このページは、書籍『書店人のこころ』(福嶋 聡 著)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・本という商品は、一部の例外を覗いて、一度買えばそれで終わりです。一人の顧客が、何度も、場合によっては毎日同じものを買う食料品、日用雑貨との違いがそこにあります。
・「『人文書』とは~の本である」などと統括できる属性も、およそ存在しません。「人文書」の棚をちょっと思い浮かべるだけで、そこに収められた本たちの、それぞれの拠って立つ視座や方法論が、どれだけ多様でバラバラであるかが分かります。
・万人のための究極の棚は、あり得ない。そのことに気づくことが、書店人の使命ともいえる。
・例えば、書評が出た(あるいは出る)という情報をFAXで送ってくれる時があるが、書店サイドで必要なのは、いつの何新聞で取り上げられたという事実なのであり、書評の文面そのものではない。FAXの、それでなくても読みにくい紙面に、細かい文字の新聞のコピーが貼りつけてあったって、読む気は起こらないし、その必要も感じない。
・ここに本の、価格に関する二つの特殊性がある。まず、需要がみこまれれば見込まれるほど、価格が下がるということである(分母が需要予測だから)。これは、多くの経済学の教科書に書かれている法則の逆である。(中略)
もうひとつの問題は、分母があくまでも需要予測であって需要ではない、ということである。本という商品に関しては、特に生活必需品と比べて、この予測が外れやすい。
・「賭博性」は、本を製作・販売する側にだけ成立するわけではなく。それは、読者の側でも、すなわち本を買うという行為においても、成立している。自分がある本を買ったことが正解だったか不正解だったか、その判断は、基本的には、その本を読み通して初めて下せる。
●書籍『書店人のこころ』より
福嶋 聡 著
三一書房 (1997年2月初版)
※amazonで詳細を見る
Copyright (C) 2003-2024 eパートナー All rights reserved.