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寄稿:出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏
2010年3月決算期で過去最多の新刊・重版が刊行されたことが話題になっている。本が売れないので出版社は点数を増やして取次の入金を期待するが、書店の売場には限界があり、当然店頭に陳列されずに返品されるという悪循環が起きている。
他にも返品増加の要因は有るが1982年書籍出版協会の返品減少対策マニュアル作成過程で取次協会から提出された返品増加の要因で出版社の部分を一部抜粋すると。
1) 過剰生産・市場分析不足
2) 類似品企画の競合
3) 過剰納品→長期委託・延勘セット
4) 取次への搬入日集中
5) 常備品と重版品の重複送品・常備品の過剰出荷
6) 重版品の押し付け
7) 常備内容の画一化
8) 販促・受注の書店との馴れ合い
9) 取次ルートの乱用
10) 宣伝不足
1) 書店数減少による展示面積不足→書籍を陳列できる書店は10,000店になった
2) 複合書店増加による店内の陳列シェア低下
3) 大型書店への新刊集中による出版物の短命化
4) 出版社による指定ランク配本の無駄
5) 取次の見計らい配本の未熟さ
6) 常備品や基本図書の回転率の悪化
7) 長期・延勘・フェアセットの無駄なバラマキ
8) 書店のポスレジによる無差別自動発注
9) 出版社営業と書店の馴れ合い発注
10) 自費出版物の流通増
11) 各々の決算による新刊・重版の集中
12) 委託制度弊害の顕在化
2009年度の返品率は40.6%となった。この数字は出版社の規模で率に違いは有るが出版社と取次は運送費・再出荷の美装費用・廃棄費用などを負担している。大竹元昭和図書社長よると返品で起きる損失額を年間1,760億円と試算する。
返品を減らす為に出版社・取次とも対策を立ててはいるが、いずれも一過性で委託制度下では、返品減少対策に王道は何も無いといわれている。日本の出版業の根幹を成す委託販売制度と再販売価格維持制度が返品率高止まりを許しているならば資源・環境問題の悪玉として、まもなく世間から批判を浴びることは必至と見るが、書籍出版業界に自己改革能力は無いと見ている。
寄稿:出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏
▼参考:社団法人日本書籍出版協会が発行する
「出版社・取次会社のための書籍返品減少対策マニュアル」(1982年1月)はこちら
http://www.jbpa.or.jp/nenshi/pdf/0102.pdf
※日本書籍出版協会のサイトへリンクします。
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