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書籍「しかけのあるブックデザイン」より

このページは、書籍「しかけのあるブックデザイン(グラフィック社編集部 編集)」から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・あやし ~怪~
出版社:角川書店/価格:¥1,365/著者:宮部 みゆき/デザイン:片岡忠彦/出版年:2000年/印刷・製本:旭印刷、本間製本/判型:四六判、上製

作品紹介
三日月が箔押しされた表紙を開くと、見返しには長家の風景。続いて薄紙を障子に見立てた扉が現れ、その向こうに男性が座っているように見せるしかけがなされている。ページをめくるたび、江戸の町から物語の展開される一室に読者の視点がクローズアップされていく。


・地球はまるい

出版社:ポプラ社/価格:¥1,995/著者: ガートルード・スタイン=作、落石 八月月=訳、いとう 瞳=絵/デザイン:鈴木誠一デザイン室/出版年:2005年/印刷・製本:凸版印刷/判型:200×200、上製

作品紹介

伝説の作家、ガートルード・スタインが残した、唯一の絵本。言葉をめぐる不思議な冒険の物語を描いた本書の本文は2色刷り。地球はまるい、というタイトルそのままにカバー絵、そして小口には主人公・ローズにちなんだかのようなバラの花を思わせるピンクのグラデーションを施している、美しい1冊。


・建築する身体―人間を超えていくために

出版社:春秋社/価格:1,365円(書籍)、350円(トイレットペーパー)/著者: 荒川 修作、マドリン・ギンズ、河本 英夫 (訳者) /デザイン:荒川 修作、HOLON/出版年:2004年/印刷・製本:凸版印刷/判型:四六倍判、並製、通常のトイレットペーパーサイズ

作品紹介

欧米の知的世界で反響を呼んだ画期的な翻訳本(下)。書籍本体裏の文字は表と逆転している。書籍販売とともに、本書の冒頭部分だけを印刷したトイレットペーパー(2枚重ね)が、トイレットブックと称し販売された。“生き延びるためのトイレットペーパー”というコピーで書店販売されインパクトを残した。


・えんぴつで奥の細道

出版社:ポプラ社/価格:1,470円/著者:大迫 閑歩、伊藤 洋 /デザイン:鈴木誠一デザイン室/出版年:2006年/印刷・製本:図書印刷/判型:B5判、並製

作品紹介

『奥の細道』を深く味わおうと考えられた新しいテキストブック。写経の要領で、鉛筆を使い楷書で書き写していくのだが、直書きやすいよう、横長の造本になっている。ただ書店ではそれだと置いてもらいにくいということで、表紙の見た目は縦長の本という構造になっている。


・『全宇宙誌』は、本全体で宇宙に見立てて多層的な空間性を作り出した、杉浦作品を代表する傑作です。夜空にまたたく星のごとく、全ページ黒地に白抜きの文字を組み、さらに小口を左右にずらすと星座表とアンドロメダ星雲ふたつの異なる図像が浮かび出る。その完成度の高さもさることながら、小口に刷り込むというアイデア自体、杉浦さん以前にここまで本格的に取り組んだ人は、まずいないでしょう。※『全宇宙誌~空前の星書~松岡 正剛 著、工作舎 刊 』


・現在多くの優れたブックデザインを手掛けている鈴木成一さんの出世作といえば、89年に出版された『スカートの下の劇場』。勝因は、やはりカバーに半透明の紙を使ったところでしょう。あけすけ過ぎず、スカートの下がうっすら透けている感じがよく出ている。鈴木さんらしい、うまい紙の選択だと思います。※『スカートの下の劇場(上野 千鶴子 著、河出書房新社 刊)』


・歌舞伎町のミッドナイト・フットボール

出版社:小学館/価格:1,995円/著者:菊地成孔/デザイン:名久井直子/出版年:2004年/印刷・製本:文唱堂印刷、牧製本印刷/判型:四六判、上製


本を見たときに一瞬「上下に帯が!?」と思ってしまうが、実は本書には単体の帯はなく、カバー用紙の上下を折り返して帯に見立てているしかけ。1枚の大きな紙であるカバー。その中面には荒木経惟氏が撮影した作者のポートレートを印刷しグロスPP加工をしてつるっとした質感に。外面は黒と金で刷りマットニスで仕上げている。こうして一枚の紙の表と裏の質感に変え、それを折ってカバーにすることで、帯としての効果も十分に発揮している。カバーを外すと、表紙はマットな黒地に青と銀をまぜたインキでタイトルが記されている。※『歌舞伎町のミッドナイト・フットボール(菊地 成孔 著、小学館 刊 』


・失はれる物語

出版社:角川書店/価格:1,575円/著者:乙一 /デザイン:帆足英里子/出版年:2003年/印刷・製本:暁印刷、本間製本/判型:四六判、上製

本当に水でタイトル文字はにじんでいるのかと思わせるカバーは、タイトルをこのようにゆがめて印刷し、その上にUVスポットニスを厚塗りするという印刷技術をうまく使った技ありのデザイン。表紙を開くと見返し裏に鏡文字になったタイトルが印刷されているが、これが次ページに挟み込まれた鏡のようなメタリック紙に映ることを計算してのこと。目次は楽譜のようになっており、明度の高い紙にさらなる軽やかなイメージを添えている。カバーははずした裏面や目次にも楽譜が印刷されている。


・おしゃれとセンスはゲイに学べ。

出版社:角川書店/価格:1,995円/著者:新宿二丁目のほがらかな人々/デザイン:リリー・フランキー/出版年:2003年/印刷・製本:旭印刷、鈴木製本所/判型:四六判、並製

「ほぼ日刊イトイ新聞」人気コンテンツの単行本化。“オトコたちの街”新宿二丁目のバーで、旅行、ダイエット、恋愛などについて語る。カバーの表紙には濃いヒゲ、裏面にはすね毛が。透明なフィルムが使われたカバーをとると女性に変身。男なの?女なの?という雰囲気たっぷりのデザインに。


・KKKベストセラー

出版社:朝日新聞社/価格:1,890円/著者:中原昌也/デザイン:柳沼博雅(ガーソウ)/出版年:2006年/印刷・製本:大日本印刷/判型:四六判、上製

作品紹介

書店店頭でパッと目立つ真っ白なカバー。タイトルはどこだ?と近づいてみると、そこには印刷ではなく空押しだけで表現されたタイトルが。熱をかけて空押しすると、紙が半透明な質感に変わるOKフロートという紙を使用し、シンプルながら非常に目立つ1冊に仕上げっている。


・UVニス
本来はUV(Ultra Violet=紫外線)を照射することで硬化するニスのこと。しかし最近ではUVスポットニスの厚塗りのことを指す場合も多い。これは同じくUV照射で固まるニスを、ある部分だけ、スクリーン印刷で厚塗り印刷したもののこと。書籍のカバーに、タイトル文字などが透明のニスでボコッと盛り上げっているのを見たことがあると思うが、それのこと。


・エンボス加工
エンボス(emboss)とは紙に文字や絵柄などを浮き彫りにする加工のことで、紙を雄型(凹)と雌型(凸)との間にはさみ、圧を加えて文字や絵柄を浮き上がらせる。反対にへこませる加工のことは空押し、またはデボス(deboss)加工という。


・トレーシングペーパー
元々は透かして複写するために用いられていた、薄い半透明の紙のこと。トレペと略すことも多い。書籍のカバーなどに、その透け感を活かして使われる場合も多い。バラフィン紙、グラシン紙、硫酸紙なども同じような半透明の紙で、昔はよく書籍を包むカバーにも使われた。


・ブックデザインはただ見栄えが美しかったり、面白いしかけがあったりしても、内容と合っていないものであれば、それはあまり意味が無いものではないかと思っています。カバーに、表紙に、本文に、綴じ糸に、いろいろな部分にその本に合ったアイデア溢れるしかけが施された本。      
     
             
●書籍「しかけのあるブックデザイン」より
グラフィック社編集部 編集
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