神辺 四郎 氏 書籍『その日本語は間違いです~正しい言葉の使い方』(日本経済新聞出版 刊)より
このウェブサイトにおけるページは、書籍『その日本語は間違いです~正しい言葉の使い方』(神辺 四郎 著、日本経済新聞出版 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。
・「汚名を挽回します」では「恥の上塗り」に(中略)正しくは「汚名を雪ぐ(すすぐ)」であり、「怒り心頭に発する」だからです。
・【怒り心頭に~】
×達する
〇発する
決まり文句の誤用の定番の一つが、これ。「心頭」とは「心の中・念頭」の意だから、そこまでカーッと怒りが達する、としたい気もわかるが、事情は逆で、まず「心中に発する」のが「怒り」で、「怒り、心頭に発する」となるわけだ。
・【汚名を~】
×挽回する
〇雪ぐ(すすぐ)、はらす
「挽回する」というのは「元の勢いを取り戻す」ことなので、「汚名を挽回する」では、その汚名そのものを取り戻すという逆の意味になってしまう。
・【窮地に~】
×陥る、落つ
〇立つ
「窮地」とは「逃げようのないギリギリの立場」のこと。べつに落とし穴をいうわけではないので、「陥る」ではなく「立つ」。「窮地に立つ」「窮地に立たされる」「窮地を脱する」などと使う。
・【沽券(こけん)に~】
×掛かる、触わる
〇関わる
「沽券」は「売り渡し証文」のこと。転じて「体面・メンツ」の意。それに「差し障りが生じる」のが「沽券にかかわる」ことなので、漢字では「関わる」。
・【財布の紐が~い】
×固、しぶ
〇長
ここでの「財布」は昔のスタイルのもので、二つ折りにして紐で巻かれて携帯されたいた。そこから、その紐が長いとなかなかお金が出てこないので、ケチな人ほど「財布の紐が長い」と揶揄された次第。
・【取り付く~がない】
×暇
〇島
ヒとシを混同する江戸っ子なら「暇」かもしれないが、ここは「島」で、意は「頼りになるものごと・よすが」。全体の意は「冷淡で素っ気なし」。
・【~覚めが悪い】
×目
〇寝
・【歯に~着せぬ】
×ころも(衣)
〇きぬ(衣)(中略)
誤用というより誤読に要注意の言葉。
・【忸怩たる思い】(じくじたるおもい)
×彼に裏切られたなんて、忸怩たる思いだ
〇彼を裏切る結果になり、忸怩たる思いだ
「忸怩」とは「心のうちで恥かしく思うこと」で、読みはジクジでも「ジクジクと不満に思う・しっくりしない」という意ではないので注意が必要。誤用の常連。
・「情けは人のためにならず」(中略)
正しい意味は、「他人に情けをかけてやれば、それがめぐりめぐって、いずれ自分にも良い報いとして返ってくる」というものです。
・【すべての道はローマに通ず】
×「すべての道は・・・・・・」だ、なんとかなるさ
〇「すべての道は・・・・・・」だ、協力して頑張ろう(中略)
「真理は一つ、方法や手段は違っても目的は同じだ」が正しい解釈。
・【敵は本能寺にあり】
×「敵は本能寺にあり」、目的はただ一つだ
〇「敵は本能寺にあり」、真の目的は別だ
・漢字を書き間違える「3つの原因」をチェックしよう(中略)
①「同音異義語」に注意する(中略)
たとえば「人とアう」というとき------。これを「彼女と合う」と書くと、「性格が合う、フィットする」という意味になり、場合によっては大変な誤解を生んでしまいます。
②「部首」の確認をする(中略)
たとえば「穴をホる」というとき------。(中略)「掘る」が正しい表記(中略)それを、ついつい「堀る」と書いてしまう(中略)
③字面(じづら)が似ている字に注意する
「掘」と「堀」、「幣」と「弊」などは、確かに似ている字です
・【ウチョウテンになる】
×有頂点
〇有頂天(中略)
このウチョウテン「てっぺん」の意の「頂点」ではなく「頂天」
・【カンペキな仕上がり】
×完壁
〇完璧(中略)
「非の打ちどころなし」の意で、音もヘキの「璧」
・【ゲンをかつぐ】
×現、幻
〇験
このゲンは「縁起・前兆」の意。つまりは「効験・霊験」でもある。(中略)濁るところがミソ。現在では片仮名表記が主流。
・【読書ザンマイ】
×三味
〇三昧(中略)
「三味」としてしまうと、読みはサンミで、意は「三つの味」。一方「三昧」はザンマイで、意は「心を一つに集中する」。
・【ムガムチュウ】
×無我無中
〇無我夢中(中略)
「我を無くし(失い)、夢の中」なので、「無我夢中」。
・文章全体の意味を変えてしまう「同音異義語」のミス(中略)
たとえば「クジュウ」という言葉を漢字に変換したとき、「苦渋」と「苦汁」とが出たら。さて、どちらを選択するでしょうか? 「クジュウをなめる」なら「苦汁」になりますし、「クジュウの決断」なら「苦渋」になるのですが、そこまでは機械も教えてくれません。
・【しゅさい】
会社シュサイの運動会→主催
A氏シュサイの研究会→主宰
「企業・団体などが主となって催す」のは「主催」。対して「個人・グループ等が主となって取り仕切る」のが「主宰」。「宰」は「かしら・リーダー」の意で、「宰相」など。
・【すすめる】
入会をススめる→勧める
良書をススめる→薦める
「勧誘・勧告」の意なら「勧める」で、「弁護士になることを勧める」「入会を勧める」など。一方「推薦」の意なら「薦める」で、「薦められて立候補」。
・【欠伸が出る】
×けっしん
〇あくび
「欠」と「伸」で「あくび」とは完全な当て字だが、「欠」の一字で「あくび」と読ませることもある。
・【一段落つける】
×ひとだんらく
〇いちだんらく(中略)
「いちだんらく」が正しい使い方。
・【一世一代】
×いっせいいちだい
〇いっせいちだい
もと仏教用語のため「一世」はイッセイとならずに、イッセ。
・【宮内庁御用達】
×ごようたつ
〇ごようたし
・【自叙伝を上梓】
×じょうさい
〇じょうし
「梓」は木の「あずさ」で、音はシ。昔、梓を版木に用いたところから「書物の出版」を「上梓」と呼ぶようになったとか。
・【三種の神器】
×じんき、しんき
〇じんぎ(中略)
「神から受け伝わったとされる鏡・剣・勾玉(まがたま)」。
・【先達の知恵】
×せんたち
〇せんだつ
センダチの読み方もあるが、一般にはセンダツ。この「達」は「友達」などの「複数」の意ではなく、「達する」で、「先んじている人」。
・【適宜対処する】
×てきせん
〇てきぎ
「宜」と「宣」は混同されやすい
・【読点をつける】
×どくてん
〇とうてん
「句読点」とあればすんなり「くとうてん」と読めるかもしれない。
・【本の読誦】
×どしょう
〇とくしょう
「読経」ならドキョウなのに「読誦」だとトクショウ(またはドクショウ仏教用語としてならドクジュ)になる
・【古書の補綴】
×ほそう
〇ほてい、ほてつ
「綴り方」とあれば「つづりかた」で、「作文」の意。
・【来年が目途】
×めど
〇もくと
よく混同される「めど」のほうは漢字表記は「目処」。(中略)意は、「めざすところ・目標・目当て」。
●書籍『その日本語は間違いです~正しい言葉の使い方』より
神辺 四郎 (こうのべ しろう) (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2004年11月初版)
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