このページは、書籍「出版の近未来」から、教え学んだこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ転載しています。
・日本における出版流通の取引は、再販制度(定価販売制度)と委託販売制度の二本柱からなっている
・委託制度の基本
*委託制:出版社が取次を通じて書店に出版物の販売を返品条件付きで委託する販売方法。
*新刊委託(普通委託):取次→小売間は105日(3ヶ月半)、取次→出版社間は6ヶ月
*雑誌委託:取次→小売間は月刊誌60日(取次→出版社90日)、週刊誌は45日(取次→出版社60日)
*常備寄託:通常一年間は店頭展示されることを条件に出荷する特定銘柄(補充義務あり、税務上、社外在庫として扱われる)
*長期委託:通常6ヶ月程度の普通委託より期間の長い委託品(補充義務なし、イベント商品)
*買切制(注文制):小売書店からの注文による送品(返品なし→実際には、返品条件付買い切りというケースもある)
*予約制:全集や百科事典など長期にわたる高額商品の予約販売(買い切り、返品なし)
*流通マージン:取次は本体価格の8%、書店は20%~25%前後となる
・再版制度の基本
*再販売価格維持(Resale price maintenaneの訳語)とは
再版契約を結ぶことで、定価販売(出版社が決めた価格で販売)することが可能な制度(→独占禁止法23条の適用:1953年の改正で適用除外となり再版制となる)。
再版商品として規定される著作物には、「書籍、雑誌、新聞、レコード、音楽用テープ、音楽用CD」がある。
*主な再版制の弊害意見:「取引条件の固定化」「客注品が遅い」「返品による無駄」「競争原理がない」などがある。
*主な再版制の擁護意見:「全国一律の定価」「安価な出版文化の共有」「文化の衰退」「中小出版社の倒産」などがある。
・出版社の現状
〔出版年鑑〕の2002年度版によると、出版社の数は、4424社となっており、うち78%の3461社もの出版社が東京に集中している。
株式会社が2806社、有限会社が468社、個人が229社、社団法人が183社、財団法人が153社、学校法人23社、宗教法人30社などとなっている。
資本金別に見ると、1億円以上が251社、501万円から1000万円までが1455社、1001万円から2000万円までが434社、2001万円から3000万円までが186社となっており、社団法人や学校法人など1289社は資本金が不明である。
規模別に見ると、従業員数10名以下が2264社、11名から50名までが1020社、51名から100名までが229社、101名から200名までが158社などとなっており、資本金、規模別両面から見て、日本の出版界が「中小零細企業集団」で成り立っている産業であるといえる。
・出版というメディアの特徴
1、多品種、少量生産が主で、同一商品の反復購入がない:需要予測が難しい
2、一冊一冊が独自の価値を持つ創作物。ハードとソフトを兼ね備えた思考型メディア
3、価値評価が多様で量より質が尊重される。文化性と商品性をもつパーソナルメディアといえる。
4、小規模、小資本の自由なメディアであり、免許事業ではない。
5、委託生産(印刷・製本)・委託販売(取次・書店)を基本とする。
出版流通の基本は、「再販制+委託制+共販店」で成り立っている。
・日本の取次機構が雑誌の配本を中心に発達し、大量の雑誌配本と新刊書の配本を全国一斉に「一定マージン(通常8%)」で送ることのできる「世界に類を見ない配送システム」であることは良く知られているが、その一方で、「一冊一冊の客注品」の対応には向かず、読者から見れば「欲しい本が手に入らない」「客注品が遅い」が出版流通の二大不満にさえなっている。
・文藝春秋を育てあげた池島信平氏は、次のような編集者の六箇条を残してくれている。
一、編集者は企画を立てなければならない。
二、編集者は原稿をとらなければならない。
三、編集者は文章を書かなければならない。
四、編集者は校正をする。
五、編集者は座談会を司会しなければならない。
六、編集者は広告を作成しなければならない。
●書籍「出版の近未来」より
下村 昭夫 著
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