このページは、書籍『漢字の字源』(阿辻 哲次 著)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・「親」の本義は「至る」ということであり、「いたせりつくせり」の意味から「両親」を表現する文字となった。
※親とは《木》の上に《立》って子供を《見》ているというのはつくられたもの。
・『人』の『言』うことを『信』じる『者』が、『儲』かるのですよ(中略)このような字形の説明がもちろんでたらめであることはすぐにわかる
・中国の小麦粉加工食品の代表ともいえる饅頭を発明したのは、『三国志』の物語でおなじみの諸葛孔明であったという。(中略)
この川には荒ぶる神がいてしばしば祟りをおこなう(中略)これまで祟りが現れた時には、四十九人の人間の首と黒牛白羊を川に捧げると、風も水も平穏に収まり、そして豊作が続いた(中略)
しかし孔明は、もはや戦乱の過ぎた現在、一人として人間を殺すわけにはいかないとして、人頭の代わりにある食品を作り、それで川の神の怒りを鎮めた。その時に作ったのが「饅頭」だというのである。
・「士」を《十》と《一》とに分解し、「十を推して一に合するを士と為す」という、つまりまちまちな十個のものをひとつに統一させるのが「士」であるというのだ。
・皮ジャンか革ジャンか?(中略)
意味に微細なちがいがあることがあり、このように区別した言い方を「析言」(せきげん)、すべてをひっくるめた言い方を「統言」(とうげん)という、この「析言」と「統言」でのわかりやすい例は、「皮」と「革」である。(中略)
「革」とは獣毛を除去してなめしたものをいう。だからミンクのコートは「皮製品」であり、財布やバッグは「革製品」なのである。(中略)
ある時雑誌を読んでいたら、「皮ジャンでバイクをとばす」という文章に出くわし、私はミンクのハーフコートを着てバイクに乗っている姿を想像して、思わず笑ってしまったことがある。
・「藝」と「芸」は別の字(中略)
「芸」という字が本来は植物の一種を指す漢字であり、中国ではこれまで「藝」の略字として使われることがなかった(中略)中国では「藝」の代わりに「芸」を使うことは絶対にない。(中略)
「芸」(音読みはウン)とは香りのよい草の名前である。(中略)
もう一方の「藝」は本来は「蓺」と書き、「藝」はその異体字である。これはもともと樹木や草を植えることをいい、それから派生して、土に何かを植えるように人間の精神に何かを芽生えさせることを意味した。心の中に豊かに実り、やがて大きな収穫させてくれるものが「藝」であるが、その代表はなんといっても学問である。
・現在の中国では、マージャンのことを「麻雀」と表記するのは主として香港などの南方地域だけであって、大多数の地域ではそのゲームを「麻将」(ma jiang)と書く。そして現在の中国語で「麻雀」と書かば、それは「スズメ」という鳥の名を示すことばとして使われるのが普通である。
・少し前まで他人を侮辱する時などに使われた「アンポンタン」という言い方があった。このことばは、一説によれば中国語の「王八蛋」(ワンパータン、wang ba dan)という罵詈表現が日本語に入ったものとされている。
●書籍『漢字の字源』より
阿辻 哲次 著
講談社 (1994年3月初版)
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