このページは、書籍『作家への道~イギリスの小説出版(清水 一嘉 著)』から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・イギリスでは、この三万五千点余の出版物のうち、約半数が海外市場に流れ、その残りの半数以上が公共図書館をはじめとする各種図書館に買い取られている。(中略)要するに、イギリスではこれら二つの市場が圧倒的な比重を占め、市中の書店で売れる本の数はほとんどとるに足らないものだということができる。
・イギリスでは図書館の数そのものが多い。国民に一番なじみの深い公共図書館だけをとっても、その数約一万、わが国の約千というのとではくらべものにならない。国土面積がほぼ同じ(人口はわが国の半分)というイギリスに、一万もの公共図書館があるということは、いったい何を意味しているか。
・本を買わないイギリス人にも二つだけの例外がある。一つはホリデー用、一つはクリスマスのプレゼント用に本を買うことである。
・暇つぶしのための本を携行する。しかし、この場合の本は手軽なペイパーブックというのがふつうであろう。それに対して、クリスマス・シーズンに買う本はプレゼントという性格からして、ハードカバーがほとんどで、時に高価な豪華本であったりする。
・もともとイギリス人は本を買わない国民だといわれる。そしてかれら自身その汚名に甘んじているふしさえある。なぜ買わないか。それを一ことでいうならば、世界有数ともいえる公共図書館の充実ぶりにつきるだろう。
・かれらがどれほど本を買わないかは、他の国とくらべてみればよくわかる。アメリカでは、一人年間平均十四冊を買うのに対して図書館から借りるのは十三冊、西ドイツでは七冊に対して五冊、これがイギリスでは四冊に対して三十八冊である。図書館の利用状況は、国民の三分の一が公共図書館に登録し、年間の貸出し冊数は六億という数字を見てもわかるだろう。この六億冊のうち、四分の三は小説であるといわれる。
●書籍『作家への道~イギリスの小説出版』より
清水 一嘉 著
日本エディタースクール出版部 (1980年4月初版)
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