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[ 出版業界について ]

出版物における販売概況の解説  (寄稿:冬狐洞隆也氏)

1990年から2010年までの取次経由における本の販売額と2014年の予想値をご紹介したい。
 

書籍
前年比
雑誌
前年比
合計
前年比
1990年
8,660
12,638
21,299
1995年
10,470
20.9
15,429
22.1
25,897
21.6
2000年
9.706
▲7.3
14,261
▲7.6
23,966
▲7.5
2001年
9,456
▲2.6
13,794
▲3.3
23,250
▲3.0
2002年
9,490
0.4
13,616
▲1.3
23,105
▲0.6
2003年
9,056
▲4.6
13,222
▲2.9
22,278
▲3.6
2004年
9,429
4.1
12,998
▲1.7
22,428
0.7
2005年
9,197
▲2.5
12,767
▲1.8
21,964
▲2.1
2006年
9,326
1.4
12,200
▲4.4
21,525
▲2.0
2007年
9,026
▲3.2
11,827
▲3.1
20,853
▲3.1
2008年
8,878
▲1.6
11,299
▲4.5
20,177
▲3.2
2009年
8,792
▲4.4
10,864
▲3.9
19,356
▲4.1
2010年
8,213
▲3.3
10,535
▲3.0
18,748
▲3.1
2011年
2012年
2013年
2014年
6,700
▲18.4
8,200
▲22.2
14,900
▲20.5

※億円
※出版科学研究所資料
※取次経由の販売額
※2014年は矢野経済研究所の予測

(1)2010年出版物の販売額は1986年の販売額に戻ってしまった。販売額のピークは1996年で書籍10,931億円・雑誌15,633億円・合計26564億円。ピーク時と比較すると2010年は7800億円のマイナスである。


(2)1997年消費税が5%になり出版業界の下り坂が始まった。この年に初めて販売額が前年を割り2004年を除いて13年間前年割れが続いている。新たな消費税増税が囁かれているが実施されると1997年以上の打撃を出版界は受けるだろう。


(3)1998年の出版社数は前年比150社を超える減数となった。消費税の影響も考えられるが安易に出版社設立を考えていたのかもしれない。


(4)国税庁発表によると民間平均給与は1999年から下がり続けている。直近の5年間を比較しても309千円も下がっていることは今後も出版物の売上は期待できない。


(5)2003年CVSの雑誌販売不振が始まりマンガ週刊誌を中心に影響出るが販売額は未だに回復していないのは少子化と所得格差が原因か。


(6)2002年から遇数年の書籍売上が前年比をクリアしているのはハリーポッタの売上が寄与しているだけである。


(7)2006年少子化問題がようやく顕在化したが、この問題は1995年にスタートしているのにその対応の遅さが現在の結果である。


(8)2007年世代間で最大人数を誇る団塊世代の退職がスタートし駅売店の雑誌と新聞販売に影響が出た。この団塊の世代が今まで消費行動の先頭を走ってきたがメーカーは今、趣味の多様化と消費対象人口の選択に悩んでおり明確な答えは出ていない。


(9)2009年社会は需給ギャップ35兆円と騒ぐ、出版物も例外なく過剰供給となった結果が返品率の高止まりである。文庫・新書の多量発行の年でもあったが不安で巣ごもりしている消費者を見せ掛けの低価格という餌でおびき出そうという戦術は正しいとは思えず結果的には失敗していることを理解していない出版社が多い。


(10)新刊書店・中古本・バーゲンブック・ネット書店・古書店・図書館と読者の出版物入手方法は多様・簡単となった。特に、2009年以降新刊書店の中古本並列販売が拡大し、読者にとっては利便性が大きくなった


(11)2010年矢野経済研究所は2014年の販売概況を予測。2010年比で書籍▲1513億円、雑誌▲2335億円合計▲3848億円と予測したがこの数字は電子書籍を考慮に入れていない。消費人口減少と急速な少子高齢化に対し出版社数・書店数は現状のまま続くとは思えず強制的な自然淘汰が始まるだろう。


(12)出版社の取次依存型経営は、今後とも厳しくなり当然ながら事業規模の縮小とリストラの選択肢はあるが、まず企業が考えることは、やるべきことを点検し、組織の最低生存ラインを確保することが企業の継続の大前提では無いかと思われる。矢野経済研究所の過去の予測が当たっているので2014年に出版業界がどうなっているかシュミレーションしてみたが結果については機会があれば提供したい。

寄稿:出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏