このページは、書籍『メディアと日本人~変わりゆく日常』(橋元 良明 著)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・すでに江戸時代、日本は藩校や寺子屋教育のおかげで世界でも最も読み書き教育が普及していたと言われる。ザビエルは一五四九年に鹿児島に到着後、ゴアのイエズス会神父宛の手紙で日本人の大部分が読み書きできることに驚嘆し、またロヨラ宛の書簡でも、日本の多くの人たち、とくに武士階級の男女や商人たちは読み書きができると書いている。
・明治一〇年ごろの新聞代は、大新聞で月五十銭、小新聞で月二〇銭であった。当時の大工の一日手間賃が五〇銭(総理府統計局資料、現在二万円程度)であったことからすればけっして安くはなかった。
・世界で最初の“broad-casting”(放送)に成功したのはアメリカのフェッセンデンといわれている。一九〇六年のクリスマス・イヴに自分の無線局から不特定多数を相手にした人声送信に成功した。
・電話の発明
実用的な電話は一八七六年、アメリカのグラハム・ベルが発明した。電話実験の際、希硫酸をズボンにこぼし、助手ワトソンに呼びかけた「ワトソン君、こちらに来てくれたまえ。用がある(中略)」が電話機を通した最初の人声として語り継がれている。
・日本のインターネット利用者は二〇〇九年末の時点で九四〇〇万人に達している。うちブロードバンド回線の利用率は四九%、自宅でパソコンを通して利用する人では八六%に及ぶ(「情報通信白書平成二二年度版」)。
・インターネットの特性
インターネットは人間のメディア発展史上、電話やテレビと同等、あるいはそれ以上に画期的である。なぜなら、まず、文字、音声、静止画、動画という、ヒトがコミュニケーションに駆使している聴覚、視覚的情報をぼぼすべてやりとりできる。それに伴い、新聞、雑誌、電話、映画、ラジオ、テレビといったこれまで人が発展させてきたメディアが提供してきたものと同等の情報が、ほとんどすべて受発信できる。
第二に、インターネットによる情報は一方向的でなく、双方向的に、かつ一対一でも一対多でも自由に授受できる。さらに情報はサーバやパソコンのハードディスクなどに保存できる。
第三に、ラジオ、テレビは公共的情報資源を利用するため、国家等の「制度」から発信の制約を受けるが、インターネットでは原則的にそのような制約を受けず、個人が自由に情報発信できる。
・年々、情報メディア環境は複雑さの程度を増していき、若年層ほど行動パターンが多彩である分、テレビに割く時間の比率が減少するのである。
・二〇〇五年から二〇一〇年にかけては一〇代、二〇代のインターネット利用時間はさほど増加しておらず、少なくとも若年層については、必ずしもネット利用が直接、新聞を読む時間を奪っているわけではない。
・仕事や研究に役立つ情報を得るメディア
インターネット
書籍
テレビ
新聞
雑誌
ラジオ
※上位順
・世の中のできごとや動きについて信頼できる情報を得るメディア
テレビ
新聞
インターネット
ラジオ
書籍
雑誌
※上位順
・調査結果の中で特に注目すべきなのが、一〇代だけがパソコンによるインターネットの利用時間、行為者率とも二〇〇五年から二〇一〇年にかけて減少していることである(一八.二分から一二.八分、二一.九%から一五.四%)。
・出版不況で書籍の販売額が減少しているのは事実であるとしても、「日本人の情報行動調査」からは、世間で「読書離れ」と騒がれるほどには読書時間は減少していないことがうかがわれる。伝統的なマスメディアの中で、書籍は現状のおいて比較的インターネットの影響を受けていないメディアだといえる。
・「読書離れ」は本当か
文部科学省調査から一九九六年から二〇〇八年にかけての公共図書館の貸出冊数、帯出者数の推移をみれば、全体として貸出冊数、帯出者数とも増加傾向にある。児童だけどをみても、貸出冊数は微増である。「公共図書館の貸出数」がそのまま「読書離れ」の指標になるわけではないが、少なくともこのデータをみる限り、日本人に大きな書籍離れが生じているとは考えがたい。
・いつの時代でも新しいメディアが普及しはじめると、必ずと言っていいほどそのメディアに対して批判の声がわき起こる。新しいものに対して拒否反応を示す「ネオフォビア(neophobia)」は、メディアやコミュニケーションに関する技術革新においてとくに顕著だ。
・日本のSNSの最大手のmixiによれば、二〇一〇年一一月現在、同サイトの月間ページビューは携帯からが二五四.四億、パソコンからが五二.三億で、圧倒的に携帯からのアクセスが多い。(中略)
Facebookや韓国のサイワールドが、ほとんどパソコン経由で利用されている状況と日本の状況とでは大きな相違がある。
・わずかばかりの記憶量で他人との優位性を誇る時代は終焉を迎え、今はいかに早く目的とする情報にアクセスできるか、その種の情報を編集できるかが重要な社会的スキルである。
・既存のメディア離れは、中身の問題というより、効率的で低コストの強力な新伝達送路が登場したことと、次々と新たな形態のメディアが登場し、多様なメディアに情報源が分散したことによる。
・ネットは、ありあまる知識を与えてくれる一方で、惜しみなく時間を奪う。
●書籍『メディアと日本人~変わりゆく日常』より
橋元 良明 著
岩波書店 (2011年3月初版)
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