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企画はさまざまな尺度、観点から考えられる。
1、時代を読む企画
田中康夫、道路公団の民営化、空爆以後のイラク、SARSといった企画。これらはタイムリーに刊行されれば読者はつく。しかしタイミイングがむずかしい。事件が終われば、関心はあっという間に消失する。特に、ビジネス書の棚では、経済、景気についての書物が、どれほど出版され、どれほど早く消えているか、わかるだろう。
2、潜在的欲望の企画
お金(株などの投資)、出世(権威、権力)、色気という、人間が生来抱えている欲望に向けた企画。いつの時代にも一定の読者がある。
3、ベイシックなもの
英会話、病気、老い、料理、論語、漢詩、俳句、三国志といったテーマはつねに古くて新しい。読者が代わり、著者が代われば、新しい企画が生まれる。
4、新しいもの
日本人はいまだ新しいものに関心を強く示す。
5、翻訳
近年のベストセラーのほとんどが翻訳ものである。「ハリーポッター」(静山社)、「チーズはどこに消えた?」(扶桑社)、「金持ち父さん貧乏父さん」(筑摩書房)といった具合。これらはすでに原稿がある。ただそこには、版権を取得するため支払うアドバンス(前払い金)が存在する。評判の高いものには、相当のアドバンスがかかる。また向こうで話題になったからといって、日本で評判になるかはどうかはわからない。当然その逆もある。
6、タレントもの
歌手、俳優、政治家、経営者の自伝とかエッセイはつねに世の耳目を惹く。
7、ハウ・ツーもの
整理法から、文章の書き方、語学から趣味・実用まで幅も広い。
8、社会への警鐘
慰安婦問題だったり、エイズ訴訟、原発、ハンセン病問題など。1の時代を読む企画と重なるが、より社会性が強い。
9.学問
研究書や全集、講座といった専門書のほかに、啓蒙、教養に傾斜した新書、選書なども含んでいる。文科系、理科系を問わず、書籍分野のなかで大きな領域を占めている。
10、写真、絵画などの図版もの
自然の驚異から動物やヌード写真集、さらには考古学の埋蔵品から現代アードまで、じつに範囲が広い。
他にもまだまだある。再度確認したいことは、企画を制限するものは何もないということ。
●編集とはどのような仕事なのか より
企画発想から人間交際まで
鷲尾賢也 著
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トランスビュー刊 (2004/3)
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鷲尾賢也(わしおけんや)氏とは
1944年、東京の下町生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。1969年講談社入社。「週刊現代」編集部をスタートに、講談社現代新書」編集長、PR誌「本」編集長などを歴任。書き下ろしシリーズ「選書メチエ」を創刊し、また「現代思想の冒険者たち」「日本の歴史」など記念碑的な企画を世に送り出す。学術局長、学芸局長、取締役を経て、2003年退任。現在、講談社顧問。
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