このページは、書籍『(岩根 ふみ子 著)』から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・不思議なことに、たいがいどの年も予約が三十五冊くらい上がった頃に購読予約数の伸びが止まる。
・企画商品の販売促進期間が始まると、近ごろはファクシミリで毎日のように全国の本屋の販売数を上位順に書き出した速報が送られてくる。(中略)出版社から直接送られてくるものもあれば、取次の支社単位で集計表をつくって送られてくる場合もある。相撲の番付と同じで、これだけでも気力を駆り立てられる大きな刺激になる。
・仙台の興文堂の菅原正敏さん。いろんな出版社の販売コンクールの催しでよく顔を合わせ、知己を得た方である。
・職域での販売で気を使うのは、誰がその部屋でいちばん偉いか、察しをつけることである。机の配置、窓やコピー機、応接セットの位置など、事務所に入ったら一瞬にしてレイアウトから役職者の椅子を割り出す。
・店頭で、一年間をかけて十冊しか売れかなったものが、「いかがですか?」と一言添えればその何十倍の四百冊も売れるという結果が出た。外商に対する考え方が変わったのはいうまでもない。
・販売先が限られているではないか、学校か図書館、役場、公民館・・・・・・。小・中学校の図書館の年間予算なんてこの本を三、四冊買ったらおしまいになるほど少ない。
・本屋は読者に二度勧める
・発売日までに予想外に百六十六冊の予約があがっていた。その九割が学校や図書館、役場ではない個人のお客さんだった。
・配達だけが出会いをつくるチャンスではない。私は、買い物は町にある店ですべて済ませる。(中略)買い物も出会いのチャンス。町にある商店の人たちに本を買ってもらいたければ、こちらもその店の商品を買わなければ。(中略)この町にはガソリンスタンドが数軒ある。車は夫、長男、私のそれぞれ配達に使っているので三台あるが、みんな別のスタンドに行くようにしている。一つのスタンドで六万円分のガソリンを入れるよりも、三つのスタンドで二万円ずつ入れた方が、それぞれうちの店で本を買っていただけるかもしれない。美容院も数軒あるので店を決めずに毎回、あっちの店、こっちの店と顔を出している。
・「この企画商品を何冊以上販売すれば、その書店様をどこそこの温泉旅行にお招ききたします」こういう楽しいイベントがついているなんて、同じ数を売るにも張り切り方が違ってくるのは当然。(中略)イベントに参加すれば気晴らしになるし、同じようにがんばって売った本屋さんと話ができる。初めて会った人でも共通の話があり、参考になる内容ばかりだから刺激にもなる。
・三人で2千軒を回る。そのうち、私の担当は一般家庭で約五百軒、そのほかに職域と高校が一校である。
・とりわけ印象も強烈で、滋賀県の担当を離れても今なお交流が続いている人の一人に、講談社の石川正昭さんがいる。
・今度の企画は仏像中心の美術書のため、掲載される予定の美術品を訪ねて奈良の古寺を一台のバスで回り、みんな一緒に見学するという。監修の大学教授も同行し、仏像やお寺の歴史的な説明、学術的な解釈を拝聴して理解を深めてもらおうというものである。どこかの会議室を会場にして壇上の説明者の話を一方的に聞かさせるだけの説明会よりはよっぽど気が利いている。
・「今までの美術全集の編集のときには開けられたことのない扉なんだって。残念なことにもう当分開かれないって言ってたよ。だからこの本でしか見られないんだって」
販売研修でも、本の舞台である現地でそういう裏話を聞くのと、どこかのホテルの説明会場で聞くのとでは心に入ってくるものが全然違う。
・小学館の大山邦興さんもだいぶ前に滋賀県の担当だったのに、今もいわね書店を気にかけてくれ、励ましてくれる人の一人だ。とりわけ美術と音楽に造詣が深い。
●書籍『本屋です、まいど』より
岩根 ふみ子 著
平凡社 (1992年3月初版)
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