このページは、書籍『出版産業再生へのシナリオ』(本の学校 著, 編集、唯学書房)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。
・出版業界の数字を見てみると、やはり厳しいのが現状です。総売上でいくと、一九九六年がピークであり、その後、二〇〇七年までの一一年間で、金額ベースで五七一一億円、パーセンテージでは二一・五%も下がっている。
※筑摩書房 菊池明朗氏談
・顧客が書店で雑誌を購入するときに得られるデータは、大きく分けると二つあると思います。一つが、いわゆるPOSデータです。どこで何冊売れたかという販売データです。(中略)
もう一つここでお話したいのが、さらに一歩進んだ、顧客個人の行動分析、購買分析のデータです。ポイントカードなどを使うことによって、個人の方がどういうものを買うようになったか、その商品を買った人は他にどういうものを買ったかといったデータが詳細にとれる時代になっています。
※扶桑社 梶原治樹氏談
・「eBIS」と書いて「エビス」と読ませるPOSシステム兼在庫管理システムが中核にあります。ASPで動いているので、ほぼリアルタイムです。(中略)二番目は「福寿寿」と言いますが、これは外商の売掛管理システムです。三番目が「大黒」と称しているポイントカードシステムを含む顧客管理ステムで、二〇〇六年七月から稼動を始めました。
※今井書店 田江泰彦氏談
・データの分析には大きく分けて二つあります。データ全部を収集・分析する全数調査と一部をピックアップして予測する標本調査です。
※扶桑社 梶原治樹氏談
・POSデータというのは過去に売れたもののデータであって、これから売れるものではないのです。POSデータを重視すぎると、どんどん縮小再生産になる。(中略)過去のデータを生かすというスタンスに立たないと、二年、三年したら雑誌がどんどんためになっていく。
※マガジンハウス 久我英二氏談
・「みすず書房の初版部数はどれくらいですか」と聞かれることがあります。二〇年ぐらい前は、「三〇〇〇部程度です」と答えていました。それが現在では、初版の平均は二〇〇〇部程度です。結果としては価格が上がる。
※みずず書房 持谷寿夫氏談
・専門出版社の経営は、既刊書の売上で支えて、新刊書の売上で伸ばす。これが安定のさせ方です。
※みずず書房 持谷寿夫氏談
・新刊書のライフサイクルは、以前は年ごとに七:二:一でした。つまり七〇%を初年度に販売、二〇%を二年目、一〇%を三年目。これを一つのモデルとして、制作を続けてきました。それが現在ではどうか。今日のお話するにあたって集計してみたのですが、非常につらい数字が出ました。八・五:〇・五:〇ということになっている。(中略)つまりつくったのの八五%が初年度に販売され、翌年が五%。だから二年目までで九割。
※みずず書房 持谷寿夫氏談
・売上のバランスは当初は新刊書三:既刊書七だったのですが、現在では六:四、もくしは六・五:三・五に変わっています。
※みずず書房 持谷寿夫氏談
・メディアの種別で考えた場合、たとえば「電子ジャーナル」と「ウェブマガジン」と分けられます。(中略)
電子ジャーナルというのは、もともと紙で発表されたものを電子化して、ある時点からは紙と同時に新しく電子の分が積み重なってきているものです。(中略)
一方デジタルマガジンは、紙のデジタル化ではなくて、最初から電子で作られています。
※筑摩書房 平井彰司氏談
・筑摩書房はどういう出版社かというと、一九四〇年に創業して、既刊がざっと数えて一万六〇〇〇点程度。年間四〇〇店弱の出版点数で、現在社員は九〇人規模の会社です。出版内容は、文芸書、人文書、社会・科学関係、そして芸術関係の一般書、教養書、教育書というところで、高度な専門家しか読めない本は基本的には出版していません。本の体裁としては、単行本のほかに、全集というパッケージが多いのが特徴です。最近では新書、文庫が相当なシェアを占めています。
※筑摩書房 平井彰司氏談
・たとえば新書一冊を電子化する場合なら、本としての最終データが完璧に揃っていればコストは五万円ぐらいでできます。ただし、インフラとしてデータの変換プログラムがあるという前提です。
一方過去の、たとえば三〇年前の作品を電子化しようとすると、それは文章の入力から始めなければいけない。入力して、校正をかけてということで、普通の出版と違いがありません。すると一冊あたり五〇万円ぐらいかかってしまう可能性があります。
※筑摩書房 平井彰司氏談
・たとえばアマゾンの「なか見!検索」では、データ所有権はアマゾンにあると言っています。その代わり利用権は出版社にあるといっている。一方、グーグルは反対で、データ所有権はそもそもグーグルにはなく、出版社が持っている。でも、利用権はグーグルが持つ、ということになっています。しかし私の考えでは、基本的には所有権も利用権も出版社と著者サイドが持つべきだと思っています。
※筑摩書房 平井彰司氏談
・ジュンク堂書店は担当ジャンルを変えないことで有名で、田中(香織・ジュンク堂書店)さんはコミック販売界ではその名を知らない人はいない存在です。
※永江朗氏談
・ミシマ社の三島邦弘さん。一九七五年生まれ。出版社の社長です。三島さんの場合、PHP研究所に勤め、NTT出版を経て、自分で版元を起こしました。しかも従来の出版流通システムを使わない、非常にユニークな活動をしています。
※永江朗氏談
●書籍『本の学校・出版産業シンポジウム2008 記録集~出版産業再生へのシナリオ』より
本の学校 著, 編集
唯学書房 (2009年7月初版)
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