梁瀬 昌宏 氏 書籍『感動を創造する海外添乗員で世界すべての国を行く働き方』(セルバ出版 刊)より
このウェブサイトにおけるページは、書籍『感動を創造する海外添乗員で世界すべての国を行く働き方』(梁瀬 昌宏 著、セルバ出版 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。
・私の趣味は、海外旅行です。そして、この趣味を、仕事にしています。
・以前から疑問でした。何故ホテルマンや客室乗務員が書いた本は多いのに、海外添乗員が書かれた本は少ないのだろう、と。
・不純な動機も効果的(中略)
ズバリ正直に言わしていただきます。それは、「死ぬまでに世界中の色々な場所を幅広く訪れたい。しかもお金をいただいて仕事として訪れたい」という、極めて不純な動機。それに心を突き動かされて、職業を選択しました。すっきりしました。本音を吐けて(笑)。
・一方、本命のワールド航空サービスの就活では、お客様向けの無料の旅行説明会に出まくって上層部の方に売る、という作戦を考えました。確かな回数は記憶にありませんが、15回以上は出たでしょうか。いつも席は一番前。ネクタイは水玉。当時の海部俊樹首相がいつも水玉ネクタイでしたので、そのマネです。
この作戦が功を奏し、いよいよ採用面接が始める頃には、上層幹部の方々からどうやら風変りな学生として認知されていたようです。人により他社のスパイと見ていた方もいたようです。(中略)
晴れて採用となりました。
・アフリカ 突然、倒産した謎の航空機事件
飛行機が飛ばない(中略)
このときもフライトスケジュールの確認をしましたら、なんと飛行機の便名自体がない。普通は便名があって、それが遅れているなどの話になるのに。なんとですね、空港の人に確認したら、乗る予定の飛行機はセネガル空港なのですが、もう数ヶ月前に倒産したと言うのです。
しかし、その当日のEチケットの航空券を確かに持っています。倒産したという意味がわからない。さらに聞くと、航空会社から話が行ってるはずで、しかも、その代替便も出ている。しかし、代替便が今日は出発して行ってしまった、と。ええ! という話です…。
そして、またその一部始終を英語ができるお客様が聞いて、他のお客様に話された。そうすると、「え、なんか臨時便があったのに、それを添乗員が把握していなくて、飛行機が飛んじゃったみたいよ」と、そんな感じになりますよね。もう、まるで私のミスのような空気になってしまったのですが、倒産など全く連絡受けていないですし、日本だったらありえないお話です。
結局、この時は旅行会社に相談して飛行機をチャーターしました。たまたまチャーター便があったので助かりましたが、お金がなかったのでクレジットカードで現金を下ろしまくりです。高かったですね。
・ニュースではイランを相当悪いイメージで伝えていましたが、行けば全く違う印象の国です。北朝鮮でも、その時の記憶が蘇りました。思いだしました。
世界で最も悪名高い独裁国家でも、政治体制と普通にそこで生活する人は全く関係ないと言うこと。「独裁国家だから、そこに生きる普通の人々が悪人か? そんなことわないでしょ」ということです。結局は、人は人です。
・普段は全く感じませんが、海外に行くと日本はすごいと感じます。資源が全くない、そして太平洋戦争で崩壊した国が、世界有数の経済大国です。
・海外添乗員を仕事にするには、どうしたらよいでしょうか。また、向き不向きがあるとしたら、どのような人に海外添乗員は向いているといえるでしょうか。(中略)
添乗員は、気が細やかではないとできません。その一方で心臓に毛が生えていないとできない。不思議な条件です。
・海外を駆け巡る仕事なので、一番大事なのは英語だと考える人も多いでしょう。実際、英語ができるできないを海外添乗の向き不向きの原因と考える方は多いですが、実は、海外添乗員ができるかどうかの条件として、英語はほぼ関係ないとすら思ってます。(中略)
しかし、実際に添乗の中で一番使う言葉はやはり日本語です。(中略)海外添乗という仕事では、お客様の心をつかむことが大切なのです。
・英語を学ぶにはどうすればいいのか(中略)
言葉を習得するには、その言葉を話す友人をつくるのが、やはりおすすめです。
・体力がないと添乗できない
・よく「お客様目線で添乗しろ」と上司に言われましたが、若い頃はお客様の疲れ具合が見えなかったのですね。だから、自己満足で余計なものをサービスで追加すぎて、失敗してしまったのです。
・コラムパート2
2009年 国土交通大臣
西日本運輸局長賞受賞 優秀海外添乗員
浅野清美(中略)
帰国後に言い訳をみんながする。一生懸命やりましたがお客様の層が悪かったなどと、添乗員は必ず自分を守る話をする。しかし、会社やツアーやお客様の文句を言う前に、自分の添乗員としての実力はどれほどのものかを考えろ。まずは添乗員として自分自身が最大限の努力をしろ!
・評価は、お客様がするもの。この評価の権利にはほぼ100%お客様が持っています。評価は、期待値とのバランスで決まります。期待値は、金額が高くなればなる程 上がるものです。ですから、毎回、添乗するツアーの売値を確認しています。
・判断が必要な案件の処理(中略)
現場では、判断が必要な案件が出たら絶対に自分1人で処理せず、主催元旅行会社(ランドオペレーター等ではない)すぐに聞くことが大事です。また大きな会社には、担当者がたくさんいます。ですから、電話で話した担当者の名前を確認し、何かに書いておくことが大切です。
・サービス業の本質を忘れない(中略)
あるベテラン添乗員は、「相手より先に自分から挨拶をすることが勝利の方程式」だと言います。
・添乗における勝利の方程式
①相手より先に感じよく笑顔で挨拶
②必ずお客様の名前を呼ぶ
③一番苦手なお客様から積極的に声をかける
・マイナスのギャップに注意(中略)
たとえば、タイトルは「ゆっくりイタリア紀行」。このような表現も要注意です。実は全く「ゆっくり」していないときもあります。本当の意味でのタイトルは、商売ですから絶対にこんなネーミングはありませんが、「ぐったりイタリア紀行」です。
私が言いたいのは、このようなパンフレットの虚々実々を、添乗員が理解していることが大切だということです。
・デメリットも伝える(中略)
お伝えするポイントは、「どの程度歩くか」「忙しいかどうか」「ホテル」などです。添乗員だけ知っているのではなく、お客様にも同じ視点でツアーを俯瞰していただく。また、弱点も隠さず知っていただくことが重要です。年齢を重ねれば少しの坂が辛くなります。
・ツアー前には、自分をケアするための用意もします。孤独な仕事で、ストレスも溜まりやすいのが添乗。私が準備するのは、親友であるお酒、松本清張などの推理小説数冊、それと、ランニングセットです。
・海外に行ける残りの回数を指折り数えるお客様。逆に、添乗員にとっては、経験を積めば積むほど海外は日常生活の一部になります。ですから、添乗員は、お客様にとっての海外旅行での体験の意味や重さを意識しなければなりません。
・ランドオペレーターとは
ランドオペレーターというのは、主に海外旅行で観光案内やホテル、レストランや現地の交通手段等の手配をする仕事、またそれを専門に行う会社のことです。日本の旅行会社と海外との、橋渡しをしています。ツアーオペレーター、現地手配会社、手配会社などとも呼ばれていますが、いずれも役割は同じです。
・ツアー前にお客様が知りたいのは、現地の天気、服装、両替。これが3大事項です。こちらが確認すべき超重要なことは、お金のからむこと。オプショナルツアーの参加意思の確認と料金、当日の返金・集金についての確認です。
・事前のウェブチェックインなどもありますが、団体は後回し。通路側の席を取るのが、以前より難しくなっているのが現状です。
・とにかくおしなべて日本に比べて時間にルーズなのが海外です。時間になっても朝食のレストランがオープンしておらず、従業員部屋に行ったらまだ寝ていたなどということがありました。
・人は信用しても、その人のやる仕事は信用しないのが、責任者の心得です。ベテラン日本語ガイドに丸投げというのもいいようですが、仕事まで信用したらダメなのです。
・荷物が届かないケースでは、様々な原因がありました。ポーターが誤って別の部屋へ持っていってしまったとか、バスから積み忘れとか。レアなケースでは、盗難とか。ガイドさんやドライバーさん達を人として信用していますが、仕事まで手放しでは信用していません。これが責任者の心構えです。
・ホテルのチェックイン ― 夕食までの動き(中略)
近くのスーパーマーケットの場所などを付け加えて案内します。スーパーマーケット情報は特に喜ばれます。
・バスタブの有無(5つ星だからあるものではありません)(中略)
ヨーロッパをはじめ、シャワー文化の国が多いのでしょうか、5つ星でもシャワーだけという感覚には日本人の私はびっくりですが、お客様はやはり湯船につかり疲れを取りたいものです。
・ホテルのチェックイン ― 夕食までの動き(中略)
翌日の朝食の場所と時間、食券の有無(中略)
室内の水が有料か、無料か
・お客様への案内(とにかく早く部屋に入りたいのです)(中略)
スタンダードなご案内は、次のような内容です。
●添乗員の部屋番号と電話のかけ方。
●両替(全員替えたいようなら、ツアーの中盤から気にして案内です)
●エレベーター乗る、ロビー階は何階?
●部屋の条件(バスタブがあるのか、ツインかダブルかなど)
●無料の水が置いてあるかどうか。
●ホテルの周辺状況(スーパーマーケットがすぐ近くにあるか、何時までやっているかなど)
このほか、次の集合時間または、明日の朝食のレストランの場、スーツケースを出す時間や出発時間等をご案内します。
・過去から現在まで、失敗経験は、自慢じゃないけど誰よりも多いです。私のような凡人は、1つのことですらやり続けるのが本当に大変です。
・必殺・突撃お宅訪問(中略)
ある日、インターホンが鳴り、ドアを開けると外国人。今から何十人もでお宅を見せてほしいと頼まれたら、皆さんならどうしますか。訪問させてくれた方々に本当に感謝です。
・海外添乗では思わぬトラブルがつきものです。瞬時に問題を解消する能力は、他のどの仕事よりも早く身につきます。
・添乗員つきの海外旅行は、確かに減りはしたものの消滅はしないだろう、というのが、私の感覚です。
・インターネット出現により大きく変貌した旅行業界(中略)
旅行者が、旅行会社を飛び越してランドオペレーターとコンタクト取る。賢いといえば賢い話だと思います。ランドオペレーターいうのは、すでにお伝えしたとおり旅行業界の問屋のようなものです。
今は、このランドオペレーターを旅行者が選んで使えるようなサイト、ホテルで言えばブッキングドットコムのようなサイトが人気だそうです。
・マカオの深夜(中略)
急遽、再度の集合時間を設定して市内のカジノへ繰り出しました。それから数時間が経ち、中には明日の朝から市内観光もあるのでもうホテルに戻りたいと言うお声もちらほら。
帰国後に一悶着
このときは小さなグループで社長が幹事役を兼ねておりましたので、そろそろ明日も早いのでお戻りになりますかと聞きしましたら、なんと明日の午前の観光はすべてキャンセルするとのこと。その代わりにカジノの後は食事に行きたいとのことでキャンセル料がいまからだと100%かかる件を口頭でご説明して、カジノから食事に流れました。(中略)
帰国後、実はこの件で旅行会社キャンセルした分のお金を返してほしいという連絡があって、一悶着がありました。口頭ではご説明したつもりでしたが、先方は聞いていないの1点張りだったようです。(中略)
しかし、お金の絡むところは一筆いただくなり、書面でやり取りすべきでした。
・音楽の添乗(中略)
バッハの痕跡を見ながら、最後にバッハの曲をコンサートで聴くというようなプランでした。(中略)家でクラッシク音楽を聴くタイプではありません。(中略)
大変だったのは、私自身がバッハのファンにならないといけない、ということでした。(中略)
添乗員は、少なくともそのツアーのあいだは、旅行で訪れる国のファンでなければいけないと思います。
・とても面白かった個人旅行の1つに、酒井正雄さんの、世界中のポスト郵便ポストを巡る旅というのがありました。酒井さんは、「世界の郵便ポスト196か国の平和の懸け橋」(講談社)という本も出されていて、世界中のポストを撮影しているのです。その旅のお手伝いをさせていただきました。
●書籍『感動を創造する海外添乗員で世界すべての国を行く働き方』より
梁瀬 昌宏 (著)
出版社: セルバ出版 (2019年3月初版)
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