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森 信三 氏 書籍『修身教授録~現代に甦る人間学の要諦』(致知出版社 刊)より

このウェブサイトにおけるページは、書籍『修身教授録~現代に甦る人間学の要諦』(森 信三 著、致知出版社 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。


・読書が、われわれの人生に対する意義は、一口で言ったら結局、「心の食物」という言葉がもっともよく当たると思うのです。


・よほどの病気ででもない限り、一回の食事を欠くことさえ、滅多にないことです。(中略)

ところが、ひとたび「心の食物」ということになると、われわれは平生それに対して果たしてどれほどの養分を与えていると言えるでしょうか。からだの養分と比べて、いかにおろそかにしているかということは、改めて言うまでもないでしょう。


・読書などというものは、元来ひとから奨められるべき性質のものではないとも言えましょう。つまり人から奨められねば読まないという程度の人間は、奨めてみたとて、結局たいしたことにはないからです。


・ 死後にその名が残るということは、その人の精神が残るということです。では一体どういう人が死後にもその名が残るかといいますと、生前国のために尽くす心が深くて、死んでも死に切れないという思いに、その一生を送った人でしょう。すなわち、その人の国をおもい世をおもうその思いの深さが、名という形をかぶって、死後にまで生きのびるわけです


・必要が起こってから始めた読書では、決して真の力の得られるものではありません。(中略)

急にあちこちの人に聞きまわって読んだような本からは、同じ一冊の本を読んでも、その得るところは半分、否、三分の一にも及ばないでしょう。


・人間の知恵というものは、自分で自分の問題に気付いて、自らこれを解決するところにあるのです。


・人間は自ら気付き、自ら克服した事柄のみが、自己を形づくる支柱となるものです。単に受身的に聞いたことは、壁土ほどの価値もありません。


・『葉隠』という書物は、佐賀の鍋島藩の武士道を説いたものです。「武士道とは死ぬことと見付けたり」という言葉が最初に出ていることで有名です。


・物事というものは、こうしてすぐに処置しておかないと、お互いに忘れやすいものですから


・すなわち実例実行によって、初めてよくその理が分かり、かくして得た力によって、さらに新たなの実行にも出るというのが、われわれ日本人の性情のようであります。

・かくして傲慢は、外見上いかにも偉そうなにもかかわらず、実は人間がお目出たい証拠であり、また卑屈とは、その外見のしおらしさにもかかわらず、実は人間のずるさの現れと言ってもよいでしょう。


・そもそも人間の値打ちというものは、人物としてはその上位者よりも、その人の方が優れているとしても、自分の地位が低ければ、それ相当に相手を立てて尊敬するところに、初めて人の心を打つものがあるわけであります。


・つまり真の修養というものは、単に本を読んだだけでできるものではなくて、書物を読んだところを、わが身に実行して初めて真の修養となるのです。


・どうもお互い人間というものは、自分の姿が一ばん見えないのであります。(中略)

実際われわれ人間は、わが顔でありながら、自分の家を直接に見たものは、この地球上ただの一人もないわけで、見たと思っているのは、ただ鏡に映ったわが顔にすぎません。


・自分の位置を人と比較せぬがよし。一切の悩みは比較より生ず。比較を絶したる世界へ躍入する時、人は初めて卓立して、所詮、天上天下唯我独尊の極地となる。


・批評というものは、真と偽、善と悪、正と邪、美と醜というような、色々な大事な事柄に対して、その別を明らかにする大事な働きであって、これを否定してしまったんでは、いわゆる味噌も糞も一しょくたになってしまう


・実際には短所だけを指摘しても、立派に批評として通用するが、単に褒めるだけでは、とうも批評とみられないのが普通のようです。


・大別して私には、三つの態度があると思うのです。その一つは、相手の欠点だけを鋭く見る立場であって、これはいわゆる悪口であり、あら探しというものでしょう。次は長所と短所とを公平に並べてみるという立場であって、これがいわゆる正しい意味での批評というものでしょう。ところがもう一つ、それはなるべく相手の短所の方は見ないで、その長所や美点、すなわちその優れた方面を主として見てみると言う立場です。


・ただ本さえ読んでいれば、それで勉強や学問かのように誤解してる人が、世間には少なくないようですから、そこで実行ということを力説するために「行って余力あらば」と申されたわけで


・なぜ読書の必要があるかと申しますと、人間は読書によって物事の道理を知らないと、真の力は出にくいものだからです。そもそも道理というものは、ひとりその事のみではでなく、外の事柄にも通じるものです。


●書籍『修身教授録~現代に甦る人間学の要諦』より
森 信三 (著)
出版社: 致知出版社 (1989年3月初版)
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