バリー シュワルツ 氏 書籍『なぜ選ぶたびに後悔するのか~オプション過剰時代の賢い選択術』( 瑞穂 のりこ 翻訳、武田ランダムハウスジャパン 刊)より
このウェブサイトにおけるページは、書籍『なぜ選ぶたびに後悔するのか~オプション過剰時代の賢い選択術』(バリー シュワルツ 著、 瑞穂 のりこ 翻訳、武田ランダムハウスジャパン 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。
・うまく選ぶのがとくにむずかしいのは、選ぶなら最高しか受け入れないのを信条としている人々だ。
・最高を求めるのではなく、「まずまず」を求める(親がこういうのを聞いたことがないだろうか?「子ともたちは『まずまず』成功してくれさえすればそれでいい」)
・自分にとって重要でない情報をシャットアウトするのは、意識の基本的な働きのひとつだ。
・情報を選り分けて決断を下すのは、手に余るほどの負担になった(中略)
判断のよりどころにする情報源が、爆発的に増えているからでもある。
・いい決断のプロセスは、たいていつぎの手順を踏んでいく。
1.目標を決める。これはひとつに限らない。
2.目標がそれぞれ、どこまで重要かを考える。
3.オプションを並べる。
4.どのオプションを選べば目標が達成できそうか、確率を考える。
5.もっとも確率の高いオプションを並ぶ。
6.あとで選択の結果にもとづいて目標を修正し、重要度を見直して、つぎの機会にオプション評価に取り入れる。
・自分がなにが欲しいかわかっているとは、ようするに、決断したあとでどんな気分になるか、まえもって正確に予想できるということだ。これは決して、たやすい作業ではない。
・ノーベル賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマンらの研究によると、過去の経験のうれしさ、不快さに関する記憶は、ほぼ全面的に、つぎのふたつの要因で決まるという。ピーク(最高の瞬間あるいは最悪の瞬間)にどう感じたかと、終わったときどう感じたかだ。
・わたしたちは愉快な経験についても、ピーク時にどのくらいよくて、終わりにどのくらいよかったかで評価する。
・広告の専門家、ジェームズ・トウィチェル教授はこういう。「ひとは広告をみて、世の中そういうものだと理解する」
・アンカーリング(中略)
「錨(アンカー)」にして、基準として利用するわけだ。千五百ドル以上する背広ばかり並んだ店で、八百ドルの無難なピンストライプ柄をみつけたら、掘り出し物だと思うだろう。だが五百ドルもしない背広ばかり並んだ店で、おなじ八百ドルの品をみたら、ぜいたくだと思えるだろう。
・賢く選ぶという作業は、目線をはっきりさせることから始まる。第一歩として、絶対の最高が欲しいのか、それとも、まずまずいいものが欲しいのか、どちらを目標にするかを決めなければならない。
・自分が欲しいのは最高であり、最高でなければだめというなら、あなたは「マキシマイザー(最大化人間)」だ。
・「最高」が手に入るという期待を、捨ててしまえばいいのだ。
・選択の機会は天の恵みではない。もし癌にかかったら、治療法を自分で選びたいか否かを質問した意識調査を思い出してほしい。回答者の大半はイエスと答えた。だがおなじ質問を、実際に癌にかかっている患者に問うと、圧倒的多数はノーと答える。(中略)
その選択が生死を分けかねないとき、どれにするかを自分で決めるのは、恐ろしいほどの重荷になる。
・ 四十年まえに比べて国民一人当たりの所得は五倍に増えたが、個人の幸福感の水準は、どう見ても上昇はしていない。
だがお金が人間を幸福にするのでないなら、なにがそうするのか? 人間に幸福感をもたらす要因のうちもっとも重要なのは、密接な社会的関係だと考えられている。
・「基準」を設定するという方法もある。
・「欲しい」と「好き」とでは、それを認識する脳のシステムが基本的に異なる。
・選択肢がいくつもあるときのマイナス面のひとつがこれだ。オプションが増えるたびに、二者択一のリストが長くなる。そして二者択一は、心理的な影響を伴う。二者択一を迫られると、決断そのものに対する考え方が変わってくる。さらには、最終的に下した決断に、どれだけ満足できるかが変わってくる。
・ようするに、だれがどう見ても正しいと思える選択でも、選ばなかったオプションというコストが隠れている。
・わたしたちはこうした苦しい選択を迫られると、なにか理由を探して、判断を正当化しようとする。
・人間には「損失回避」の傾向がある。
・二者択一を伴う決断を迫られると、どちらを選んでも、選択肢がそれしかなかったときに比べて、物足りなく思える。
・人類がその歴史上、あり余る選択肢と機会コストに直面した時代は、実質的にはなかったといっていい。過去に自問してきたのは、「AかBか、それともCか、いやそれとも……?」ではなく、「とるか、やめるか?」だった。
・わたしたちは直感的に、なにかをやらなくて失敗するより、やってみて失敗するほうが、後悔が大きいと考えている。これは「オミッション・バイアス」と呼ばれる傾向だ。
・わたしたちはいちど決断を下してしまっても、心のドアは閉めないらしい。時間がたつにつれ、するべきことをしなかったという痛みが、しだいに膨らんでいく。
・心理的な負担がとくに大きくなるのは、後悔に機会コストが絡むときだ。
・後悔には、怒りや悲しみや失望といったほかのネガティブな感情にはない、嘆きにさえもない、格別にやっかいな点がある。後悔を引き起こしている現状は、避けようとすれば避けられたという意識だ。ほかでもない自分が、もし別の選択をしてさえいれば、避けられた。
・後悔と「埋没原価」(中略)
足に合わない高価な靴(中略)
いちど買った靴は、二度と履くことはないとわかっていても、クロゼットの奥にしまっておく。だれかにあげたり、捨てたりすれば、損をしたと認めざるをえないからだ。
・後悔と「埋没原価」(中略)
外の店で食事すると、いくらお腹いっぱいでも、意地になって皿の上を片付ける。本の読みはじめて二百ページまで進んだら、いくらつまらなくても役に立たなくても、無理矢理最後まで読み通す。
・後悔と「埋没原価」(中略)
こじれきった結婚生活にしがみつくのは、多くの場合、愛情や相手に対する義理のためではなく、誓いを守りとおすを倫理的義務と心得ているわけでもなく、それまでに費やした時間と努力を考えるからだ。
・選んだ品にがっかりするのはなぜか? (中略)
選ばなかったものに対して後悔し、選んだものに対して失望する。このごく一般的な心理の働きとは、「順応」と呼ばれるプロセスだ。
・それまでにない経験をすると、快楽の基準が変わって、以前はまずまずだったものが、ときにはまずまずろどころでなくよかったものでされ、つまらなく思える。
・わたしたちは経験を評価するとき、つぎの企画のひとつ以上を実行している。
1.そうなればいいと望んだ状態と比較する。
2.そうなるだろうと期待した状態と比較する。
3.近い過去に味わった別の経験と比較する。
4.他人が味わった経験と比較する。
・幸せなひとと幸せでないひとで、おなじ状況に対して反応がこれほど違うのはなぜか(中略)
幸福なひとは、気を取り直して前進する能力があり、幸福でないひとは、くよくよ考えて、ますますみじめになっていく。
・ここまでの議論を一言でまとめるとこうだ。選択肢が際限なく広がると、そうでないときに比べて、決断のもたらす結果がよくなるが、わたしたちはそれに満足できなくなる。
・際限なく幅広い選択肢は、がっかりを超えて苦しみにつながりうる。
・オプションが多すぎる文化で、誰よりも苦しむのはマキシマイザーだ。マキシマイザーは、かなうはずがないほど期待を高くする。
※補足:マキシマイザーとは、最大化人間のこと。
・「まずまず」を受け入れられるようになれば、意思決定が単純になり、もっと満足できるようになる。
・どっちがよりうれしいだろう? 小さな法律事務所で「稼ぎ頭」となって、そこそこの給料に甘んじるのと、大手事務所でその他大勢に埋もれて高給をもらうのと、どちらがいいか? さんざん悩んだすえに手に入れた新車が、期待したほど素晴らしくないのはなぜか?
・最高を求める「最大化人間(マキシマイザー)」ではなく、足ることを知る「満足人間(サテイスファイザー)」になるのが対策のひとつ
●書籍『新装版 なぜ選ぶたびに後悔するのか~オプション過剰時代の賢い選択術』より
バリー シュワルツ 著
瑞穂 のりこ 翻訳
出版社: 武田ランダムハウスジャパン (2012年10月初版)
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