阪長 友仁 氏 書籍『高校球児に伝えたい! ラテンアメリカ式メジャー直結練習法』(東邦出版 刊)より
このウェブサイトにおけるページは、書籍『高校球児に伝えたい! ラテンアメリカ式メジャー直結練習法』(阪長 友仁 著、東邦出版 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。
・スリランカ代表の選手と接してみると、そういうネガティブな面が一切ない。むしろ、「今日も野球をやれてうれしい」「明日も野球をしたい」という気持ちが前面に出ているのです。
日本人の場合は、例えば「甲子園に出たいから野球をする」とか、「プロ野球選手になりたいから頑張る」とか、みんな“なにか”があるから野球をしているように感じます。
・ ドミニカでは「メジャーリーガーを育てるために、どういうことをやっていくか」と一気通貫で考えられているのです。
・国名 人口(2017年) 現役大リーガー(2017年)
ドミニカ共和国 1,077万人 151人
ベネズエラ 3,193万人 110人
キュラソー島 16万人 5人
日本 1億2,605万人 8人
・ドミニカや中南米諸国の理由を知れば知るほど、彼らが優秀な選手を数多く育てている理由は「先を見据えた指導」にあると感じます。日本のようにカテゴリーごとの2~3年間における短期的な結果や、目先の成長を最優先するのではなく、多くの選手が全盛期を迎える25~35歳という年代で最大限の力を発揮することを念頭に置く。そうして監督・コーチは指導にあたり、選手は将来大きく羽ばたくために練習や試合に取り組んでいく。
・日本の場合、ミスした選手は下を向けがちで、コーチに怒鳴られることも少なくありませんが、ドミニカは正反対。選手はつねに堂々としていて、コーチとの関係性がすごくフラットに感じました。
・大事なのは目の前の結果ではなく、7、8年後にメジャーリーガーになって大舞台で活躍することだから、思い切ってプレーして、エラーしても仕方がない。今の失敗を、未来の成功につなげていけばいい。
・「日本のように目の前の結果にこだわる野球と、ドミニカのように先を見据えながらミスを恐れずにチャレンジし続ける野球では、選手たちが25歳くらいになったとき、とんでもない差になって表れるのでは?」と率直に感じました。
・投手(中略)将来的にコントロールが良くなるか否かは、ストライクゾーンを「ひとつの的」と見立てて判断することができるそうです。
・MLBで野球の花形ポジションである二遊間のレギュラー争いに食い込めている外国人選手は、中南米しかいないのが現状です。
・日本のプロ野球選手はメジャーはおろかマイナーを含め、MLBに挑戦できていないのでしょうか。その理由は、育成方法によるところが大きいと思います。MLBの球場は、30球団のうち28球団が天然芝です。天然芝ではイレギュラーが多く、ゴロの勢いが殺されます。だからボールに対して早く捕球体勢に入らないと、アウトにすることが難しくなります。
一方、日本のプロ野球では多くの選手が人工芝です。
・「正面に入ってからしっかり捕る」という守り方を大学、社会人、プロでも続けていると、通算守備機会における「アウトの総数」を減らしてしまいます。
・つまりクラブを立てて捕るのではなく、下から包み込むように捕球するのが「柔らかい捕り方」の大原則です。
手や腕を柔らかく使うことで、たとえイレギュラーが起きても対応しやすくなります。また変な力みがないから、送球に向けてのボールの持ち替えもしやすいと思います。
・身体の右側に来た打球の捕り方
◎逆シングルで捕球(中略)
× 脚をクロスさせる(中略)
△ 正面に回り込む 正面に回り込んでから一塁に送球して間に合うこともあるが、レベルがカテゴリが上がれば走者の足も速くなるため、間に合わないケースが増えてくる。将来の活躍を考えれば、すべての打球に対して「できるだけ正面に回り込んで入れ」という指導は非常に危険だ
・緩いゴロへの対応(ベアハンドキャッチ)
◎ベアハンドで対応
バンドなどの緩いゴロに対してダッシュで間を詰め、グラブを出すのではなく素手で捕獲し、そのまま一塁へ送球。「そんなプレーは100年早い」と言われがちだが、こうしたプレイを幼い頃からやっておくことで後々対応力のある選手になれる
・速いノックより、緩いノックがいい理由(中略)
速いノックを受けていると、恐怖心が出て身体が硬くなってしまうからです。そうなると当然、柔らかい捕球をするのは難しくなります。
・捕って素早く投げるための方法(中略)
捕球から素早く投げるまでの動作を分解すると、「捕る」「持ち替える」「投げる」の3つに分かれます。その関連性について、ドジャースのコーチはこう言いました。
「基本練習で素早いプレイをさせるのではなく、無駄なく、力まずにプレーすることが大事だ。そうして練習と実戦を繰り返していくことで、あるとき自信がつかめて、投げるまでにこの3つの動作を短縮してできるようになる。自信をつかめるタイミングは選手によってさまざまで、いつ得られるかは彼ら自身にしかわからない。だから指導者は焦らず、何年かかっても待ち続けることが重要なんだ」
・ダブルプレー セカンドの守り方(中略)
中南米のセカンドは、バックハンドトスで投げます。最も確実で、二塁ベースに速くボールを届けられる方法だからです。日本でこれをすると「いい加減な投げ方をするな!」と怒られるかもしれませんが、中南米では基本のプレーです。
・発想力の養い方(中略)
どういうプレーを選択すれば、一塁に速くボールを届けてアウトにすることができるのか。瞬時に最適なプレーを判断するためには、普段から発想力を養っていくことが大切です。これは守備でだけではなく、打撃でも同じです。
・楽しんでうまくなるグラブ遊び(中略)
そのために重要なのは、繰り返しになりますが、柔らかいグラブさばきです。(中略)空いた時間におすすめなのが、サッカーのリフティングのようなことを、グラブトスで行う遊びです。ドミニカ人はこの遊びが大好きで、ウィンターリーグでは試合前のによく行っています。
・基本と応用の関係性(中略)
中南米の選手たちは、子どもの頃から大切に育んできた「彼らの基本」を応用して、MLBという大舞台でスーパープレーを披露しています。一方、「日本の基本」を大切にしてきた選手たちは、応用がきかず、残念ながら世界の舞台では通用していません。
野球にかかわらず、「基本があって応用があるのが世の常」だと考えれば、「応用のきかない基本は、そもそも基本ではない」とも言えます。
・ なぜ、中南米の選手達はパワフルで精度の高い打撃王できるのでしょうか。もちろん恵まれた身体能力はパワーを要因としてある一方、それ以上に大きなのは、子どもの頃から10年先を見据え、力強く、技術的に優れた打撃を習得して習得しようとしているからです。
・ 打つポイントを身体の中に置く、つまり懐深くまでボールを引きつけられれば、より長くボールを見ることができ、かつボールに対して力を最大限に伝えられるので、打率や出塁率、選球眼、打球速度、飛距離が高まってきます。筒香選手はビジョンを持って練習し、侍ジャパンでも不動の4番打者になりました。
・日本の選手たちはなぜ、年代が上がるにつれて国際大会で苦労するのでしょうか。その理由として考えられるのが、金属バットの弊害です。(中略)
対して日本で使われている金属バットは反発力が高く設定されており、身体の中ではなく、「身体の前(投手寄り)」で打ったとしてもボールが飛んでいきます。そのためインサイドアウトではなく、バットが外側から出るアウトサイドインのスイングでも対応することが可能です。
・ ドミニカの小学生たちがプレーする大リーガーで最も大事にされるのが、とにかく思いっきりバットを振ること。いわゆる「当てにいく」スイングではなく、力強く降ることを実戦の中で繰り返していきます。
・三振しても、また挑戦すればいい(中略)(三振)も試合の一部だ
・打撃で大事なのは身体の中で打つ感覚を身につけることです。一長一短にはできないので、何年もかけて徐々に身につけてください。
・ドジャースのアカデミーでコーチを25年以上務めて、指導者として大事な3つの点に気づいたそうです。
ひとつ目が、観察すること。(中略)指導者にはきちんと見られる能力が必要だと言います。
ふたつ目が、聞くこと。いかに子どもたちに自分自身の意見を表現させて、それに指導者が耳を傾ける傾けることができるか。
3つ目が、黙ること。「指導者が余計なことを言うな」ということです。
・今のきみのチャレンジが、僕は好きだ
・指導者が「黙る」ことの重要性を3つ目の要素として挙げましたが、これは子どもたちが「自分で考える力」をいかに伸ばすかにつながる話です。
・指導者が練習中から「こうしろ」と逐一指示を出していたら、選手はいざ試合のときに自分で考えられなくなってしまいます。だから指導者は、「黙る」ことが大事なのです。
・「指導力」の正体(中略)
実は、ドミニカのアカデミーの監督やコーチの中で、MLBでプレーした人はほとんどいません。マイナーリーグで終わり、メジャーに昇格できずにユニフォームを脱いだ人たちばかりです。(中略)
現在、MLBで最も指導力があるとされる監督のひとりが、カーブスのジョー・マドンです。(中略)常識にとらわれない采配、巧みなデータ活用、そして優れたコミュニケーション術を誇り、「この監督のために勝とう」とメジャーリーガーたちをまとめ上げています。マドンが何より優れているのはモチベーターとしての役割です。
・ドミニカでは監督やコーチがすべて選手を大人扱いし、細かい指示を出すことはほぼありません。
・身体が疲れているときにさらに練習したら、もっと疲れがたまるし、ケガにもつながる。それよりしっかり休んで、翌日また、フレッシュな思考と身体でプレーすればいいじゃないか
・ドミニカや堺ビッグボーイズの取り組みを紹介すると、「勝利至上主義ではない=楽しくやればいい」と思われる方も少なくありません。要するに、気楽にやればいいと。しかし、それだけでは子どもたちの真の意味での成長にはつながりません。(中略)
「勝利至上主義」の対義語は「勝利を目指さない野球」ではありません。子どもたちの未来をいちばんに考えて、かつ勝利を目指すということになります。
●書籍『高校球児に伝えたい! ラテンアメリカ式メジャー直結練習法』より
阪長 友仁 (さかなが ともひと) (著)
出版社: 東邦出版 (2018年7月初版)
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