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[ 出版社について ]

作家、森村誠一さんが見る編集者 11タイプ

作家や著者を影で支える編集者。編集者は助産師に例えられる職種でもあります。では、その編集者にはどのようなタイプの人がいるのでしょうか。作家、森村誠一さんが見る編集者の11タイプを書籍『作家とは何か(角川グループパブリッシング刊)』より学んでみたいと思います。
 

----- 書籍『作家とは何か(森村 誠一 著)』 ----------------------------

① 偏従者型

いまをときめく流行作家や巨匠の編集者に多い。作品を絶対にけなさない。とにかく担当作家をおだて上げ、出版社ではなく、その作家に仕えたかのように減私奉公して、売れる原稿を捥ぎ取っていく。
 
 
② 芸者型

一型の変型であるが、特に酒場、カラオケ、ゴルフ、旅行と遊びのつき合いがよい。最近、このタイプの出版社の接待費が厳しくなって激減している。
 
 
③ プロデューサー型

作品中心主義。内容が気に食わなければ、どんな巨匠・大家にもクレームをつける。それだけ作品を見る目は高いが、大家や流行作家からは敬遠される。また市場中心主義にもっている現場からは次第に遠ざけられる。
 
 
④ 軍師型

作品の評価眼も確かではあるが、作家の隠れた才能も引き出す。単なる作品中心ではなく、その洛陽の紙価を高めるために最大限の戦略を展開する。作家にとってはまことに頼もしい軍師であるが、特定作家に肩入れしすぎて、他の作家から疎んじられやすい。
 
 
⑤ 書誌学者型

とにかく博学である。故事来歴、出典、文法、諺、歴史等に通じ、作家に成り代わり誤字、誤文、矛盾、時代考証等をすべてチェックしてくれる。作家にとってまことに有り難いぞんざいであるが、うるさがる作家も少なくない。
 
 
⑥ 時代錯誤型

作家と一心同体にならなければよい作品は生まれないと信じている。電話やメールですむような用件でも、いちいち足を運んで来る。作品の内容についても細かく作家と討議したがる。今日ではほとんど絶滅している。古きよき時代の編集者にはこのタイプが多かった。
 
 
⑦ 作家予備軍型

最初から作家を志していて出版社に入社した者と、作家を担当している間に自ら作家に転向した者、また定年後作家になった者の三タイプがある。老舗出版社や新聞社に多い。
 
 
⑧ 大編集者型

業界で名前が通っている編集者。たいてい文芸誌や月刊誌、週刊誌の編集長を経由して、多数の作家を育成し、文壇に広い人脈を擁し、引退後は作家の思い出や文壇のこぼれ話を拾い集めて書く。
 
 
⑨ サラリーマン型

べつに編集者になりたくてなったわけではない。就職活動の一環として入社試験を受けたら合格して編集者になった。およそ小説などには興味なかった者が、作家の担当となってやむを得ず読んでいるが、全然面白さを感じない。社命でただ担当になっただけである。こんな編集者に担当された作家の市場は痩せていく一方である。大手出版社に多い。
 
 
⑩ 天職型

文芸編集者以外になに者にもなりたくなくて編集者になったタイプ。サラリーマン型の正反対で、とにかく小説が好きでたまらない。編集者という仕事に情熱を燃やしており、作家予備軍のような野心はない。軍師型と複合するところがあるが、特定の作家の偏ることなく、視野が広い。現場が大好きで、昇進して管理職につけられることを嫌う。このような編集者に担当された作家は幸福である。
 
 
⑪ 渡り鳥型

異動の激しい出版社に多いタイプ。作家は編集者と二人三脚で作品を書くようなところがある。一人で作品に向かい合うのはかなり意思の力を求められる。作家は独楽(こま)のように、常にはたきをかけられていないと自動的に運休する傾向がある。
ともすれば怠けようとする作家を叱咤し、励まし、あるいはおだてて書かせるが編集者である。編集者の息が合わないと、途端に筆が重くなる。多年にわたった担当編集者が交替して書けなくなる作家も少なくない。
文芸の編集者はハウツーものや、趣味本の担当編集者と異なり、本領を発揮するにはある程度の期間が必要である。これがくるくる渡り鳥のように異動しては、作家と編集者の呼吸が合わない。


●書籍『作家とは何か~小説道場・総論』より
森村 誠一 著
角川グループパブリッシング (2009年4月初版)
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