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石黒 圭 氏 書籍『日本語てにをはルール』より

このページは、書籍『日本語てにをはルール』(石黒 圭 著)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・「まことが疲れていたので木陰で一休みすることにした」
「おさむが道に倒れて叫んでいる人を助け起こした」

たとえば、二つの文は、どこがおかしいか、すぐにわかりますか。遠くの述語を修飾する「は」の性格を活用し、「まことは」「おさむは」とすれば、この二つの主語が文末にかかることがはっきりし、分かりやすい文章になります。


・日本語とは「は」と「が」という助詞の小さな違い、ちょっとしたことを理解するだけで、読者にやさしい文が書けるようになるのです。


・前の文の話題をスムーズに受け継ぎたいときは「は」を使うと覚えておくとよいでしょう。


・日本語の語順ですが、基本的な語順というものはあります。その典型的なものは、次のような語順でしょう。

1 「時」を表す語句
2 「場所」を表す語句 (で格)
3 「主格」を表す語句 (が格)
4 「相手」を表す語句 (に格)
5 「対象」を表す語句 (を格)
6 動詞 (述語)

つまり、「いつ どこで だれが だれに なにを した」の語順です。一般に、このような基本的な語順に沿った文のほうが、読みやすいと感じられます。


・「受注を受けていたことが」(中略)

「受注」の中に「受」があるわけですから、繰り返す必要はありません。「受注する」が正解です。このように、似た意味を重ねて使うことを「重言」といいます。


・「生のジャズライブ」

ここには、意味が似ている表現が二つ繰り返して使われています。「ライブ」は、もともと英語で「生放送」「生演奏」などという意味の外来語ですから、「生の」という言葉と意味が重なっているのです。


・「相変わらず」も「いまだに」も「以前と同じ状態が続いている」ことを表します。(中略)「いまだに」はもともと「以前の状態が続いていることが嫌だ」という意味が含んでいるので、悪い意味でしか使えません。「入社してもう三年にもなるのにいまだに学生気分で困る」のように使います。


・くだけた言葉の変換例

 お金 → 費用
 とても → たいへん
 結構 → 大幅に
 上がって → 上昇し
 これから → 今後
 もっと → さらに・一層
 買った → 購入した
 晩ご飯 → 夕食
 しょっちゅう → しばしば
 当たり前 → 当然


・書き言葉で使うとくだけた印象になる話し言葉

 【話し言葉】    【書き言葉】

  してた   →  していた
  食べてる →  食べている
  よくないんじゃないか → よくないのではないか


・しゃべるときの発音をそのまま使えない言葉

 【しゃべるとき】    【書くとき】

  やっぱり   →  やはり
  ばっかり   →  ばかり
  いい     →  よい


・「成人」は、分野によって定義が異なる言葉の一つです。

たとえば、少年法では満二十歳以上の者を「成人」と定義しています。しかし、「成人映画」(現在は「R-18」と呼ばれます)の対象年齢は十八歳以上です。また、薬の用法・用量の説明を見ると「成人(十五歳以上)」と書いてあります。


・一般的に「社員」というと「会社で働く人」つまり職業としての「会社員」という意味で使われます。また、パートやアルバイトの従業員が「社員さん」と呼んだ場合、「正社員」のことを指すのが普通です。ところが、法律用語としては「社団法人の構成員」という意味で使われます。この「構成員」というのは、いわば出資者のことですから、株式会社にとっての株主のような人のをことを指すわけです。


・「早い」は、時刻・時期が手前であること、および、短時間であることを表します。「早起き」「話が早い」などといいますね。「速い」は「足が速い」というように、動作にスピードがあることを表します。


・片仮名は、専門用語・学術用語を書く文字でもあるのです。生物学的に犬をとらえるときは、片仮名がふさわしくなります。


・「歌をうたう」のように、一文中で名詞と動詞とが同じ漢字になるときは、動詞のほうを平仮名で書くとおしゃれである。


・  「 ・ 」と「 、 」で話が違ってくる!?(中略)

問④「手打ちそば・うどん」

このように書かれた看板があります。果たして、この店のうどんは手打ちでしょうか。(中略)


問④解答 うどんも「手打ち」が正解(中略)

そばとうどんの間の「 ・ 」に注目してください。これは、中黒(なかぐろ)や中点(なかてん)と呼ばれる記号です。「 ・ 」は小さい単位を結びますので「手打ちそば・うどん」は「手打ち [そば・うどん]」と解釈されます。一方、「手打ちそば、うどん」のように「 、 」で結ばれると、「手打ち」はそばだけになります。(中略)

中黒「 ・ 」で名詞を並べた場合、飾りの言葉はうしろの名詞にかかっているとみなされる。


・IT時代の文字作法(中略)

問② 改まった文書にふさわしい字体(フォント)はどれでしょうか。

a、明朝体  b、ゴシック体  c、楷書体  d、行書体(中略)


問②解答  a、明朝体(中略)

一般の、改まった文書で用いるのは明朝体です。タイトルや見出しは、強調のためにゴシック体で書く方法もあります。(中略)

一般の文書では、明朝体と、強調のためのゴシック体以外のフォントを使うとくだけた印象になり、人によっては失礼と感じることもあります。


・新聞の記事は「だ・である体」です。では、なぜ新聞では「だ・である体」が使われているのでしょうか。

理由はいくつか考えられます。まず、紙面で使える文字数には制約があることです。決まった分量のなかに、なるべく多くの情報を入れようとすると、「です・ます体」は非効率です。

また、読み手が不特定多数の人であるということも理由の一つに挙げられるでしょう。手紙のように読み手と書き手がはっきりしている場合は、人間関係を意識するので敬語を使う必要性が高くなりますが、新聞の場合、読み手が不特定多数の人であるため、読み手も書き手も「個人」を意識しません。

そして、もう一つの理由は新聞の目的にあるでしょう。新聞の目的は事実を正確に伝えることです。そのためには多くの事実や複雑なデータを、わかりやすく簡潔に伝えなければなりません。

「です・ます体」は読み手に対する丁寧さを表すことができますが、読み手への気遣いの部分が多くなり、ポイントがぼんやりしてしまうという欠点もあります。

そのため、新聞のように、内容の正確な伝達を第一の目的とした文章では、「だ・である体」が使われます。これは、論文なども同様です。


●書籍『日本語てにをはルール』より
石黒 圭 著
すばる舎 (2007年10月初版)
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