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出版社の売上不振と返品率高止まりの発言が出版関係者間に多くなってきた。これ以上新刊を作ることは出来ないとか、作っても売れないので印刷代・製本代が支払えないなど一部の出版社から悲鳴にも似た声も聞こえてくる。
しかし全ての出版社ではなく“取次依存型・既得権益型の出版社のみが苦労している”のであって前年比をクリアしている出版社は多数存在しているのも事実である。
取次は返品率削減の為、新刊仕入部数の判断を過去の販売・返品の実績のみで仕入部数を絞ってくるので出版社は想定した初版部数を書店に投入できないことになるが、出版社も取次もマーケティングをしているわけでもなく、その部数を市場が要求している部数かは誰にも分からない。
又、大手チェーン店も返品率減少の為、特定出版社の新刊配本中止要請もあると聞くがこれも取次の仕入部数減数の原因にもなっている。
初版部数を書店に投入できない出版社は書店から新刊の事前注文を集め、取次に指定配本を要請するも中身の無い無駄な指定配本も多く取次の不信感もある。
取次に減数されると出版社は6ヵ月後の資金繰り対策も含め支払サイトの短い注文取りに書店を走り回るが、現在は書店も1ヵ月後の全額支払いを睨んで売れるかどうか分からない商品は、注文部数を抑え気味にしているし、返品率高止まりの原因にもなっているPOSによる補充注文自動発注を止めているチェーン店もある。
取次は新刊納入金額の何割かを前金で受け取る内払制度についても老舗出版社に対しその見直しを迫っているようだが金融出版を続けている出版社はその経営が更に厳しくなって来ると思われる。
以上が出版流通の三者三様の現状である、委託制度の合理性の限界が顕在化したという認識を少しは持っているようだが出版物の流通の内、取次経由は全体の6割で残り4割は出版社から何らかのルートで直接読者に届けられていることを考えると出版社に取次依存型が多いことが理解できるが、その売り上げが5対5の出版社も多く見受けられる。
今後、出版流通の活性化は、欠如している出版社のマーケティングの実施と、取次の的確な商品流通とスピードアップ、書店のPOSデータに頼らない商品選定能力の向上が必要となってくるだろうが委託制にどっぷりと浸かった三者の自己改革が出来るとは思えない。
寄稿:出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏
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