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松本 昇平 氏より(書籍『出版販売用語の始まり』より)

このページは、書籍『出版販売用語の始まり(松本 昇平 著)』から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・委託

「委託」という用語をいまは新刊、長期などにいとも軽々しく乱用しているが、明治、大正の買切注文時代には避けて通るように嫌っていた。注文した本は買切って責任を以て売るものと頑なな融通の利かない根性で叩きあげられてきた書店人は、万一残本となっても返品という安易は手段以前に自腹を切って割賦販売でその責任を果たしていたのである。


・売切買切制

少なくても書籍に限定して見るとき売切買切制は出版販売本来の姿で、この制度を無視しては責任の所在が乱れてしまったのであろうと思う。


・大手五社

明治の大手出版元五社は、日本橋を中心にあった。まず書籍雑誌共に王国を誇っていた「博文館」、徳富蘇峰の「民友社」、文学の「春陽堂」「新潮社」に加えて「実業之日本社」を挙げる人が多かったようだ。


・買切委託

「買切委託」の用語は「委託」という低姿勢な態度を見せながら買切らせる大取次の巧みな商魂と受け取られる。


・外売

「外売」とlは外交販売の略語である。古くは小売書店にこの用語はほとんどなかったようだ。


・腰巻

書籍の内容の一部を紹介する目的で表紙の下の部分に帯状に巻いた紙。明治三十三年、民友社が『自然と人生』につけたのが元祖である。(中略)そのほとんどが白帯で、あくどい色を使うことは本の品位を傷つけるため避けていたようだ。


・分割売り

本の分割売りは古い販売記録にもあった。明治二十六年に割引予約の名で一冊五十銭、十冊四円六十銭、全巻五十冊二十円というのが分割売りの元祖と見る。


・ラムネ

本の分割払い、つまり月賦(ゲップ)払いのことを言った。起源は明治で、博文館の大物全集「帝国文庫」が明治二十六年三月から毎月二冊ずつ配本を開始したとき、全五十巻、一冊売価五十銭のものを一時払いなら二十円と発表したときに、出版に初めて分割払いが行われた。


・廉価版

定価の安い本のことを言った。


●書籍『出版販売用語の始まり』より
松本 昇平 著
ビーエヌエヌ (1992年3月初版)
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