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出版流通の現状を見ると雑誌市場は販売金額で13年連続・販売部数で15年連続して前年割れとなっている。出版業界にとって雑誌に依存して栄華をむさぼった見返りが厳しい現実となったのが現実である。雑誌の流通の上に書籍が乗り60対40の売上構成比が崩れてきている。
雑誌が厳しいのであれば書籍で稼がなければならないが書籍では出版社・取次・書店とも利益を出しにくい構造になっている。
出版流通サイドから見ると近年は大手書店やオンライン書店のシェアが益々高くなっているため、対書店との条件も厳しくなりマージンの逆鞘が増え始めたのは取次の決算書を見れば理解できる。しかもネットや宅配網の整備によって読者と出版社の時間的距離が縮まり流通の速度や精度への要求は強くなり、取次にとって過去の極力在庫を持たずリスクを減らす仕組みが通用しにくくなってきているのである。
本来であれば取次は商品の倉敷料や入庫料が必要なのに条件は昔のままで当然コストが掛かってきているが出版社との条件は自然に変わることが出来ない。委託制度の弊害が顕在化した今、書籍流通全体が昔倒産した鈴木書店と同じ構造にあると感じている人が何人居るだろうか。
デジタル教科書・教材は2015年に3,000億円の予算と言うけれどクラウドコンピュテイング技術のデメリット・リスクが教育委員会・学校の先生方が良く分かっていない。しかも教科書配給会社・教科書の取扱い書店(3,213店)はデジタル化により置きざりにされたままである。
しかも全国の先生方全てとは言わないが電子黒板・電子教科書を扱うことが出来ない状態の先生が大部分であるが、子供たちは生まれながらにしてデジタルに慣れている。このギャップは相当なものである。果たしてデジタル教科書が普及するかは相当の混乱が予想される。
電子書籍は小説を中心にデジタル化されているらしいが、紙媒体で発信されてきたコンテンツ全てが電子書籍に移行するとは限らない。既に採算割れしている電子書籍がゴロゴロと転がっていることは事実である。電子書籍書店が14店も在るのには驚くがいずれプラットフォームも3社から4社に集約されてくるのは時間の問題で今のところ静観の構えが正しいと思われる。
何故なら狭い日本でのデジタル日本語の普及には限界があり英語圏とは違うとの認識と、既にデジタル化している電子書籍の売行きは紙媒体の20分の1との結果も出ているのである。それでもデジタル化したい出版社は出て来るだろうが電子書籍で儲けが出るのは何年先になるだろうか。
出版流通は今後益々厳しい経営になっていくだろう。新刊洪水を止めないと流通は歪み現場は疲弊し書店にプロの書店員がいなくなり本が多すぎて何を読んだら良いのか分からなくなっている。
人口減・少子高齢化による国内消費市場の縮小と過剰供給の温存から、慢性的なデフレ構造に陥ってる出版流通は総花的思考と議論に明け暮れている余裕は全くなく、出版社・取次の配本技術の向上と無駄な受発注の改善が緊急を要するが委託制度にあぐらをかく既得利権構造がある限り簡単には直らないであろう。
寄稿:出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏
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