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出版社や著者がインターネットで書籍の全文を無料公開する動きが増えています。2010年3月6日朝日新聞夕刊によると、米国誌の編集長、クリス・アンダーソン氏が書いた『フリー』(日本放送出版協会 刊)や角川グルーフホールディングス代表取締役会長の角川歴彦氏の『クラウド時代と<クール革命>』(角川書店 刊)、岩瀬大輔氏の『生命保険のカラクリ』(文藝春秋 刊)など。
無料で公開することで、本が売れなくなるのでないかと懸念があります。一方で、
無料の公開をきっかけに書籍が注目され、本の売り上げにつながっています。
とりわけ、クリス・アンダーソン氏が書いた『フリー』(日本放送出版協会 刊)は2009年11月発売前に先着1万人に全編無料公開をしたところ、43時間に1万人が殺到しました。
その後、ブロガーなど評判を呼び発売前から増刷が決まっています。要するに、インターネットの無料公開をテコに話題を作ったということです。
また、気になるひとつは大手の出版社がネットで全文無料公開を始めたということ。日本放送出版協会をはじめ、角川書店、文藝春秋です。歴史や知名度もある出版社が無料公開に踏み切っています。
とはいえ、これらネットでの無料公開は最近はじまったわけではありません。2005年12月26日にポット出版が『同性愛入門』を全文PDFで無料公開しています。この書籍は、同性愛初心者の入門書として2003年3月18日に刊行されたものです。
「同性愛者はインターネットで情報を得ようとする動きが強いことから公開に踏み切った」というのは同社代表、沢辺均氏。気になる販売への影響はというと、
「時事性のつよいものではありますが、これまで、販売冊数へのマイナスの影響はみられません。因果関係はわかりませんが、むしろ、10-20%のあいだで、増加していると思います。」
※書籍『出版と自由』(長岡 義幸 著)とポット出版のサイトより
沢辺均氏はこの試みを「2つの実験」だと言っています。
1、インターネット(無料の情報)と出版物(有料の情報)との関係や、共存の道を探る一つ、として。
2、この公開と販売がどういう影響を及ぼすのかをはかるものとして。
同社が無料公開するのは、『同性愛入門』が初めてではなく図書館とメディアの『ず・ぼん』のバックナンバーも以前から全文公開しています。無料公開によって紙版のバックナンバーに対する注文は増えているという。※書籍『本の現場から』(永江 朗 著)より
ネットで全文無料公開することで必ず本の売り上げに結びつくわけではないでしょうが、今後も増えていく取り組みになるのではないでしょうか。
※書籍 『出版と自由』 (長岡 義幸 著、出版メディアパル 刊、2009年3月初版)
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※書籍 『本の現場』 (永江 朗 著、ポット出版 刊、2009年7月初版)
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