このページは、書籍『私の体験的ノンフィクション術』(佐野 眞一 著)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・インターネットの発達で、われわれは地球の裏側の情報さえ瞬時に得ることができる。そのことによる恩恵を否定はしないが、取材は情報にどれだけ早くアクセスできるかを争うゲームではない。
・宮元の取材方法はいつもこうだった。話し手の前に突然ノートを開けては、相手は絶対に本当のことをしゃべってくれない。長年の旅の経験で宮元はそのことを骨の髄まで知っていた。
・相手のある取材で最も重要なことは、相手に話の流れをつくらせることである。(中略)相手の話を引き出すという行為は、いうなれば、川下りの船頭の操作に似ている。基本的には相手の流れにまかせ、ポイントに差しかかったところで、棹(さお)を入れてコントールする。
・職業別電話帳や業界団体名簿、専門新聞協会などを渉猟(しょうりょう)していくと、日本には実に三千五百あまりの業界紙が存在していることがわかってくる。(中略)
ノコギリ業界の動向について知りたければ「日本刃物工具新聞」を開けば一目瞭然だし、イカのくん製については「北海商法」に詳しい。ラッキョウの市況動向については「漬物新報」が冷静にウォッチしているし、鬼瓦に関しては「日本屋根経済新聞」が他紙の追随を許さない。キャバレー、クラブなどの水商売関係は「料飲社交タイムズ」の独断場だし、地下足袋については「シューズタイムス」の牙城である。
・大宅文庫でなによりもありがたいのは、件名別索引、人名別索引が完備していることである。(中略)
しかし、大宅文庫は雑誌中心のライブラリーなので、それだけではどうしても信頼性に欠けるきらいがある。(中略)
大宅文庫は存在はたしかに有益だが、私は情報の「あたり」をつけるライブラリーと考えており、大宅文庫で検索した記事をそのまま引用することがほとんどない。
・本はきわめて効き目の遅い、しかし一度効いたら激烈な影響を読者に与える「暴力的」なメディアである。
●書籍『私の体験的ノンフィクション術』より
佐野 眞一 著
集英社 (2001年11月初版)
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