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雑誌『世界 2019年 08 月号~特集1 争点としての消費税 特集2 出版の未来構想』(岩波書店 刊)より

このウェブサイトにおけるページは、雑誌『世界 2019年 08 月号~特集1 争点としての消費税 特集2 出版の未来構想』(岩波書店 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。


●出版のどこから議論すればいいか
出版ウォッチ半世紀の総括

清田義昭
出版ニュース社代表。


・私が編集していた『出版ニュース』が今年三月下旬号で休刊した。休刊という言い方が出版界の通例であって、実際は廃刊である。私が携わった五二年間、月三回の発行なので結構長いといってよい。(中略)

休刊は、実は、会社をたたむことが前提だった。


・とりわけ雑誌はその時の多様な動向を具体的な形にして編集される。『出版ニュース』、『出版年鑑』は、いわば客観的にその現象を記録するものとして存在していた。つまり出版界および出版物をウォッチする役目を担ってきたといってよい。


・一九九五年秋、Windows 95が発売される。私は、これが雑誌の時代の分岐点になったと見ている。事実、翌九六年が売上のピークになる。雑誌の時代の、終わりの始まりとなった。


・いまや大手出版各社のアマゾン販売の比率は一五%以上あるといわれる。おそらく中小出版社でもその比率は大きくなっているだろう。


・アマゾンは、取次を通さずに出版社から直接仕入れ方式を加速させている。すでに直接取引は二九〇〇社におよぶという。


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●本あるところに、コミュニティ!

座談会

沖縄県産本と読者・作り手・売り手の現在

新城和博
×
宮里ゆり子
×
森本浩平


・森本  ジュンク堂書店那覇店(中略)上位ランキングの半分くらいは「沖縄本」が占めます。そうした地域は全国でもなかなかありません。唯一言えるとすれば京都でしょうか。


・新城  沖縄には独自の文化があるので、冠婚葬祭などは県外の出版社にはなかなか出せないジャンルでしょう。


・新城  沖縄(中略)ここ一〇年ほどで県内の出版社が少なからず減ってきました。復帰前からあった老舗の出版社が活動をやめたり、規模を縮小しています。七〇年代に沖縄は「出版王国」とも言われていたのですが、それを支えていた出版社がかなりなくなった。


・宮里  いまでは県産本フェアに古書店が入るのは当たり前になっています。古本でしか買えない沖縄本もあるからです。


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●ドイツ出版界の対応と適応

シュピッツナーゲル典子
ジャーナリスト。ドイツ在住。(中略)


・ドイツ出版産業の現場

ドイツ出版産業の要はフランクフルトに拠点を置くドイツ図書流通連盟BDBである。BDBは、書籍の流通を促進するほか、制作部門(出版社) ・書籍取次部門・流通販売部門(代理店や書店)を統合し、図書取引の利害を代表する団体だ。


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●すべての本を、すべてのチャンネルで、すべてのアカウントに

挑戦し続けるアメリカの出版社

大原ケイ(中略)


・現在、全米には約二六〇〇の出版社がある。一般書市場における大手出版社五社は「ビック5」と呼ばれて年間の売り上げ部数トップ50の一般書の売り上げシェアで見ると、毎年その八割ぐらいを片手で数えられる版元が手がけていることがわかる。

だが、これらアメリカを代表する大手出版社が現在では、主にヨーロッパに本社を置くメディア・コングロマリットの一部である事ことはあまり知られていないかもしれない。


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●崩壊と再生の出版産業(中略)

星野渉 (中略)文化通信社専務取締役。(中略)


・ドイツモデルから見る今後の出版流通(中略)

ドイツの出版産業が書籍だけで成立している理由は、まず、書籍の価格が日本に比べて一.五倍から二倍程度と高額なことがある。このため出版社、取次、書店などは書籍を販売するだけで製作や流通のコストを吸収し、利益を出せるのだ。


・日本では出版のリスクを、出版社が返品を受け入れる形で負っているのに対して、ドイツでは返品を前提にせずに発注する書店が負っているといえる。


・ドイツでは出版社と書店が直接取引する場合は出版社六〇%、書店四〇%、取次が介在する場合は出版社が五〇%、取次一五%、書店三五%程度、流通・小売のマージンが多いのだ(いずれも大雑把な割合。本来条件は個別に設定され、ドイツでは注文する冊数などによってマージン率が変動する)。


・書店側は精度の高い仕入れを行うため、専門の仕入れ担当者(バイヤー)を置くなどしている。書店員はアルバイト中心の日本と違って、ほとんどが専門の教育を受けて書籍販売業の資格を持つ正社員だ。


・アメリカの出版業界を視察した日本の出版社関係者が「発売前に書店から注文を集めるアメリカの仕組みでは、緊急出版ができないのでは」と聞いたところ、「それはジャーナル(雑誌)の仕事だ」という返事が返ってきたことがある。


●雑誌『世界 2019年 08 月号~特集1 争点としての消費税 特集2 出版の未来構想』より
出版社: 岩波書店 (2019年7月8日発売)
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