されました。
・フケ症にはスパイクナード、またはローズマリー、ローズゼラニウム、シダーウッドアトラス、パチュリなどが有効といわれます。
・60兆個あるヒトの細胞は通常の分裂で毎日10⑫個の新しい細胞が誕生しています。このうち正常でない細胞は確率的に3,000個で、増殖の激しい皮膚や消化管では1回6,000~7,000個も異常細胞ができます。
・1個のがん細胞が分裂を重ねて目に見えるがんになるまでには普通20年はかかるといわれています。
・腸の活動がにぶると、腸内腐敗菌の活動で毒素が産生され、それによって腸管粘膜が傷つきます。それを修復するために細胞増殖しますが、行過ぎると大腸がんになります。
・幸せをもたらすといわれるセロトニンの90%は腸内で作られるといわれています。このため消化管は小さな脳(腹脳)といわれて、頭脳と絶えず対話しています。ストレスなどはすぐに消化活動の低下となって現れます。
・うつ患者にレモン、オレンジ、ベルガモットのかんきつ系ブレンドの芳香をかがせると、低下したNK細胞が活性化し、抗うつ薬を減量できることが示されました。
・日本人は世界でもっとも皮膚の薄い人種で、しかも風呂好きです。毎日石鹸で肌をごしごしすると、表面の皮膚がなくなって皮膚が傷つきやすくなります。ここにダニやカビなどのアレルゲンが侵入するとアトピー性皮膚炎が発症します。
・炎症は、生体内で血流やリンパの流れがある領域で必ずおこる反応です。炎症は細胞が障害されたとき、損傷部位を修復して再生し、壊死物を片付ける生体の自己防衛反応なので、ヒトが健康でいられるためには極めて重要です。炎症が起きたらすぐ抗炎症で炎症を鎮める発想は短絡的です。
・ラベンダーの足浴で、乱れた自律神経バランスが顕著に改善された
・ニンニクやショウガが食品であると同時に優れた生薬でもあります。「食べ物で治せない病気は医師にも治せない」というヒポテラクスの言葉と共通しています。
・人間の体はおよそ60兆個の細胞からできています。しかも皮膚や筋肉、臓器、脳など機能の全く異なる細胞からなっていて、それらが全てが巧みに連携してまるで1個の精密機械のように寸分の狂いもなく一人の人として活動しています。
・生物自らが生き抜いていく力を持たなければ自然淘汰されるというのが自然界の基本ルールです。
・地球生態系がしっかり保全されていれば、農薬や人口肥料を使わなくても農作物がうまく収穫できることは実証されています。愛媛の福岡正信さん、弘前の木村秋則さんの本に接するとこのことがよく分かります。
・人間の浅知恵で、多量の肥料と農薬を注ぎこめば自然のバランスが崩れて、病原菌のカビや害虫がはこびり、その対策でさらに多くのが農薬がまかれます。得られた農産物も当然ストレスでいっぱいです。
・「健康」は私どもの人生の目標、目的ではありません。健康は目的達成の手段であって、健康の結果得られる長寿をどう生きるかが最も重要です。
・健康を主題にして、微生物と精油と体の仕組みがどのようにかかわっているかについて基本的な知識と知見をまとめたものです。
●書籍『香りの多様な働き・作用で美と健康をサポートする 生きる力~自然から学ぶ健康法』より
井上 重治 著
フレグランスジャーナル社 (2011年5月初版)
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