このページは、書籍『悪文の構造(千早 耿一郎 著)』から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・言葉には二つの働きがある。第一は、事実や意思を伝達する働き。たとえば、「太陽は東からのぼる」「明日伺います」などは、事実あるいは意思を伝達する。(中略)
第二は、感情を表わす働き。あるいは、相手の感性に訴える働き、といってもよい。「あなたは太陽だ」「あいつはブタだ」などは、その例である。
・「分かる」ことには、三つの段階が考えられる。
第一は、書かれている事実が分かる、ということ。ここでは、「伝達の働き」が機能する。
第二は、作者の意図したことが分かる、ということ。この段階では、「伝達の働き」も機能するが、これが重なって「感化の働き」が機能しなければならないこともある。
第三は、作者の意図しなかったもの------だが潜在意識において意図したもの------が分かる、ということである。
・文とはなにか。時枝誠記著『日本文法・口語偏』では、「文の性質を規定するもの」として、次の三つをあげている。(中略)
(1)具体的な思想の表現であること。(中略)
(2)統一性があること。(中略)
文に統一性を与えるものは、次の三つがある。
①用言に伴う陳述。(例)川が流れる
②助動詞による陳述。(例)波が静か だ
③助詞による陳述。(例)また 雨 か
(3)簡潔性があること。
・文章というものは、うっかりするとひとりよがりになりやすい。だから、冷却期間を置き、書いたものを一度客観の底に突き落として、冷静に眺めるとよい。
・主語がなくても、文は成立する。これは日本語の長所である、といってよい。だが------主語がなくてもすむゆえに、ついうっかり主格の存在を忘れてしまう。あるいは、自分の頭のなかに主語ができているけれど、つい表現することを忘れて、読者に混乱を起こさせる。そういうことになりかねない、という欠点もある。
・「ところが」は、逆接の接続詞。
・「が」を濫用するな
・「が」はくせもの
・清水幾太郎は、『論文の書き方』のなかで、接続の助詞「が」に少なくても三つの用途がある、と書いている。
(A)「しかし」「けれども」「にも拘らず」の意味で使われるもの(反対の関係)。~(例)「勉強したが落第した。」
(B)「それゆえ」「それから」の意味で使われるもの(因果関係)。~(例)「勉強したが及第した。」
(C)「そして」という程度の、ただ二つの句を繋ぐだけの、無色透明の使い方(漠然たる関係)。(中略)「曖昧模糊たる関係」と言ってもよい。
(※参考:曖昧模糊(あいまいもこ)とは、物事の本質や実体が、ぼんやりして何かはっきりしない様子のこと。 )
・文中に「が」が出てくると、読者は、そのあと、前の句に対する反対の叙述があるであろうと。という期待を持って読み進める。
●書籍『悪文の構造~機能的な文章とは』より
千早 耿一郎 著
木耳社 (1979年11月初版)
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