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寄稿:出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏
取次大手3社の決算が発表された。その結果は売上高・営業利益・経常利益が数字の差はあるが3社とも前年割れを起こしている。売上高の内訳を見ても書籍の落ち込みが年々厳しくなり1996年をピークにハリーポッター発売年を除いて全て前年をクリアしていないのは周知の事実である。
書籍の返品率も06年から上昇が開始され08年・09年は40%を超えてきている。このことは委託制度の弊害が顕在化した結果で小手先の対策を打っても一時的には改善するが継続的な対策ではないと思われる。1994年までは30%台前半で推移していたが96年の消費税増税から返品率の悪化が見て取れる。
書店数も2000年21,664店から14,059店と7,600店舗も減少している実態を見ると今後も毎年1,000店舗近い転廃業が予想される。更に取次の雑誌販売額の35%近いCVSの雑誌販売額が少子化・生産性年齢人口の減少で回復できていないことから、取次の売上は今後とも回復する見込みが無く、売上確保の中心は新規出店と帳合変更であるので、取次同士のサバイバル競争に突入すると見る。
取次経由の出版物流通ルートは書店を中心としてスーパー・CVS・図書館が主流であったが、その後取次の努力で新たにネット書店・家電量販店・鉄道会社・ガソリンスタンド・プロパンガス販売・ホームセンター・中古商品販売・レンタルコミック店・喫茶店経営と多種多様な書店経営企業が現れて従来の書店企業から様変わりしてきたと同時に書店経営の方法も変化しているのである。その売上は取次の主流になりつつあり無視は出来ない状況になってきた。
少子化・生産性年齢人口の減少から売上の伸びはほとんど期待できない状況で、取次は返品コストの減額をあらゆる手段を使ってでも実施してくると思われ、これについて行けない出版社・書店がいるのも事実であり、右肩上がりの成長が望めない現在、どのようにしてソフトランディングしていけるかが注目される。
過去10年以上がそうであったように日本人の加齢を考慮に入れて出版社・取次・書店各々が適切な対策を取らない限り、景気が回復しようと不景気に戻ろうとも需給ギャップは縮むことは無く3者とも売上確保が厳しくなっていく事の認識があまりにも気薄である。
日販 金額 |
日販 伸び率 |
トーハン 金額 |
トーハン 伸び率 |
大阪屋 金額 |
大阪屋 伸び率 |
|
売上高 |
613,048 |
▲3.1 % |
547,236 |
▲4.8 % |
125,739 |
▲1.9 % |
営業利益 |
68,501 |
▲1.2 % |
6,199 |
▲22.7 % |
578 |
▲20.4 % |
経常利益 |
3,076 |
▲14.0 % |
2,144 |
▲47.9 % |
233 |
▲4.3 % |
純利益 |
1,370 |
21.3 % |
1,078 |
5.5 % |
127 |
- |
※単位:億円
※寄稿:出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏より
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