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鴻上 尚史 氏、佐藤 直樹 氏 書籍『同調圧力~日本社会はなぜ息苦しいのか』(講談社 刊)より

このウェブサイトにおけるページは、書籍『同調圧力~日本社会はなぜ息苦しいのか』(鴻上 尚史 著、佐藤 直樹 著、講談社 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。


・鴻上

「同調圧力」とは、「みんな同じに」という命令です。(中略)

日本は「同調圧力」が世界で突出して高い国なのです。そして、この「同調圧力」を生む根本に「世間」と呼ばれる日本特有のシステムがあります。


・鴻上

あなたを苦しめているものは「同調圧力」と呼ばれるもので、それは「世間」が作り出しているものです。それがコロナで凶暴化したことによって、「荒れるSNS」や「自粛警察」や「自粛の強制」が生まれたのだ


・鴻上

「世間」の特徴は「所与(しょよ)性」と呼ばれる「今の状態を続ける」「変化を嫌う」です。


・鴻上

同調圧力とは、少数意見を持つ人、あるいは異論を唱える人に対して、暗黙のうちに周囲の多くの人と同じように行動するよう強制することです。こうしたものに、僕はいまも、息苦しさを感じています。


・佐藤

コロナが広がって(中略)

海外、特に欧米は厳しい対応しました(中略)しかし、同時に保障も用意するわけです。命令と補償がセットになっています。


・鴻上

社会の中に感染者を差別、排除しようとする強い空気を感じます。そこには病者への気遣いも同情も見えない。


・鴻上

こうした同調圧力を生み出す「世間」とは、一体何なのか。コロナによって炙り出された風景は、「世間」とどうつながるのか。


・鴻上

「世間」というのは現在及び将来、自分に関係がある人たちだけで形成される世界のことを分かりやすく言えば、会社とか学校、隣近所といった、身近な人びとによって作られた世界のことです。(中略)

つまり「あなたと関係のある人たち」で成り立っているのが「世間」、「あなたと何も関係がない人たちがいる社会」が「社会」です。


・佐藤

極端に言えば、日本人の人間関係のつくりかたは、これだけスマホなどの電子的なコミュニケーションの手段が発達しているのに、一〇〇〇年以上の間ほとんど変わっていないと思います。


・鴻上

「お返しのルール」(中略)

おごってもらったら、お返しをするのではなく、貧しい人や傷ついてる人に、その分を返しなさいということですね。


・「呪術(じゅじゅつ)性のルール」------香典半返しは新しい習慣(中略)

鴻上

葬儀業者によれば、事前に半額分の商品をずらっと用意して、香典をもらったらその場で手渡すことができるシステムもあるという。(中略)

ちなみに調べてみたら、香典半返しというのは、一九七〇年代以降にできた比較的新しい習慣なんだそうです。


・ホームレス受け入れ拒否の論理(中略)

佐藤

「世間のルール」を遵守(じゅんしゅ)しないと「世間」から排除されるが故に、日本人はこれをじつに生真面目に守っている。


・鴻上

ネットで誹謗中傷をくりかえす人たちが世界中にいて、英語ではそういう人たちのことをインターネット・トロール(中略)と言います。(中略)

トロールとは、妖怪、クリーチャー、つまり特殊な少数者ということです。でも、日本ではそういう人のことを「ネット民」と言ったりします。ネットにいる人たち。民衆。つまり、特殊じゃないし、少数だという意識もあまりないんです。


・佐藤

一方、日本人は、「身分制のルール」があるため、他人を信用できるか否かは、「世間」のなかでどういう自由や身分を占めるかによって判断してきた。これは、それを自立的に判断する能力が、日本では育たなかったことを意味します。人を見極める能力がないことが、根拠のない情報に踊らされ、パニックを起こしやすい理由となっているのではないでしょうか。


・鴻上

「好きなことをやっているんだから、黙っとけ」と批判するということは、そんなに好きなことをやっていないこと人たちが多いんだろうかということです。


・鴻上

何かをたたくことで自分の存在意義を見つけたいと思っているんじゃないか

佐藤

つまり、日ごろ、ストレスがものすごくある。


・鴻上

演劇界の例でいうと、オーディションに落ちたときに、欧米の俳優は「私に合う役がなかったんだ」と思うんだけど、日本人の俳優は、つい、人格否定されたような気持ちになるんです。「ああ、自分は否定された」と。


・同調圧力が犯罪を抑制させているのは間違いないと思います。自動販売機が町中に設置されているのに、壊されることがない国なんて、日本以外にはあまりないでしょう。「世間」の同調圧力は、犯罪をやりにくくするんです。


・鴻上

日本人は、おまえの息子が罪を犯したんだから、おまえにも責任がある、と責める人が多いんですね。(中略)

家族は、家族である前にそれぞれに個人の集まり(中略)

佐藤

子どもも個人、親も個人。ですから子どもの犯罪と親はまったく関係がない。


・鴻上

犯罪者に対して、「親の顔が見てみたい」という言い方が日本には存在しますよね。


・鴻上

コロナ感染者も謝罪に追い込まれましたね。

佐藤

日本では、あたかも病気=悪であるかのように、感染者やその家族は「世間」への謝罪を強いられるんですね。責任があるとは到底思えない


・鴻上

「他人に迷惑をかけるな」という言葉が呪文になったんでしょうね。だいたい、日本ってコロナどころか普通に風邪ひいて会社を休んだけでも謝るじゃないですか。それどころか、バカンスをとっても謝る。


・佐藤

休みをとること自体が、何か悪いことであるかのように認識されている。


・鴻上

日本では生活保護を利用することを、それこそ恥だと思い込んでいる人が少なくない。借金の問題と同じですが、とことんまで貧苦に耐えて、結局、餓死してしまう人までいます。


・佐藤

日本では生活保護を利用できる貧困ラインにある人のうち、実際はその二割程度しか生活保護利用者がいないそうです。これを生活保護の捕捉率というのですが、二割しかいない日本とは違い、ヨーロッパ諸国では、それが八割にも達するんですね。


・佐藤

海外で捕捉率が高いのは、生活保護を権利だと認識しているからなんですよ。福祉とは権利


・日本の匿名率の高さ(中略)

鴻上

ネットの匿名に関しては、やはり総務省の面白い調査結果を発表しているんです。日本の場合、ツイッターの匿名率は七五・一パーセントにものぼります。ところがアメリカは三五・七パーセント、イギリスは三一パーセント、フランスは四五パーセント、韓国が三一・五パーセント、シンガポールが三九・五パーセント。日本以外の国は匿名率がおおむね三~四割程度です。 日本だけが突出して高いんですね。


・鴻上

匿名だから、ネットでようやく一息つくことができる。(中略)「世間」の息苦しさから生き延びる方法だと思います。


・佐藤

二〇一七年に森友学園の問題で、籠池泰典(同学園元理事長)さんが日本外国特派員協会主催で記者会見をやったことがあります。(中略)

通訳が三人いて、「忖度」を訳そうとしたわけです。「推測する」とか「行間を読む」とか「誰かが案じていることを汲み取る」とかいろいろ訳したわけですけど、結局、適切な言葉が出てこなかった(中略)

『フィナンシャル・タイムズ』の記事のなかで忖度を定義しているんです。何と定義しているかというと、「与えられていない命令を先取りし、穏便に従うことを示す」と。つまり命令なんです。


・鴻上

すべての職種で休業補償と自粛要請はセットだといくら言っても、「結局金か、おまえは」とか言われますからね。


・鴻上

安田純平さんがシリアで人質となったとき(中略)自国の若者がどこかで人質になった際に、ここまで自己責任論で当事者を責めるような国って他にありますかね。

佐藤

ないです。ありえません。


・鴻上

自分はまだ主張することがあると言いたいんでしょうか。今でも天下国家を論じているんだ、みたいな姿を見せたいのかもしれません。こうした高齢ネトウヨ問題、珍しくなんです。

※補足:「ネトウヨ」とは、ネット右翼(ネットうよく)のこと。インターネットの「ネット」と「右翼」を合わせた造語。


・鴻上

幼稚園の給食で全員が「いただきます」の唱和なんてかわいいじゃないという人もいるのですが、でも、「COOL JAPAN」の映像で見た外国人は、軍隊とか刑務所の食事風景のようだと言っていました。その感想も分かるんです。


・鴻上

いろんなアンケート調査で、日本人の若者は世界のなかで突出して自己肯定感が低いんですよね。(中略)

自分のことをちゃんと肯定することができないから「社会」への信頼も低いのかなと。


・佐藤

日本語には男言葉、女言葉があるじゃないですか。ところが英語だとまったく分からない、ある意味で言葉に男女の区別がない。言語のうえでは平等なんです。


・佐藤

日本で最も自殺率の低い徳島県旧海部(かいふ)町(現・海陽町)(中略)

なぜ、この町では自殺者が少ないのか、岡さんはその理由をこう示しています。まず、人や考え方の多様性が認められていたこと。どんな人がいてもいい、いるべきだ、といった考え方が町に浸透している。次に、人物本位主義が生きていること。職業上の地位、家柄、学歴ではなく、人柄を見て判断するのだという考え方が重んじられている。そして町民の間に社会参加の意識があること。「どうせ自分なんか」といった考え方ではなく、誰であっても社会活動の機会が与えられています。

(※岡さんとは、社会学者の岡檀〔おか まゆみ〕さんのことで、同氏が書いた『生き心地の良い町』(講談社)の中から)
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・佐藤

岡さんの推測ですが、材木の集積地として古くからたくさんの他者を受け入れきたために、地縁血縁が薄い共同体になったのではないかと。

(※岡さんとは、社会学者の岡檀〔おか まゆみ〕さんのことで、同氏が書いた『生き心地の良い町』(講談社)の中から)


・佐藤

息苦しさは、あなたに責任があるのではない

鴻上

そう、息苦しさの正体は、あなたを苦しませているものの正体は、まさに世間であり、同調圧力。


・世間学の面白いところは、いまある具体的な生きづらさや息苦しさといった、自分で気づかずに「世間」に縛られている状況の根本の理由が分かり、それから解放される「導きの糸」となることである。


●書籍『同調圧力~日本社会はなぜ息苦しいのか』より
鴻上 尚史 (こうかみ しょうじ) (著)
佐藤 直樹 (著)
出版社 : 講談社 (2020年8月初版)
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